2014/08/23 10:00
「第九」を舞台にベジャールが繰り広げるスペクタクル、ロマのコミュニティが継承する伝統的なフラメンコ、ミニマルな反復と倍音が織りなす静寂と透明感、そして新作。音楽・音と身体の間に濃密で興味深い関係性を持った公演3つと映画をピックアップした。
ベジャール振付のベートーヴェン「交響曲第九番」は、ベジャール自身が「ダンスによるコンサート」だと言っていた通り、ダンサーとオーケストラ、歌い手など総勢350人に及ぶアーティスト達が一体となって織りなす、壮大なシンフォニーだ。4楽章をそれぞれ「地」「火」「水」「風」の象徴と見立て、“歓喜の歌”では全ての楽章のダンサーが合流。群舞が作り出すその渦の中に、客席の我々もが巻き込まれていく。東京バレエ団とモーリス・ベジャール・バレエ団が交わり踊るこの公演では、メータ指揮によるイスラエル・フィルなど音楽の面でも豪華な面々が名を連ね、そのコラボレーションが見所となっている。このスケールの大きさが故に、今回は実に15年振りの上演。これを見逃す手は無いだろう。
音楽と生活と人生。その離れがたい濃密な関係を、バルセロナのヒターノ達を通して描くドキュメンタリー映画『ジプシー・フラメンコ』が全国で上映中だ。伝説のフラメンコダンサー、カルメン・アマジャの血を継ぐ若き踊り手カリメが映画冒頭に繰り出す、マシンガンのような高速サパテアード。ロマ・コミュニティに生きる5歳の少年ファニートの体に、既にしっかりと染み込んでいるコンパス。歌とギターと踊りという表現方法を通して、まさにその生き様が立ち現れるドキュメンタリーだ。フラメンコの真髄とも言えるその生活と音楽とを見ることで、ルーツや歴史、育まれてきた文化や遺産を継承し表現していくということについて、改めて思いを馳せることになるだろう。
ミニマルミュージック・ファン、「必見」。Hakuju Hallの主催する異分野コラボシリーズ第2回は、『テトラヘドロン-4人の女性によるライヒ&ペルトの世界』だ。加藤訓子のマリンバが、スティーヴ・ライヒ「ニューヨーク・カウンターポイント」やアルヴォ・ペルト「鏡の中の鏡」などを響かせる中、高木由利子がその場その瞬間を映し出したライブ写真を舞台美術に、黒田育世、中村恩恵によるダンスが繰り広げられる。衣装は三宅一生がクレジットされており、シンプルな構成の舞台だけにその影響力は計り知れない。まさに「音楽を見に行く」のが楽しみになるアーティストが揃った舞台だ。
注目のコンテンポラリーダンス・プロジェクトであるJAPON dance project新作「CLOUD/CROWD」。世界の一流バレエ団での実績を持ち、ダンサーとしてのみならず振付家として国際的に活動する5人の日本人アーティストが中心となり、更に豪華ゲストダンサー陣が新国立劇場に集結。舞台美術にはカーンやギエムとの作品を手がける針生康、照明には足立恒を迎えるなど、舞踊舞台を知り尽くした強力な布陣で臨む。音楽監修、作曲は東京在住のフランス人アーティスト、ダビ・ベルジェ。舞台作品にも多くの楽曲を提供するマルチ・アーティストとの、今ここから産まれる新しい音楽とダンスのコラボレーションが楽しみな舞台になりそうだ。text:yokano
◎公演情報
東京バレエ団&ベジャール振付『ベートーヴェン 第九交響曲』
日程:2014年11月8日(土)~11月9日(日)
会場:NHKホール
http://www.nbs.or.jp/stages/1411_Ninth-Symphony/index.html
『ジプシー・フラメンコ』
日程:2014年8月9日(土)より
全国の映画館にて順次公開
http://gypsy-flamenco.com
『テトラヘドロン-4人の女性によるライヒ&ペルトの世界』
日程:2014年12月19日(金)
会場:Hakuju Hall
http://www.hakujuhall.jp/syusai/16.html
JAPON dance project『CLOUD/CROWD』
日程:2014年9月30日(土)~9月31日(日)
会場:新国立劇場 中劇場
http://www.japondanceproject.com
写真
1.モーリス・ベジャール『第九交響曲』パリ・オペラ座バレエ団公演より (C)Kiyonori Hasegawa
2.モーリス・ベジャール (C)F. Paolini
3.ズービン・メータ (C)Helikon
4.映画『ジプシー・フラメンコ』カリメ・アマジャ
5.加藤訓子(C)michiyuki ohba
6.黒田育世(C)Daisuke Miura
7.高木由利子(C)KOHEI TAKED
8.中村恩恵(C)MITSUO
9.CLOUD/CROWD
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