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2015/08/04

『エリック・サティとその時代展』開催記念、『高橋アキが語り弾くサティ』展示室内で開催

 渋谷Bunkamura ザ・ミュージアムで開催されている「エリック・サティとその時代展」開催を記念し、サティ演奏の第一人者である高橋アキによるサロン・コンサートが7月27日に行われた。

 あまりに有名なジムノペディ第1番から始まったそのコンサートは、暗い森の中をぐるぐるとさまよい続けるようなグノシエンヌ第1番へと続き、冷たい小品集より「逃げ出させる歌」、そして楽しげに回るメリーゴーランドのようなワルツ「金の粉」が演奏された。どんなに楽しくても、どんなに哀しくても、目をまっすぐに見開き、重くなく軽くなく、極めてニュートラルな佇まいの成せる好ましいクリアさが、情景描写を際立たせている。長年サティを紹介し続け、そのニュアンスを完全に自分のものとする高橋アキの手から、わたしたちにとってポピュラーなサティの一面がまず紹介された後、後半は一転、1910年代に入ってからのユーモラスでかつシュール、シャープな作品が演奏された。

 「ノクチュルヌ第6番」は1990年代、サティの没後に発見・補筆されたサティの中では「新しい」作品。前期のニュートラルさから抜け出し、そこに主体とドラマを感じさせる。「乾からびた胎児」は、海の胎児たちの物語、そして続いて「最後から二番目の思想」が演奏された。随所に現れる不思議な指示、ニヤリとさせられるパロディ、そして楽譜に書かれるその奇妙なストーリー。作曲家は演奏者自身の朗読を禁じているのだが、この日は特別ということで、高橋アキが弾き語りを披露した。高橋アキの朗読が心に寄り添い、情景が浮き上がることで、サティのユーモアがより魅力的に感じられる演奏となった。最後の一曲は誰もが知る名曲「ジュ・トゥ・ヴー」が甘やかに奏されての終演となった。

 エリック・サティは1866年に生まれ、19世紀末から20世紀にかけてパリで活躍した作曲家だ。ピカソとバレエ・リュスで作品を作り、スウェーデン・バレエ団の公演をピカビアと成功させ、またドラン、ブランクーシ、マン・レイなど、多くの芸術家達との交流によって刺激を与えあい、作品を生み出した作曲家でもある。「エリック・サティとその時代展」では、刺激を与え合った芸術家たちの作品を通してサティという作曲家の新たな側面を浮かび上がらせる展示を行っている。

 本展のひとつの見所は、楽譜集「スポーツと気晴らし」の展示と、高橋アキのピアノとフランス語朗読による、その映像上映だ。サティ自身の言葉によるユーモア溢れる序文と対位法を駆使した序曲「食欲をそそらないコラール」から始まり、人気イラストレーターであったシャルル・マルタンの絵とサティの詩的な言葉がそえられた小曲20曲が、映像としても鑑賞できる。小節線の無い素描的な自由さを感じさせるその譜面を見ることで、サティの音と共に心が飛び立つ瞬間を実感できることだろう。

 「エリック・サティとその時代展」は引き続き8月30日まで開催中。開催期間中は無休で、日曜から木曜は19:00まで(入館は18:30)、金・土曜日は21:00まで(入館は20:30)、と、比較的遅い時間まで楽しむことが出来る貴重な展覧会だ。暑苦しい猛暑を脱出し、仕事帰りに、夏休みに、見るだけでなく耳を楽しませる展覧会へ、足を運んでみて欲しい。text by yokano

more info:http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/15_satie/

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