2011/09/30
モノクロはエルトン・ジョンには似合わない。ロックのもっともカラフルなパフォーマーのひとりとして、彼の名前が虹色のビジュアルの中に浮かび上がっている。5年間続いた最初のラスベガス滞在型公演『ザ・レッド・ピアノ』の重要なアトラクションだった有名なビデオ・スクリーンを考えればなおさらだ。
名前だけでも『ザ・ミリオン・ダラー・ピアノ』は前作よりぐっと力強く広大に聞こえるし、ジョンは続きを作ろうとしているわけではない。これはまったくの新しいショーであり、歌とスペクタクルの合体というよりもっと音楽に焦点を合わせたものなのだ。
『ザ・レッド・ピアノ』より30分長く、ジョンの個人史に重きを置いた『ザ・ミリオン・ダラー・ピアノ』は水曜日にシーザース・P@アレスのコロセウムで幕を開けた。ふたの閉じられたヤマハのグランド・ピアノは製作に4年を要し、68のLEDビデオ・スクリーンがついていて、映像やアニメなどを映すスクリーンになる。彼の他の5台のピアノ同様、女性パフォーマーの名前が付いていて、これは亡きキャバレー/ジャズ・シンガー/ピアニストのブロッサム・デアリエにちなんでブロッサムと呼ばれている。
19曲(うち10曲は『レッド・ピアノ』にも入っていた)が2時間の新しいショーで演奏され、そのほとんどが作詞家のバーニー・トーピンとの共作曲だ。「ベター・オフ・デッド」や「インディアン・サンセット」のように初期の目立たない曲も含まれていた。「アイム・スティル・スタンディング」ではエルトンのビデオ・イメージが流されタイム・トラベルの様相だった。
マーク・フィッシャーのローマ時代のアーチ風セットは二つに分かれ、ジョンの6人組バンドと4人組シンガーの後ろのスクリーンはムードを作り出したり物語を語ったりするのに使われる。「ロケット・マン」はハッブル望遠鏡と共に宇宙のイメージを醸し出していた。9/11と結びつく「モナ・リザ・アンド・マッド・ハッター」は最近撮影されたニューヨーカーのモノクロのビデオ・ポートレートとともに演奏された。「タイニー・ダンサー」ではパトリック・ウッドロフのライティングが印象的だった。
大半の曲でビデオが重要な要素になっていたが、もっとも素晴らしかったのは「グッドバイ・イエロー・ブリック・ロード」で、彼のこれまでの歩みを辿る映像がアニメ風に描かれていた。ジョンによると、およそ4ヶ月の間ショーのセットアップはフレキシブルに変えられ、彼の望むように曲目も変えることがで
きるのだそうだ。
音楽的にジョンは誰かを驚かそうとしているわけではない。長年のバンド仲間であるギタリストのデイヴィー・ジョンストン、ドラマーのナイジェル・オルソン、そして初日にはパーカッショニストのライ・クーダーが「ロケット・マン」では元気のいいピアノを聞かせ「レヴォン」ではゴスペルの要素を加えていた。オルガンはキム・バラードで、二人のチェロ奏者がいい味を出している。
チアリーダーの役割を演じるジョンはダーク・スーツに金色の靴でピアノの前に座り、拳を突き上げたり、シンガロングを誘ったりした。曲の間には良くしゃべり、ジョン・レノンやエリザベス・テイラー、ネルソン・マンデラ、レオン・ラッセル、バーニー・トーピンらの名前が挙がった。これはパーソナルなショーで、『レッド・ピアノ』よりも控えめではあるが、よりヒット曲重視で、エルトン・ファンだったら誰にでもピッタリ来ることだろう。
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