2016/04/04
3月23日にアルバム『Romanza』をリリースした吉田恭子。自身の演奏活動に加えて、近年では音楽教育、環境問題、チャリティなどにも積極的な取り組みを行っている。未来の若い才能に向けた彼女のメッセージとは。
―5月と6月には、毎年恒例のリサイタルがありますね。今回は、どんなコンサートになりそうですか?
吉田恭子:4~5年前から、プロコフィエフを取り上げたいなとずっと考えていたので、今回プロコフィエフの「ヴァイオリンソナタ第1番」を演奏することにしました。彼の代表作である「戦争と平和」のような煌びやかさはありませんが、旧ソ連時代の兵士たちの心情や政治的なメッセージが込められていて硬質な美しさを感じる作品です。他には、とてもチャーミングなモーツァルトの「ハフナーセレナーデ<ロンド>」や、ウィルヘルミが編曲したショパンの「ノクターン第8番op.27-2」などを取り上げる予定です。私の師匠であり、カーティス音楽院の主任を務めておられるアーロン・ロザンドは、今89歳なんですが、未だに現役のヴァイオリニストとして活躍されています。それどころか、学校で見かけた若い演奏家たちに「それは、どうやって演奏しているんだい?」と質問することもあるんです。いまだに生徒から技術を盗もうと思えるような向上心は、素晴らしいと思います。私は足元にも及びませんが、毎年新しいプログラムに挑戦し、学び続けたいなと思っています。
―さらに挑戦したいことはありますか?
吉田:若い子供達の教育に、もっと関わっていきたいですね。8月に毎年、軽井沢で【若い芽の弦楽アンサンブル】という合宿プログラムを開催しており今年で第6回目を迎えます。日本の弦楽奏者は、世界的に見ても非常にレベルが高い。でも小さい頃から技術を磨く必要があるため、周りの子供達と遊ぶ時間もなく部屋で一人練習するなど、孤立してしまう子が多いのが問題です。でも、弦楽器は誰かと演奏し、一緒に作り上げていく作品が多い。そのためには、周りの音楽を聴く力や、言葉では言い表せない人とのコミュニケーション能力がとても重要なんです。スポーツのチームワークのような感覚が必要です。なので、この合宿では軽井沢のコテージで共同生活をしながら、音楽の勉強をしてもらっています。
―たしかに、弦楽器はオーケストラ以外にもアンサンブルで演奏することが多い楽器ですもんね。
吉田:そうです。素晴らしい音楽を作り上げるには、一緒に笑ったり、誰かと一緒に食事をしたり…という感覚や喜びが、とても大事です。それに自分たちが演奏する曲の中には、作曲家が自然の美しさからインスピレーションを受けて作られたものが数多くあります。日本のホールだけにいては、イマジネーションが育ちません。
―子供達から、逆に吉田さんが勉強させられることもありますか?
吉田:そうですね。誰かに教えていると、なんだか自分を見透かされているような気持ちになることがあります。でも、何百年も前に作られた素晴らしい音楽を、より後世に伝えていくには自分1人の力ではできません。日本には、せっかく立派なホールもたくさんありますし、すぐに結果がでるわけではありませんが、若い人たちに音楽を演奏する楽しさを知っていただくことで、よりクラシック音楽が皆さんの生活に根付けばと願っています。文:高嶋直子
◎リリース情報『Romanza -ロマンツァ-』
2016/03/23 RELEASE
NYCC-27299 2,700円(tax in.)
more info:http://naxos.jp/news/nycc-27299
◎イベント情報【『Romanza-ロマンツァ-』発売記念 吉田恭子 ヴァイオリン・ミニコンサート&サイン会】
日時:5月12日(木)18:30
会場:銀座山野楽器本店 7Fイベントスペース JAM SPOT
https://www.yamano-music.co.jp/docs/event/index_honten.html
◎【吉田恭子ヴァイオリンリサイタル~名器グァルネリ・デル・ジェスで聴く『奇才プロコフィエフ』~】
5月15日(日)名古屋・宗次ホール
6月3日(金)東京・紀尾井ホール
出演:吉田恭子(ヴァイオリン)、白石光隆(ピアノ)
more info:http://www.kyokoyoshida.com/
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