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2014/12/31

多種多様にアピールするキッド・インクのメジャー作から聴こえるラップ・シーンのホープの実力

 2013年にEP『Almost Home』でメジャー・デビューを果たしたキッド・インクによるアルバム『My Own Lane』が、この12月に日本盤化された。現LA ラップ・シーンのホープであるキッド・インクは、コアなヒップ・ホップ・ファンのみならず、多種多様な嗜好を持つリスナーに対しても積極的に働きかける、優れたプロデューサー気質を備えたラッパーでもある。

 米アルバム・チャートで最高3位、ラップ・チャートで1位を飾った、キッド・インクにとってメジャー初のフル・アルバム『My Own Lane』には、今の飛ぶ鳥を落とすような勢いとクリエイティヴィティがふんだんに落とし込まれている。優美なイントロからドラマティックに立ち上がる挨拶状「Hello World」に続いて、シーンの現状に新しい息吹を吹き込んでやろうする意気込みがビシビシ伝わる「The Movement」と、オープニング2曲からしてパンチが効いている。「The Movement」で『燃えよドラゴン』のテーマを落とし込むユニークなプロダクションは、ヒット・メーカーのデンジャによるものだ。

 先行シングル群のクリス・ブラウンを迎えた「Show Me」やタイガとの「Iz U Down」は、キッド・インクの抜けの良いヴォーカルを活かした官能的なタッチのナンバー。クリス・ブラウンは「Main Chick」でも登場している。メロディアスで耳あたりの良いアプローチはキッド・インクの重要な武器ではあるけれども、一方でキング・ロスとの鋭い掛け合いを披露する「No Option」やプシャ・Tとの「Murda」では、ファストでキレの良いラップに強烈な説得力を忍ばせている。

 メロディと鋭いラップを兼ね備えた、キッド・インクらしい白眉のナンバーと言えば、アルバム終盤に配置された「No Miracles」だろう。エル・ヴァーナーによる「奇跡など起こらないけれど、不可能なこともないわ」というソウルフルなフックが溢れ出し、キッド・インクとマシン・ガン・ケリーが新しい時代の扉をこじあけるような力強いラップを放っている。オリジナル盤は全13曲収録だが、日本盤はEP「Almost Home」収録曲など6曲が追加されている。

 なお、キッド・インクは既に新たなアルバムに向けてのアクションを見せており、シングル「Body Language」ではアッシャー、そしてこちらも先頃アルバム・デビューを果たしたティナーシェを迎え、瑞々しくセクシーなコラボレーションを繰り広げている。『Full Speed』というタイトルがアナウンスされている2015年のキッド・インク新作にも、今から要注目だ。

Text:小池宏和

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