2014/08/01
今や21世紀のアメリカを代表するシンガー・ソングライターと言ってもいいだろう。ジェイソン・ムラーズの通算5作目となるフル・アルバム『イエス!』が、全米アルバムチャート“The Billboard 200”で初登場2位をマークした。名パロディ・アーティストのウィアード・アル・ヤンコビックに阻まれ、惜しくも前作『ラヴ・イズ・ア・フォー・レター・ワード』同様に1位獲得はならなかったが、新作『イエス!』はそのタイトルの響きどおりに、極めてポジティヴで、風通しの良い傑作アルバムだ。
アルバムは、ストリングスとホーン、ピアノとコーラスが清々しい夜明けの訪れを告げるようなイントロダクション「ライズ」で幕を開け、シームレスに先行シングル曲「ラヴ・サムワン」へと連なる。<誰かを愛すると、胸の鼓動が高まるよね。地に足が付かなくなって、ふわふわした気持ちになるよね>という、実にジェイソンらしい率直なラヴ・ソングなのだが、とにかく今回のアルバムは歌詞を引き立て、すっとナチュラルに後押しするような音楽の働きが素晴らしい。言葉と、メロディや音色との繋がりに、一切の力みや澱みが無いと言えば良いだろうか。
ジェイソンは、『MR. A-Z』(セカンド・アルバムのタイトル)と自ら名乗っていたことからも分かるように、フォーク、カントリー、ソウル、ファンク、レゲエと、多彩な楽曲スタイルを持ち味にしたソングライターだった。しかし『イエス!』では多くの楽曲がアコースティックで落ち着いた作風になっており、さまざまな角度から「愛」を見据えるアルバムに仕上げられている。よくよく聴けばアレンジも周到に練り込まれているのだが、たとえギター1本の弾き語りであってもメッセージと音楽の素晴らしさが充分に伝わるような、そういうソングライティングの高みへと到達しているのだ。多くの楽曲で共同プロデュースを務めているのは、ブライト・アイズのメンバー/プロデューサーであり、ライトスピード・チャンピオンやジュリアン・カサブランカス(ザ・ストロークス)のソロ作なども手掛けているマイク・モーギス。落ち着いた音なのにヴィヴィッドに凛と伝わる、そんな作風は彼の功績も大きいはずだ。
狂おしいまでの夢想が言葉と共に弾ける「エヴリウェア」、目眩がするほど美しいハーモニー・ワークで彩られた「イッツ・ソー・ハード・トゥー・セイ・グッバイ・トゥー・イエスタディ」、ジェイソン流の人生訓がカントリー・ポップとして歌われる「3シングス」、そして無限大の愛の上にひときわ大きな輝きを放つクライマックス「シャイン」と、全曲シングル・カット出来てしまいそうな楽曲の粒ぞろい感は圧巻だ。ジェイソンの歌う愛とは人々の関係性そのものであり、歌う理由もまたそこにある、とばかりに確信のナンバーを連発している。
この11月には、アルバムに参加したレイニング・ジェーンを伴って東京と大阪で計3公演の来日公演も予定されている。どうやら新作モードの、かつてないほどクラッシーなステージになりそうだが、感涙の友愛ナンバー「ベスト・フレンド」は日本の多くのファンにも届けられるのではないか。ぜひ新作『イエス!』をしっかり聴き込んで、ジェイソンの来日に備えて欲しい。
Text:小池宏和
◎リリース情報
『イエス!』
2014/07/16 RELEASE
WPCR-15813 2,457円(tax out.)
iTunes Store:http://bit.ly/1iIZNxy
◎公演情報
【Jason Mraz~An acoustic evening with Jason Mraz and Raining Jane~】
2014年11月11日(火)東京・オーチャードホール
2014年11月13日(木)大阪・グランキューブ大阪
2014年11月14日(金)東京・東京国際フォーラム ホールA
info:http://smash-jpn.com/
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