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2016/03/22

アンダーワールド新作が伝える、キャリアを経てなお研ぎ澄まされる音楽的冒険心(Album Review)

 前作『Barking』から5年半というスパンで、アンダーワールドの新作『Barbara Barbara, We Face a Shining Future』がリリースされた。その間にメンバーのリック・スミスは、ダニー・ボイルがプロデュースした2012年ロンドン・オリンピックの開幕式典で音楽監督を務め、またカール・ハイドは初のソロ・アルバム『Edgeland』をリリースし繊細な歌心を振りまく一方、ブライアン・イーノとのコラボ作においても新たなポップのアプローチを示していた。アンダーワールドとしては1990年代作品のリイシューも相次ぎ、パーマネントな制作やツアーから距離を置くことで、グループとしての活動を客観視する時期だったと言えるだろう。

 『Barking』は極めて彼ららしい、華やかでアップリフティングなUKテクノ作となったが、新作『Barbara Barbara, We Face a Shining Future』は、彼らの音楽的な知識と経験が楽曲ごとに異なる形で注ぎ込まれる、ヴァラエティ豊かな作風となった。重いハンマー・ビートが挑発的に鳴り響くシングル曲「I Exhale」に始まり、先頃の「ミュージックステーション」出演時にも披露された「If Rah」は、カールのマントラ風ヴォーカルが渦を巻くように上昇線を描くナンバーである。現在進行形のEDMサウンドと共振するのでもなければ、長年培ってきたアンダーワールドの王道に安住するのでもない。あたかも、遅れてきたニューウェーヴ・バンドであることを再確認するように、刺激的なサウンドを追求するストイシズムが感じられる作風だ。

 「Santiago Quatro」は、カールのエキゾチックな撥弦楽器演奏が印象深いアンビエント・ナンバー。このダウンテンポな陶酔感だけでも、ニュー・アルバムの特別なムードは伝わるだろう。続く「Motorhome」も優しげなヴォーカル・リフレインが前面に押し出されたナンバーで、どの楽曲も演奏時間をたっぷりと利用してドラマティックに展開する構造になっている。『Oblivion with Bells』(2007年)以降はアルバムごとにリリース・レーベルも異なっているということで、年齢的にもベテランのアンダーワールドは一作一作の制作に向かう冒険心が以前よりも高まっているのではないか。

 先頃の来日時は、旧知の仲であるデザイン集団=TOMATOのイベント絡みで限定参加のユニークなヘッドフォンライヴも行われたが、今夏には【SUMMER SONIC 2016】の大舞台で我々の前に立つことになる。冒険的な新作とは言っても、そこはサーヴィス精神旺盛なアンダーワールド、楽曲群はきっちりライヴ用に仕上げて盛り上げに来るだろう。今から楽しみだ。(Text:小池宏和)

◎リリース情報
『バーバラ・バーバラ・ウィ・フェイ ス・ア・シャイニング・フューチャー』(Barbara Barbara, We Face a Shining Future)
2016/3/16 RELEASE
2,450円(plus tax)

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