2016/07/25
2016年7月20日、ビルボードライブ東京にてイギリスのSSW、バーディーが初来日公演を行った。
ウェーブのかかったブラウンの長い髪に、クラシカルな青いドレス。バンドにやや遅れてステージに現れたのは、まだ少女の面影を残したシンガーだ。彼女が鍵盤の前に座ると、間髪入れずに演奏が始まった。どこかオリエンタルな旋律とシンプルだが力強いリフレインが耳に残る「Growing Pains」。最新アルバム『ビューティフル・ライズ』のオープニング・ナンバーでもある。続けて、「People Help The People」。ピアノ弾き語りにヴァイオリン、そしてバンド・アンサンブルが加わるスロー・ナンバー。デビュー・アルバムのハイライトのひとつと言える楽曲だ。まるで軽く自己紹介するようなその2曲で、待ち構えていた日本の観客はすっかり彼女に心をつかまれてしまった。
この春に二十歳になったばかりだというバーディー。彼女は、しかし、すでに三枚のアルバムをリリースし、その歌声は本国イギリスのみならずヨーロッパ中を席巻している、次世代のスターとの呼び声も高い新鋭だ。これからシンガポール、韓国、香港、上海とアジアのホールやフェスをまわるという彼女による日本におけるファースト・ステージは、最新アルバムからの楽曲を中心に続いていく。スケールの大きなミディアム・チューン「Hear You Calling」「Wild Horses」。「Lost It All」や「Beautiful Lies」はシンガーソングライター然としたピアノ・オリエンテッドなバラードだ。MCはほとんどなく、あっても曲紹介程度。だが、それぞれの楽曲の中にストーリーがあるからだろう、淡々とした印象はまるでない。低音はふくよかに広がり、高音は鳴るように響くバーディーの歌声は、それだけで濃密なドラマを描き出す。その背景を務めるギター、ベース、ドラム、キーボード、そしてヴァイオリンによるバンド・プロダクションも隙なく仕上げられている。本編ラスト、アップテンポなリズム・トラックで新境地を見せた「Keeping Your Head Up」では、観客から手拍子もおこり、会場は新しい才能にすっかり魅了されたようだった。
今まさにスターへの階段を上りつつある彼女の、完璧ともいえる日本お披露目のステージ。だからこそだろうか、もっとも感動的だったのは、アンコールのラストに披露された「Skinny Love」だった。彼女が14歳のときにリリースしたボン・イヴェールのカヴァー。「バーディー」の名を一躍世に知らしめることになった曲だ。今もまだ素朴で切なく儚いままのその歌声とピアノは、彼女がどこから来たのかを端的に示していた。そしてそこは、これからどこまで行こうが、彼女が拠って立つ場所に違いない。
Text:SATOSHI SATO
◎公演情報
【バーディー】
ビルボードライブ東京
2016年7月20日(木)<終了>
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