2015/08/11
怒りを爆発させるように生々しい言葉を絶叫、ギターを掻き鳴らす女性シンガーソングライター 玉手初美。先日、渋谷WWWにて超絶ドラマー オータコージ(曽我部恵一BAND、L.E.D.、OishiiOishii)とセッションライブを繰り広げたのだが、その衝撃のライブ映像をフル尺公開した。
<玉手初美とは? 今の時代には生きづらそうなタイプのアーティスト>
東京・江戸川区出身、弱冠19歳のシンガーソングライターである彼女は、昨年6月にミニアルバム『遺書』でデビュー。得体の知れない並々ならぬエモーションを叩き付けてくる、あまりに剥き出し過ぎるライブにも定評があり、一度遭遇したら簡単には忘れさせてくれない中毒性、もといトラウマ性を持つ音楽を生んでいる。上手く演じたり、賢く立ち回ったりできる性格では一切ない為、今の時代にはなかなか生きづらそうなタイプのアーティストなのだが、ゆえに彼女の音楽は純粋でセンセーショナルに響くのだろう。
<感情剥き出しな歌と音が狂い咲き乱れた、危険なにおいがするライブ>
そんな玉手初美の面白さにいち早く気付いたオータコージは、彼女の作品をプロデュースし、各所で共にふたりぼっちながら濃度の強いアクトを展開。今年の夏には玉手初美×オータコージのライブとしては過去最大規模となる渋谷WWWのステージに立ち、共演者のNATURE DANGER GANGやVampilliaに劣らぬぶっ飛んだアクトで観客の度肝を抜いてみせた。
玉手が「偉い人のすることは全部認められるこの世界に……イライラします」と歌った次の瞬間、鬼のような形相で怒りのギターを掻き鳴らせば、オータコージも前のめりに立ち上がった状態で狂気的とも言える超絶ドラムで応戦。会場中の視線と耳を逸らさせない、逸らさせる隙を一瞬たりとも与えない、とんでもない緊張感を誇る爆音が轟き続ける。
もはや事件や事故と形容したくなるふたりの演奏は、7分20秒「7月7日」なるナンバーで更なる衝撃を刻む。オータが「オーイ! オーイ! ハッハッ!」とサンプリング等使用せず延々と生声で叫び続けながらドラムを叩き、玉手も感情に肉体を飲み込まれてしまったかのような危険な状態で叫び倒す。
その後も観てはいけないものをエンドレスで曝け出され続けているような、けれどもその振り切れっぷりには痛快さすら感じさせる、2人の感情剥き出しな歌と音が狂い咲き乱れた同ライブ。20分強のフル尺動画(http://youtu.be/ZmdVMXrb5ew)がこの記事出しタイミングで公開されたので、ぜひ一度チェックしてみてほしい。
<分かりやすい青春をしたことがないので……それは書きたくても書けない>
なお、この衝撃のライブ終了直後、楽屋で玉手初美に初インタビューを敢行した。短い時間ながらも彼女の人柄を知れる内容となったので、前述のライブ映像と合わせてご覧頂けたらと思う。
◎玉手初美 終演後インタビュー
--本日のライブ、自身ではどんな印象を?
玉手初美:死ぬんじゃないかと……。もう何も残ってないです。
--オータコージさんとは何がきっかけで一緒に音楽をやることになったんでしょう?
玉手初美:知り合いがオータさんと知り合いで、オータさんが私を知ってくれて、それで知り合いが紹介してくれて、今一緒にやってます。
--オータさんの最初の印象は?
玉手初美:……怖い方(笑)。
--以前、玉手さんのライブが良かったと伝えたら「本当ですか? 何でですか?」と疑われたことをよく覚えてるんですが、自分の音楽やライブを「良かった」と言われることにあまり慣れてないんでしょうか?
玉手初美:うーん……別に信じてないって訳じゃないんですけど、なんか、分かんないじゃないですか。そんな……受け入れないって訳じゃないですけど、そういう「良かったです」っていう言葉とかはなるべく全部飲み込まないようにしてます。
--なんでですか?
玉手初美:怖いんで。嬉しいので素直に受け入れちゃう自分がいるんですけど、受け入れたら受け入れた分……もしそれが嘘だったら、本当に喜んでいた自分はどこに行っちゃうんだろうと思うから。他人の意見なんて関係ないのかもしれないんですけど、でもすごく他人の意見に左右される部分もあるから。
--ちょっとしたことで「裏切られた」と思ってしまったりする?
玉手初美:うーん……甘えちゃう。甘えちゃうんで、なるべく聞かないようにしてます。
--こうやって会って話すと笑ってくれますけど、ステージ上では基本的に笑わないというか、怒ってるじゃないですか。
玉手初美:いや……(笑)
--怒っている訳ではない?
玉手初美:笑ってるときもあります。なんか、なんて言うんだろう? 歌詞とか見ると「暗い」とか「重い」とか思うかもしれないけど、でも自分ではそんな風に思ってなくて。
--「偉い人のすることは全部認められるこの世界に……イライラします」みたいな歌をなんでうたいたいと思ったんですかね?
玉手初美:元々は普通の歌詞を書いてたんです。クセは元々あったんですけど、それをすごく押さえ込んでて。それは出しちゃダメなんだなって認識だったんで。でもオータさんに会って歌を聴いてもらったら、私の中でその悪いと思っていたところが逆に良いって言ってもらえて、それで世界がガラッと変わりました。前は普通の歌詞を書いて、明るい歌をなるべく歌おうとしていたんですけど、実際はそんな全部が全部明るい訳じゃないじゃないですかで、いろんなものが溜まってて、それをバン! って出したのが1枚目の『遺書』。それがきっかけですかね。それで今みたいな歌詞を歌うようになった。でも明るい曲も……
--今後歌っていく可能性はある?
玉手初美:もちろん。。
--YUIの「CHE.R.RY」みたいな?
玉手初美:いやぁ~(笑)
--それはない(笑)?
玉手初美:分かんないですけど、なんか、そういう「青春だ!」みたいな、分かりやすい青春をしたことがないので……それは書きたくても書けない。でもアイドルとか見てるとすごく癒されますし、アイドルが歌ってる歌詞に「あ、そうなんだな」って単純に思ったりもします。ただ、自分自身はそういう歌詞は書けない。なんか……曲がってるんですかね(笑)?
--自分の歌がどんな風にお客さんに響けばいいなと思ってますか?
玉手初美:それぞれ好きなように感じてもらえたらそれでいいんですけど、自分が音楽に助けられた……まぁよくある話なんですけど、私、友達とかそんなに多くなくて、ずっと家でひとりだったんで、そのときに音楽をやってると居場所が出来たような気がして。それがすごく嬉しくて音楽にハマっていったんです。だから私の音楽でもそんな風に思ってもらえたらいいなって。
取材&テキスト:平賀哲雄
撮影:内山直也
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