2015/10/08
昨年、デビュー・シングル「Trap Queen」をいきなり全米2位に送り込んでしまったフェティ・ワップは、その後完全に勢いに乗り、この9月末にセルフ・タイトルのデビュー・アルバム『Fetty Wap』を発表した。リリース直後の9月26日、地元ニュージャージー州パターソンで自転車に乗っていたところ交通事故に遭い、容態が心配されたが、大事には至らなかった。目下治療中というところだそうだ。早期の回復を願う。
あらためて紹介すると、この隻眼(幼少時に緑内障を患い、失明してしまった左目は義眼となっている)のラッパー/シンガーは本名ウィリー・マクスウェル、現在24歳。鋭く研ぎ澄まされたトラップ・チューンの「Trap Queen」は、女性を抱え込んだ不敵なハスラー・ライフについて《俺は金と結婚してる》とまでラップする楽曲である。これは、アルバム収録のスモーキーなナンバー「I Wonder」でも用いられた、フェティ・ワップのキラー・フレーズでもあるらしい。
非常に洗練されたトラップを乗りこなす彼は昨年、地元パターソンのローカル・レーベル=RGFプロダクションズごと、大手の300エンターテインメントと提携。アルバムにはRGFレーベルメイトのラッパーやプロデューサーが挙って参加している。300エンターテインメントは設立して2年余という若いレーベルだが、デフ・ジャムで手腕を振るってきた大物リオ・コーエンらが立ち上げたヴェンチャー・レーベルであり、作品はメジャー流通される。気心の知れた仲間たちと緊密な連携が取れたプロダクション、そして流通面での強力なバックアップという、理想的な環境をここ1年ほどの間に手中にしてしまったわけだ。
8月にリリースされた最新シングル「Again」は、今のところ過去4作のシングルの中ではチャート上で最も目立たない楽曲になっているが、アルバム曲の「No Days Off (feat.Monthy)」辺りと並んで、練り込まれた秀逸なメロディが印象深いナンバー。リスナー層が広がるにつれて、未知数のポテンシャルを発揮しそうなところがある。今後のアルバム・チャート上での活躍が、益々楽しみだ。
冒頭で触れたように、事故の影響で暫く公の場での活躍を見ることが叶わなそうなのは残念だが、不幸中の幸いということで、まずは回復を心待ちにしておきたい。新鮮かつキャッチーなサウンドにより、見事に大舞台で活躍する権利を手にいれたフェティ・ワップ。彼の時代は、たった今始まったばかりなのだから。
〈Text:小池宏和〉
◎リリース情報
Fetty Wap『Fetty Wap』
2015/09/25 RELEASE
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