2015/07/01
惚れ惚れするほどに上質なポップ・アルバムだ。カーリー・レイ・ジェプセンによるメジャー2作目(通算3作目)となるアルバム『E・MO・TION』が、6月24日、全世界に先駆けて日本でリリースされた。直後にプロモーション来日も行われたので、この機会にカーリーと触れ合ったという人は多いだろう。カナダ出身のカーリー・レイ・ジェプセンと言えば、ここ数年の全世界的なガールズ・ポップの隆盛の中で「Call Me Maybe」(US、UK、本国カナダなど各国で1位)やアウル・シティーとの「Good Time」といった、元気一杯なダンス・ポップで人気を博したシンガーだ。
厳しい活動スケジュールの中、1年半以上をかけて製作されたという『E・MO・TION』は、カーリーの新たな魅力を引き出すことに成功している。まず、ジャケットに記されたタイトル・ロゴのデザインが極めて80年代的である。シャーデーのバンドが鳴らしたような艶かしいサックスから始まる先行セカンド・シングル“Run Away With Me”や、続く「Emotion」の80年代マドンナを彷彿とさせるダンス・ポップといったアルバム序盤からも伝わるように、今回のカーリーは温故知新のスタイルを確立している。言葉通り、過去の模倣には留まらず、新鮮な視界を切り拓くためのアイデアだ。
現代的なエレクトロ・ハウスを用いてカラフルなガールズ・ポップ道を成功させたカーリーは、そもそもロックやカントリーといったルーツ志向の音楽的背景をもっていたアーティストだ。つまり、大きな支持を獲得した前作『Kiss』(2012)の季節さえ、彼女にとっては通過点だったということなのだろう。狂おしいコーラスが折り重なって迫るシングル曲「I Really Like You」(作曲にはザ・カーディガンズのピーター・スヴェンソンが携わるという、これまた温故知新な人選)や、なぜシングル化されないのか不思議なくらいの高品位な名曲「All That」といったふうに、カーリーはクオリティの突き詰められた楽曲群によって新境地を見せてくれる。
『E・MO・TION』に参加したアーティスト達の顔ぶれがまた豪華で、「All That」にはUKの先鋭的マルチ・ミュージシャンであるブラッド・オレンジことデヴ・ハインズ。「Boy Problems」や「Making the Most of the Night」といった中盤の焦燥感たっぷりなディスコ・ナンバーにはオーストラリアの才媛シーアが。アルバム終盤に沸々とした高揚感をもたらす“Warm Blood”には、ヴァンパイア・ウィークエンドのロスタム・バトマングリが参加。彼らが現代的かつクールな知性を持ち込み、温故知新のアイデアを一層研ぎ澄ませている。
本編の12曲以外にも、日本盤ではボーナス・トラック含め全18曲収録と聴き応えは充分(デラックス・エディションにはMVやインタヴュー映像を収めたDVDも同梱されている)。今夏、カーリーはSUMMER SONIC 2015出演(大阪8月15日、幕張8月16日)のため早くも再来日を果たす予定なので、ぜひじっくりと予習して、今の彼女の姿を見届けて欲しい。
[Text:小池宏和]
◎リリース情報
『エモーション』
カーリー・レイ・ジェプセン
2015/6/24 RELEASE
通常盤:2,200円(plus tax)
日本独自企画【CD+DVD】デラックス盤:3,000円(plus tax)
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