2014/11/05
デビュー当時から100年にひとりの天才と称され、35年近くにわたって世界中の観客を魅了してきたシルヴィ・ギエムが、このたび〈ライフ・イン・プログレス〉と題した現役最後となる世界ツアーの概要を英国ロンドンのサドラーズ・ウェルズを通じて発表した。アクラム・カーン、ラッセル・マリファント、ウィリアム・フォーサイス、マッツ・エックによる新作2作品と再演2作品が上演される。
ギエムは、本ツアーについて「感謝と心を込めてこれまで踊ってきたステージを巡り、踊りと共にさよならを告げる最後のツアー」と称し、「考えた末、針路を変えることにしました。「成長し続ける人生」…それがわたしの人生。」とコメントしている。本ツアーはイタリアのモデナで2015年3月31日にスタートし、ロンドンのサドラーズ・ウェルズ劇場を含む世界各地を公演して、12月日本で最終日を迎える。
photo: Gilles Tapie
◎シルヴィ・ギエム メッセージ全文
39年前、わたしがダンサーとして、初めてしたレヴェランスは予期しない急ブレーキをかけて「横滑り」をしながらのものでした!
当時わたしたち「パリ・オペラ座の小ねずみたち」は毎日のように、レッスンに遅刻しないために廊下を全速力で走りながら、すれ違うバレエ団の先輩ダンサー一人ひとりに忘れずに挨拶をしなければなりませんでした。
先輩方は自分たちが偉いと信じていますから、お高くとまっています。そして面倒なことに、たいてい何の前触れもなく、わたしたちの前に突然「気取った」様子で現れるのです。迷路のように入り組み、何世代にもわたる歴史と無数の「横滑り」で磨きあげられた廊下でのそんな出会いには、たいへんな危険がともないました!
猛スピードで駆け込むわたしたちは、先輩の前で急ブレーキをかけるとお決まりの「ポジション」をとらなければなりません。その「ポジション」とはすなわち、「両腕をまっすぐ逆Vの字におろし、両手の先をぴんとそらせます。軸足は軽く曲げ、後のつま先を伸ばし、軸足の足首に押し付けるのです」。先輩に敬意を示すこのポーズを、わたしたちはすくなくとも0.5秒がんばって維持したのち、再び次の教室に向かって走りだすのでした。バランスの法則に逆らい、お決まりのお辞儀は優雅とはいえませんが、おかまいなしです。「任務完了!」でした。
39年間の「トレーニング」を経て、わたしは最後のレヴェランスをすることに決めました。今回は「横滑り」することなしに。
2015年は、感謝と心を込めてこれまで踊ってきたステージを巡り、踊りと共にさよならを告げる最後のツアーとなります。アクラム・カーン、ラッセル・マリファント、ウィリアム・フォーサイス、マッツ・エックによる新作2作品と再演2作品となります。
わたしは39年間のすべて、いずれの時間も愛しました。そして今も変わらず愛しつづけています!! では何故? それはただ単に、最後まで自分がこれまで情熱と誇りを持ってしてきたことをやり遂げたいからです。
(引き際を自分で判断できずに、延々とステージに上がり続けないよう「殺人許可証(映画「007 消されたライセンス」の原題)」を与えた「スパイ」役の友人がいるのですが、彼をその任務から解いてあげたかったのも一因です)
予期しない「横滑り」で始まった旅はかけがえのない旅でしたが、考えた末、針路を変えることにしました。「成長し続ける人生」…それがわたしの人生。
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