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2016/07/01

白波多カミン with Placebo Foxes 背徳と慕情と哀愁と純粋と……覚醒し続ける女とバンドの凄み「夢にまた出てきます」

 可愛い顔してセンセーション。京都出身のシンガーソングライター・白波多カミンが結成し、百々和宏(MO'SOME TONEBENDER/geek sleep sheep)プロデュースでメジャーデビューしたバンド 白波多カミン with Placebo Foxes。6月16日、渋谷TSUTAYA O-nestにて【Major Debut Album「空席のサーカス」Release Tour】最終公演を開催した。

<「自分のモノにしないと気が済まない」執着心から始まった音楽活動>

 白波多カミンは、大好きな女の子に振り向いてほしくて、その娘が書いた詩にメロディーを乗せたところから音楽家になった稀有なシンガーソングライター。「私はレズではないんですけど、でもその娘への執着だけが凄かったんです。最初で最後。まぁまたあるかもしれないですけど。当時は「もう絶対に自分のモノにしないと気が済まない」みたいな感じでした。片想い」 (http://bit.ly/1DuB3kN

 そんな恋心(?)をきっかけに音楽活動を始めた彼女は、インディーズで計3枚のアルバムを発表。各地でライブ活動も行い、カミンが歌えば世界が変わる。そんな独特な空気感を毎回生み出し、普段は内に秘められている青い炎の解放、「仏壇の前でセックスをした」等のセンセーショナルなフレーズを不思議と大袈裟に感じさせない、けれども生活や命の匂いはしっかりと残していく歌でもって、多くのリスナーの涙も誘ってきた。

<百々和宏プロデュースのアルバム完成「完全に殴り込みたい」>

 そして、2015年12月2日【白波多カミン with Placebo Foxes presents 「涅槃」 vol.3】なる自主企画イベントを開催し、その場でメジャーデビューを発表(http://bit.ly/299BM1s)。「このメンバーでレコーディングして(メジャーデビュー作を)出します! メジャーでいっぱい悪い事してやろう。楽しみにしておきなさいよ」と、結成してまだ間もなかったバンド 白波多カミン with Placebo Foxesの1stアルバム『空席のサーカス』を、百々和宏(MO'SOME TONEBENDER/geek sleep sheep)をプロデューサーに迎えて完成させてみせる。

 「スピーカーから音を聴いたときに、自分の血圧や体温が上がったり下がったりしたんです。興奮し過ぎて血の気が引くみたいな、初めての体験でした。自分の音楽でそこまで興奮することはなかったから。」そんな自画自賛できるほどの大傑作を生んだ彼女は、「完全に殴り込みたい」「「ここに快感があることをおまえらは知っていたか!?」というところを知らしめる。「好き、嫌い、好き、嫌い」とか言ってるだけじゃないから、女の子は」と音楽シーンに宣戦布告(http://bit.ly/299Pcyb)。

<「最後まで喰らって帰ってください」本当は求めて止まない根源的なタブー>

 その手始めとして、バンド結成後初となるツアー【Major Debut Album「空席のサーカス」Release Tour】を敢行。その最終公演をメジャーデビュー発表の地・渋谷TSUTAYA O-nestにて開催した。

 前述の「仏壇の前でセックスをした」といった強烈なフレーズが飛び出す「姉弟」から始まり、澄んだ歌声ながら青い炎をひらすらに燃やし続けるカミンから放たれる背徳、慕情、哀愁、純粋……それらと各々に暴れ回りながらも高い純度で共鳴していくバンドサウンド。歌に泣いているのか、ギターに心掻き乱されているのか、リズム隊の生むグルーヴに酔い痴れているのか、自分でも何にどう呼応しているのか明らかにできないまま、けれども全身全霊がそれらを受け止めたがり、たしかに痺れていく感覚をすべての楽曲が味わわせる。

 これが「ここに快感があることをおまえらは知っていたか!?」ということなのかもしれないし、「どこまでタブーがやれんのか。っていうのと、景色の美しさ。それが合わさっているのがすごく気持ち良いんですよ」ということなのかもしれないが、好きか嫌いか、認めたいか認めたくないか、そんな判断をする隙間も与えない、そんな理性レベルの云々で自己消化できない、どこまでもカオティックながらストレートに突き刺さる、もしくは包み込んでくるロックンロールを4人はこの短期間で奏でられるようになっていた。

 「最後まで喰らって帰ってください」

 セックスと歌うから凄いんじゃない、女が何もかもさらけ出してるから凄いんじゃない、歌や演奏のレベルが高いから凄いんじゃない、カミンの頭に広がる世界をまんま音楽化できてしまっていて、それに我々が惹かれてしまい、共鳴してしまっているのが凄い。というか、ヤバい。意識できているか、無意識のままなのかどうか関係なく、誰の中にも秘められている、本当は求めて止まない根源的なタブー。それは純粋と同義かもしれないが、本来表に出したら誰も理解できないフリをしなきゃいけないようなものたちも白波多カミン with Placebo Foxesは体現し、それを我々が快感として受け止めたがってしまっているヤバさ。

 でも後ろめたさはない。「しばらくこのバンドではライブが決まってませんので、しかと目に焼き付けて帰って……夢にまた出てきます」それを心底待ち望むぐらい、4人の鳴らすロックロールは美しくもあり、特に本編最後で披露された「なくしもの」は誰にも見せたくなる、聴かせたくなる、体感してもらいたくなる、共に泣いてもらいたくなる次元の音楽だった。何故なら、やはりこの風景や感情は、本当は誰もが持ち合わせているものだから。

 まぶしいから泣いた
 まぶしいから泣いた
 まぶしいから泣いた

<どう受け受け止めていくのか。はたまた見ない振りをしてしまうのか>

 なんて気持ち悪い感想を書かせるほど、日々覚醒し続けている白波多カミン。剥き出しの目を見せたり、死んだような目を見せたり、掴みどころがないくせにこちらのアレコレは確実に掴んでくる彼女の音楽は、この先どのような殴り込みを見せてくれるのか。それを音楽シーンは、この世界はどう受け受け止めていくのか。はたまた見ない振りをしてしまうのか。今後の動向にもぜひ注目してほしい。

取材&テキスト:平賀哲雄
Photo by 熊谷直子

◎ライブ【Major Debut Album「空席のサーカス」Release Tour】
06月16日(木)渋谷TSUTAYA O-nest セットリスト:
01.姉弟
02.すきだよ
03.あたまいたい
04.おかえり。
05.くだもの(アコギ)
06.ハロースター
07.嫉妬
08.サンセットガール(アコギ)
09.普通の女の子(アコギ弾き語り)
10.ランドセルカバー
11.バタフライ
12.なくしもの
En1.新曲(アコギ弾き語り)
En2.わたしの東京(アコギ弾き語り)
En3.生命線
En4.いますぐ消えたい

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