2016/05/02
デュラン・デュランなら80年代に武道館でゴキゲンなコンサートを観たことがあるのだが、リマールの歌を生で聴くのは今回が初めて。もうワクワクしながら1曲目の「カジャグーグー」のイントロに身体が揺れる。
ところが、この日のリマール、あまり声がよく出ていない。いや、これはステージが進むにつれてわかっていったことなのだが、リマールはそもそも、歌唱力という点では“そこそこ”の人なのだろう。だから、カジャグーグーを脱退した後は、「ネヴァーエンディング・ストーリー」を除けば、目立った音楽活動はできていない。そう感じたことは正直に書いておきたいと思う。
しかし、驚かされたのは、続く2曲目以降の選曲だった。「80年代への音楽の旅にようこそ」みたいなMCに導かれて歌い出されたのは、なんとジョー・ジャクソンの「ステッピン・アウト」! 「ウー・トゥ・ビー・アー」に続いたのは、トーク・トークの「イッツ・マイ・ライフ」! さらに「ビッグ・アップル」に続いたのが、デビューを後押ししてくれたデュラン・デュランのニック・ローズへのトリビュート、と前置きされたデュラン・デュランの「セイヴ・ア・プレイヤー」!
テレビでよくやってる芸能人のカラオケ大会みたいな番組は僕は大嫌いなのだが、この日のリマールがそういうのとはだいぶ違っていたことは、ぜひとも強調しておきたい。何より選曲に一貫性があったし、この人はヨーロッパ的な陰りのあるポップ・ミュージックが大好きなんだろうな、という点がよく伝わってきたのだ。だから、カジャグーグーのファースト・アルバムはああいう作風になったのだろうな、と。
5人編成のバンドも手堅い演奏を聴かせていく。特に、サックスとバック・ヴォーカルを担当する紅一点、リン・ウォーカーの貢献度は大。終盤には、ギタリストのマイケル・カスウェルが書いたというインストゥルメンタル・ナンバーの「アンアースト」が披露されたりもした。
本編のラストは「ネヴァーエンディング・ストーリー」。ここでも、目立つのはリマールの歌声よりもリン・ウォーカーのバック・ヴォーカルだったりするのだが、それでも、リマールの佇まいにはオーディエンスの気持ちを幸せにするような優しさとか、癒しみたいなものが宿っているのがわかる。この時期にはいい曲ばかりを歌っていたのだから、アメリカで言えばドン・ウォズとかジョー・ヘンリーのような、“野村再生工場”みたいなイギリス人のプロデューサーはどこかにいないのか?と思わされるくらいだ。
アンコールの1曲は、お待ちかねの「君は TOO SHY」。エンディングのリフレインをたっぷりと取り、カジュアルなイエローのツナギからグレーのスーツに着替えたリマールが笑顔で手を振る。今聴いても完璧なポップ・ソングと、そう思えるナンバーだ。
この日の東京でのステージがリマールの未来に何かをもたらしてくれたら。そう感じたのはきっと僕だけではないだろう。そして、80年代のUKポップ勢を次々に呼んでくれるビルボードライブ東京には、ぜひ、これからもこうした試みを続けていって欲しいと願わずにはいられない。次は、それこそジョー・ジャクソンとか、あるいは、デキシーズ・ミッドナイト・ランナーズ改めデキシーズあたりの来日公演、それを心待ちにしていたいと思っている。
Photo:Yuma Totsuka
Text:宮子和眞
◎公演情報
【リマール ~BACK TO 80s~】
2016年04月19日(火)※イベント終了
ビルボードライブ大阪
2016年04月21日(木)・22日(金)※イベント終了
ビルボードライブ東京
詳細:http://www.billboard-live.com/
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