2014/09/12
ブレヒト作、ヴァイル作曲による傑作『三文オペラ』が新国立劇場で開幕した。メッキースは音楽劇初挑戦の池内博之、ポリーはNYで研鑽を積んだソニン。石井一孝、大塚千弘、島田歌穂らミュージカル界のスターと、あめくみちこ、山路和弘ら演劇界の実力派俳優達が共演する。
「JAPANMEETS…─現代劇の系譜をひもとく─」シリーズ第9弾の幕開けを飾る『三文オペラ』。音楽、演劇、ミュージカル、そのどれでもあって、どれでもなく、あるいは全てがミックスされたこの芝居は、19世紀末のロンドンを舞台に、階層社会を痛烈に、風刺的に、しかしどこかコミカルに描いた。2つの世界大戦を経て混乱の中にあった1928年、ベルリンで初演され瞬く間に大ブレイク。何度も映画化された傑作だ。
ありとあらゆる階級と立場の女性を、その甘いマスクとセクシーさ、紳士な態度で魅了し世を渡り歩く主役、メッキース演じるのは池内博之。メッキースと熱烈な恋に落ち人生がたちまち変わってしまった「乞食王ピーチャム」の娘ポリーは、NYでさらに研鑽を積んだソニンが出演。メッキースへの友情と業務上の立場で揺れる警視総監タイガー・ブラウンに石井一孝、かつてはメッキースと暮らし愛し合った男を二度裏切る娼婦ジェニーに島田歌穂などミュージカルで活躍する俳優陣が登場。そしてロンドンの乞食達の総元締め、乞食を商売とする「乞食王」ピーチャムに山路和弘が配役されるなど、各界の実力派が勢揃いした。
有名な劇中歌が多い本作。音楽がどう表現されるのかも見所のひとつだ。ジャズ・ナンバーとしても大ヒットした「マック・ザ・ナイフ」が流れ出すと、メッキースの登場を示唆する不穏さと共に物語がはじまる。ソニン演じるポリーの『バルバラ・ソング』は、どうしようもない女の性と恋を歌っているのに、いっそ清々しいほどコケティッシュでコミカル。島田歌穂演じるジェニーの『ソロモン・ソング』は、さすがの圧巻。昔話を三人称的に語る歌詞の中に、その役柄の人生が見え隠れし、愛する男を二度までも裏切る女の現実とロマンが混沌としたまま表現される。
見ているわたしたちに舞台から直接語りかけられ、物語に没入させられることなく、現実と物語を行き来して、俳優と共に在ることで成立する「ブレヒト」の芝居。この舞台に、珠玉の出演者たちと共演できる機会を、逃さないようにしたい。text: yokano
◎公演概要『三文オペラ』
作:ベルトルト・ブレヒト
音楽:クルト・ヴァイル
翻訳:谷川 道子
演出:宮田 慶子
音楽監督:島 健
会場:新国立劇場 中劇場
公演期間:2014年9月10日(水)~9月28日(日)
more info:http://www.nntt.jac.go.jp/play/diedreigroschenoper/
写真提供:公益財団法人 新国立劇場運営財団
撮影:谷古宇正彦
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