2015/12/08
諸事情によりカミヤサキ(ex.BiS)が無期限活動休止中となっていたアイドルグループ POP。12月4日~5日にわたって「復帰か脱退か」進退を懸けた24時間100kmマラソンにカミヤサキが挑戦し、小川マネージャーと共に命懸けの激走を繰り広げた。
<必ず完走します。自分の為に、POPの為に、研究員(ファン)の為に>
今回カミヤが走ったコースは、2012年にBiSのプー・ルイとわっきー(ワキサカユリカ)の2人が富士急ハイランドから100km地点にある新宿のライブハウスを目指して走るも、プー・ルイは途中でリタイア、わっきーは体力の限界&時間切れで完走できずと、2人ともゴールできなかった難攻不落コース http://bit.ly/1mB3Qux)。カミヤは元BiSメンバーとしても今回リベンジに臨むことになったのだが、12月4日朝11時半のスタート直前では「必ず完走します。自分の為に、POPの為に、研究員(ファン)の為に」と気合い充分。12月5日11時半~のPOPワンマンライブ@下北沢シェルターに間に合わなければ脱退という重すぎる条件を背負いながらも、晴れ渡る空の下、駆けつけた研究員の声援に包まれながら走り出した。
<山の洗礼……半分の50km地点にも到達しないうちに訪れた限界>
なお、今回の100kmマラソンは「小川マネージャーも24時間で100kmを完走しなければならない」という裏ミッションがあり、実は小川氏もゴールできなければ脱退する覚悟でカミヤと並走していた。が、彼はカミヤのように100kmマラソンの経験もなければ、この企画の前準備の為にほとんど寝てない状態で走っており、山道へ入っていく約20km地点でバテてしまう。これに連鎖するように、それまで順調に快走していたカミヤも腰痛と腹痛を訴え、意とせぬ休憩を2度取ることになった。無理もない、この山道はアップダウンが延々と続き、しかも今回は12月ということもあって、時間が進めば進むほど寒さが増していく。半分の50km地点にも到達しないうちに訪れた限界。
<「お腹と背中がくっつくような痛さがある」それを救った愛の力>
が、カミヤと小川は走れないながらも、苦悶の表情で歩を進めていく。そんな2人に対して研究員はカイロや温かい飲み物を差し入れしたり、サプライズでPOPの曲を目の前で踊り出したり、どこまでも必死に並走したり、また、現地に来れないメンバーも応援のメッセージを送ったり、カミヤサキ担当を自称するヤママチミキは弾き語りの応援歌を動画で送ったり、不器用ながらも何とか2人の力になろうとしていた。その愛の力あってか、カミヤの表情からは次第と苦しさが消えていく(カミヤは「お腹と背中がくっつくような痛さがある」と訴え、スタッフは痛み止めや胃腸薬を用意していたが、研究員が差し入れたお粥を食べたら元気になったので、単にお腹が空いていた可能性もある)。
<このままだと24時間マラソンなのに17時間ぐらいでゴールしちゃう>
そんな孫悟空ばりの復活劇を果たしたカミヤは、山を越えるなり爆走状態へ。これに小川や並走スタッフ、研究員は度肝を抜かれながらも置いていかれないように必死に追いかけていく。そのあまりの速さにスタッフ内では「ペースが速すぎる」「このままだと24時間マラソンなのに17時間ぐらいでゴールしちゃう」といった会話もあったほど。こうしてモンスターアイドルぶりを発揮し、残り30km時点ぐらいまでは順調に走っていたカミヤだったが、ここまで蓄積してきた疲労が一気に爆発。何でもない道で転びそうになることも多くなり、走ろうとしても足が思うように動いてくれない。それでも彼女は「1分でも1秒でも速く復帰したい」と何とか走ろうとする。
<夢にまで見た復活へのラストチャンス>
今回の企画。8月9日 代官山UNITでのPOP初のワンマンライブ(http://bit.ly/1lpvf6V)にてカミヤが“無期限活動休止”を発表した時点から用意されていたシナリオなのでは? と思う人もいたかもしれないが、あの日からの4か月間、彼女はとにかく苦悩していた。いや、もっと言えば、ミズタマリとのプラニメが解散したときも、後輩グループのBiSHがデビューしたときも、前回のBiSH×POP200km対抗駅伝のときも、TIFの2日目が出演キャンセルになってしまったときも、そのペナルティとして“無期限活動休止”が決まったときも、もう休む暇もなく「どうすればいいのだろう?」と悩み続けていた。
BiS時代から彼女を知る人であればよく分かると思うが、彼女は計算高さを持ち合わせていないし、理性より本能や感覚を重視する。ライブでは客席の中へと誰よりもガンガンと突っ込んでいき、仲間が苦しめられたときは後先考えずに守りにいき、間違ってると思えば相手が誰であれ噛み付いてしまう。そんなマンガの登場人物みたいな女の子がカミヤサキであり、ゆえに本来冷静さや計算高さを必要とするアイドルのリーダーには向いていない。そういう声がファンやスタッフの間であったことも確かだ。が、そんなことは当の本人が一番よく分かっていた。だから“無期限活動休止”が決まったときは、このままアイドルを辞めることも考えた。
しかし彼女はマンガの登場人物みたいな女の子ゆえ、そんなストーリーは自分自身が一番求めていないことに気付く。だからどうすれば復活できるのか必死に考えた。何をすれば私は償う事ができるのか。POPの4人とまたステージに立つことができるのか。その自問自答の末に「スタッフとして働かせてほしい」と彼女は直談判する。プライドも名誉もかなぐり捨てて、後輩のアシスタントとして動き回ったり、物販コーナーでTシャツを売ったり、チェキを撮ったり、あくまで裏方として働く事で信頼を取り戻そうとしていた。その甲斐あっての、今回の企画実現であり、夢にまで見た復活へのラストチャンス。
<限界を何度も超えた体を前へ前へと進めていく>
これを台無しにする訳にはいかなかった。そして自分が活動休止中にPOPを守り続けてくれた4人を裏切る訳にもいかなかった。いかなかったというか、そんな自分をカミヤは許せない。ゆえに走る。何度も倒れそうになりながらも、表情にツラさしかなくなっても走る。「今までで一番ダントツでキツイ」「もうこれ以上動けない」と歩みを止めたときもあったが、それでもまた走り出す。もう最後は自分でも何を話しているのか分からない状態になり、小川も「満身創痍創痍」「満身創痍創痍」としか言えなくなっていたが、それでも2人は限界を何度も超えた体を前へ前へと進めていく。
そして2人は下北沢へ。もう動いていること自体奇跡のような二本の足で再び全力で走り出し、下北沢シェルター手前にPOPのメンバー4人が駆けつけると、その4人に後押しされる形で2人はゴール! そのまま路上へと倒れ込んだ。時計を見ると、時間はまだ9時半。カミヤは「1分でも1秒でも速く復帰したい」という意思どおり、なんと24時間100kmマラソンを22時間でクリアー。小川も周囲の予想を見事裏切り、カミヤと共にゴールしてみせた。
<全力でやるんで! 皆さんも全力でかかってきてください>
死んだように横たわるカミヤを泣きながら囲むメンバーたち。そして、そのメンバーたちに支えられながら立ち上がった彼女は、ゴールで待ってくれた研究員やスタッフたちに向けて「昨日から今日にかけて一緒に走ってくれた皆さん、(UST生配信)の画面を通して応援してくれた皆さんも、本当にありがとうございました。(このあとのワンマンライブは気持ちを)切り替えて全力でやるんで! 皆さんも全力でかかってきてください。お願いします!」そう言ってカミヤ含む5人のPOPワンマンライブの会場、下北沢シェルターへの階段を下りていった。
<……また一緒に進んでいってくれますか?>
以下、カミヤサキ復帰ワンマンライブにおける彼女の言葉。
「皆さん、こんにちは! カミヤサキです! 私、カミヤサキ、無事100kmマラソンをここ下北沢シェルターまで完走する事ができました。本当にありがとうございました! 100kmマラソンが発表されたときに、皆さんのたくさんの応援の声と共に「サキちゃんなら絶対に大丈夫」という声をたくさん頂いたんですけれども、もちろん私も完走する気満々でしたし、その気持ちに揺るぎはなかったんですけど、果たして皆さんの期待に応えられるかどうか、すごくすごく…………完走できなかったらどうしよう? と不安になることもありました。ですが、私がここに完走できたのは、皆さんが「サキちゃんなら大丈夫」と信じてくれた気持ちが私を一歩、また一歩と下北沢シェルターに進ませる支えになったからだと思います。皆さんのおかげです。本当に本当にありがとうございます!
私がここに立てているのは、皆さんがこうして現場に駆けつけて下さったり、声援を飛ばして下さったり、スタッフさんが用意して下さったり、メンバーが支えてくれて初めてPOPのカミヤサキとしてパフォーマンスすることが出来るんだということを(活動休止中の)この4か月間ですごくすごく感じました。そんな私カミヤサキがカミヤサキでいれるPOPという場所をイヌカイマアヤ、ヤママチミキ、ユメノユア、シグサワアオが4か月間、すごく頑張って守り抜いてくれました。多分、プレッシャーとか不安とかすごくいっぱいあったと思うんですけれども、4か月間頑張ってくれて本当にありがとうございました。たくさん迷惑をかけてしまって本当にごめんなさい。……また一緒に進んでいってくれますか?」
この問いに4人は真っ直ぐとカミヤサキの目を見ながら頷いた。「ありがとうございます。私はパフォーマンスすることも歌うことも踊ることも本当に本当に大好きで、この4か月間、何度も何度もステージに立ちたくなる瞬間があったんですけれども、またこうしてステージに立てる喜びをしっかり噛み締めて、また一歩一歩しっかりと進んで行きますので、どうか皆さん、カミヤサキをよろしくお願いします! POPをよろしくお願いします! 皆さんが私にくれた頑張れる気持ち、温かい気持ちを今度は私が皆さんにたっっっくさん返したいです。なので、皆さん、今日は一緒に最高に楽しんでいってくださぁぁぁぁい!」
取材&テキスト:平賀哲雄
撮影:Jumpei Yamada
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