2014/08/09
世界から選りすぐりのダンサー達が、見逃せない演目を携えて日本へやって来る。古典中の古典、コンテンポラリーな新しい解釈、そしてパフォーマンス・アート、それら全ての源泉まで。是非足を運びたいダンス3公演と展覧会をピックアップした。
ボリショイ・バレエ『白鳥の湖』グリゴローヴィチ版は、数ある振り付けの中でも特別だ。主役級の実力を持つダンサーが何人も登場し、登場人物の重要度を増すことで、物語に厚みを持たせることに成功している。その振付を可能にするボリショイ・バレエのダンサー層の厚さは、コールドバレエを見れば一目瞭然。白鳥たちの繊細に整えられた群舞は、理想的な「白鳥」の幻想的な風景を描きだしてくれるだろう。特筆すべきはロッドバルトの役回り。スタイリッシュでスマートな風貌と王子との間にある奇妙な関係、そして大きな跳躍やダイナミックな振り付けをクールにこなす役どころは、「白鳥」の物語に新たな魅力を見出させてくれるはずだ。
出現する白鳥が全員、男性であることで話題になった、マシュー・ボーンの『白鳥の湖』。古典である「白鳥」に演出家ボーンが新たな息吹を吹き込み、1995年の初演で世界中にブームを巻き起こした。筋書きはオリジナルのストーリーへと変貌を遂げ、舞台や衣装のテイストも現代的。自分の欠落したものを求めて彷徨う王子、王子の唯一の理解者として描かれる白鳥、スタイリッシュでセクシーな謎めいた男が、男性らしい圧倒的運動量でもって舞台を彩る。この「舞台」がバレエという枠から越えた存在であることは、ブロードウェイ進出、トニー賞にて、最優秀ミュージカル演出賞、振付賞、衣裳デザイン賞の3冠に輝いたことからも明白だ。今回の再来日では、ザ・スワン/ストレンジャー役が豪華なトリプルキャスト。どの白鳥に会いに行くかが、悩ましい。
10以上の様々なナショナリティをもつダンサーとミュージシャンたちの身体表現が描き出す「全部入り」のパフォーマンス・アート『BABEL(words)』。コンテンポラリー・ダンス界に圧倒的な存在感を示す振付家シディ・ラルビ・シェルカウイとダミアン・ジャレによる最新作。彫刻家ゴームリーが創り出した舞台装置は、そのフォーメーションによって変幻自在に意味を変える、巨大な直方体フレームが5つだけというシンプルさだ。「バベル」—それは言語の象徴。人がわかり合う事と協業する事の象徴。そして千々に分裂することの象徴でもある。始めに言葉があった、そしてわたしたちは言葉でもって文化を形成し、言葉でもって自分と他人とを分かつのだ。この問題意識を、時にユーモアにそしてシャープに、観客は突きつけられる。
最後に現代の身体パフォーマンスに魅せられた舞台ファンとしては、是非足を運びたい展覧会「バレエ・リュス展」を紹介しよう。ニジンスキー、バランシン、ドビュッシー、ストラヴィンスキー、マティス、ピカソ、シャネル… 当代最高のアーティスト達が集って創り上げた、近代前衛舞台芸術の結実とも言える「バレエ・リュス」。かのプロデューサー、ディアギレフが主宰したこのバレエ団が産みだした芸術の影響下から逃れ得ているアーティストは、現代にはいないはずだ。音楽や踊りの世界のみならず、美術、ファッションでも革新を巻き起こしたこのバレエ団の32演目のコスチューム・コレクション、必見だ。 text:yokano
◎公演情報
ボリショイ・バレエ『白鳥の湖』
日程:2014年11月20日(木)、24日(月祝)、26日(水)
会場:Bunkamura オーチャードホール
http://www.japanarts.co.jp/bolshoi2014/swan.html
photo: (C)Damir Yusupov
マシュー・ボーンの『白鳥の湖』
日程:2014年9月6日(土)~9月21日(日)
会場:東急シアターオーブ
http://www.swan2014.jp/
『BABEL(words)』
日程:2014年8月29日(金)~8月31日(日)
会場:東急シアターオーブ
http://www.promax.co.jp/babel_words/
photo: BABEL(words)(c)Koen Broos
『魅惑のコスチューム:バレエ・リュス展』
開催中~9月1日(月)
会場:国立新美術館
http://www.tbs.co.jp/balletsrusses2014/
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