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2016/02/26

Album Review:歯が浮くような新作タイトルもサマになってしまう理由…The 1975の魅力とは?

 『君が寝てる姿が好きなんだ。なぜなら君はとても美しいのにそれに全く気がついていないから。』という、日本盤の直訳タイトルにまずは拍手を贈るべきだろう。こんな歯が浮くような一文がサマになって嫌味にならないバンドは、The 1975以外に存在しない。この直訳タイトルこそが、The 1975の本質と言える。 

 彼らは、この2010年代にセックス、ドラッグ&ロックンロールのロマンチシズムを瑞々しい楽曲に仕立て上げてしまうバンドだ。セクシーで、スリリングで、甘美な恋心を鋭いサウンドの刃先で転がしている。最高のセックス・シンボル=マット・ヒーリーを擁する4人組The 1975は、英マンチェスターから2012年にデビューした。ポスト・パンクにエレポップ、モータウンやヒップ・ホップと、リリースするシングルやEPごとに多彩なスタイルでポテンシャルの大きさを伝え、2013年にメジャー契約しデビュー・アルバム『The 1975』を発表する頃には、既に鳴り物入りのUK1位、US28位という華やかなチャート・アクションを見せていた。

 日本でも新人としては類を見ないペースで来日公演を繰り返し、最も若い伝説と言えるような熱狂のステージの数々を行ってきた。2015年6月初頭、SNSを通じて解散を匂わせつつそれを揶揄するマンガと文章を公開。その翌日には、新作のアートワークに通じるピンク一色の新オフィシャルサイトを立ち上げ、新作リリースへと向かう準備を進めることになる。2015年11月からはリリースに先駆けてUK・北米とツアーし、年明けにはオセアニアやアジア諸地域の環太平洋ラウンドを巡った。日本でも一夜限りのプレミアムな公演が行われたばかりだ。

 センセーショナルな振る舞いばかりが目につくようだが、The 1975の素晴らしさは何よりもチャーミングな音楽性そのものにある。逆に言えば、その美しく愛嬌溢れる楽曲によって、彼らはセンセーショナルな活動スタンスを許されている、という部分があるだろう。現代型のロマンスAOR抒情詩と呼ぶべきニュー・アルバムは、本編だけで全17曲、再生時間1時間20分を越えるという大作だ。かつてのThe 1975が見せていた音楽的エッセンスのすべてが溶け合い、しかもまるごと洗練されている。

 軽快に弾けるラヴ・ソングがひしめき合う中で、浮遊感溢れるトラックとソウルフルなコーラスに彩られた「If I Believe You」は序盤最大のハイライトだろう。続く「Please Be Naked」はエレクトロニカ/シューゲイザーのインスト曲で、アルバムのロマンチックな世界観に引き込むための時間がたっぷりと練り上げられている。この新作に触れていると、音楽は時間を利用した魔法なのだということがとてもよく分かる。彼らは今夏、【SUMMERSONIC 2016】で日本の地に戻ってくる。じっくりとアルバムを聴き込んでおきたい。(小池宏和)

◎リリース情報
『君が寝てる姿が好きなんだ。なぜなら君はとても美しいのにそれに全く気がついていないから。』
(原題:I like it when you sleep, for you are so beautiful yet so unaware of it)
2016/2/26 RELEASE
2,376円(tax incl.)

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