2016/03/09
2008年の『Thriller』25周年記念盤、2012年の『BAD』25周年記念盤に続き、『Off The Wall』のデラックス・エディションがリリースされた。グループを離れ本格的にソロの道へと踏み出したマイケル・ジャクソンの、ソロ通算5作目となった1979年作品だ。ジャクソンズ時代の良質なディスコサウンドを発展させ、作曲に歌にダンスに、と才気迸るマルチエンターテイナーとして活躍し始めた頃の記念碑的なアルバムである。
最新リマスターを施されたアルバム音源は、ふくよかでオーガニックなサウンドとグルーヴ、そして珠玉の名バラード「She’s Out of My Life」あたりではマイケルの繊細な息遣いまでもクリアに描き出していて、もちろん素晴らしい。レコード史上の大ヒットとなった次作『Thriller』を差し置いて、本作をMJ最高傑作に挙げる人も少なくない、というほどの名盤だ。
ただ、今回のリリースで触れておかなければならないのが、同梱されるスパイク・リー監督のドキュメンタリー映像『Michael Jackson’s Journey from Motown to Off The Wall(マイケル・ジャクソンの旅:from モータウン to オフ・ザ・ウォール)』の存在だ。資料価値の高さにしても、またドラマ映画としても、驚くべきクオリティを誇る作品に仕上げられている。2016年初頭に米国内で公開され、この3月にはリリースに先駆けて都内で日本語字幕版の試写も行われた。
モータウンからのジャクソン5デビューをはじめ、アーティストとしての成長とより自由な創作を目指した波乱含みの移籍(ジャクソンズ時代)、グループ活動からはみだすほどに才能を爆発させ、『オフ・ザ・ウォール』以降の本格ソロ活動に乗り出す姿と、映画はマイケル少年の活躍を振り返る内容だ。ジャクソン一家の貴重な映像と、多くの著名人=モータウン設立者ベリー・ゴーディJr.、ギャンブル&ハフ、スティーヴィー・ワンダー、クエストラヴ、ファレル、マーク・ロンソンらの証言が織りなす構成となっている。
マイケルが2009年に他界して後、彼の功績を半ば神格化するムードに拍車がかかっている印象があったが、さすがはスパイク・リー、キャリアの光と影を直視することで、よりリアルなMJ像に近づこうとしている。ある文化評論家から「黒人アーティストは、バスキアも、マイルス・デイヴィスも、マイケルも“天才”だと言われる。努力の末に生み出した技術でもね」という言葉を引き出したのは見事だし、今シーズン限りで現役引退を表明しているNBA選手=コービー・ブライアントが、マイケルの仕事へと向かう姿勢について語るさまには胸が熱くなる。
このドキュメンタリーを、古参ファンのためだけのアイテムにしておくのは余りに惜しい。これからMJ作品に触れてみようという人は、ドキュメンタリー映像を観てから『Off The Wall』を聴いても構わない。きっと、音楽が輝きと味わいを増して響いてくるはずだ。(Text:小池宏和)
◎リリース情報
『オフ・ザ・ウォール:デラックス・エディション』
2016/03/09 RELEASE(国内盤)
CD+ブルーレイ
SICP30924-5 4,800円(tax out.)
CD+DVD
SICP30926-7 4,200円(tax out.)
◎ドキュメンタリー・フィルム概要
『マイケル・ジャクソンの旅:from モータウン to オフ・ザ・ウォール』
監督:スパイク・リー(『her/世界でひとつの彼女』)
インタビュー登場人物:リー・ダニエルズ(俳優・映画監督/プロデューサー)、ザ・ウィークエンド、ファレル・ウィリアムス、ミスティ・コープランド(バレエダンサー)、コービー・ブライアント(NBAプレイヤー)、マーク・ロンソン、ジョン・レジェンド、クエストラヴ、キャサリン・ジャクソン(マイケルの母)、ジョー・ジャクソン(マイケルの父)、マーロン・ジャクソン、ジャッキー・ジャクソン、 L.A.リード 他
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