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2016/06/16

シド・ザ・キッド、アンダーソン・パック、バッドバッドノットグッド等が参加! ハイチ系プロデューサー、ケイトラナダによるさり気なくも時代に名を残すデビュー作(Album Review)

 ハイチ系カナダ人のDJ/プロデューサーであるケイトラナダことルイス・セレスティンは、トロピカルなトラップ/ハウス・サウンドを武器に、表現領域を押し広げるようにしながら注目を浴びてきた。彼がこの5月にリリースした初のフルアルバム『99.9%』は、まるでプロデューサーとしての豊かな収穫期を迎えたかのように、これまで楽曲を提供してきた多くのアーティストを招きつつ、自由度の高い楽曲を次々に披露してみせる一枚だ。

 まずは、思い切りよくシンセ音をピッチベンドしてリフを構築する、滑らかなハウス・チューンの「Track Uno」で軽く小手調べ。英バンド=アルーナジョージのアルーナ・フランシスによる美声コーラスと、米国の新鋭ラッパー=ゴールドリンクの高速ラップを鮮やかにミックスしてしまうナンバーはその名も「Together」だ。アンダーソン・パークはややエクスペリメンタルなベース・トラックの「Glowed Up」に参加しているが、ケイトラナダがパークの最新アルバム『Malibu』に提供した官能的なナンバー「Lite Weight」に通ずるところもある。

 オッド・フューチャーのシドが歌う「You’re the One」は、今のところシングル・カットされていないことが不思議に思えるほど、美しくキャッチーなガラージの逸品だ。また、ケイトラナダのビート選びのセンスを伺わせる楽曲としては、カニエ・ウェストの最新作にも参加していたドラマー/プロデューサーのカリーム・リギンスによる鋭い生ドラムを用いた「Bus Stop」や、同邦カナダのバッドバッドノットグッドのバンドグルーヴにモノを言わせる「Weight Off」なども良いアクセントになっている。

 以上のように、これまでのプロデュース・ワークで培われた人脈が活かされたアルバムとなっているのだが、今回とりわけ注目しておきたいのは、ケイトラナダ流のアーバン・ファンクと呼ぶべき「Despite the Weather」や、オールドスクールなタッチで遊び心たっぷりに繰り出される「Breakdance Lesson N.1」といったインスト曲である。トラップやトロップハウスといったトレンドにしっかり目配せしながらも、何かアクのような濃い記名性を残してゆくケイトラナダの手腕を、しっかりと感じさせる2曲。こんなふうにいつの間にか時代に名を刻んでしまうことこそが、彼にとっての一番の収穫なのかもしれない。〈Text:小池宏和〉

◎リリース情報
『99.9%』
2016/06/10 RELEASE(国内盤)
BGJ-5012 2,268円(tax in.)

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