2014/07/11
7月5日に大阪はミナミで開催された街中ロックフェスティバル【見放題2014】に出演し、同日深夜には異例のワンマンまで行うなど、過酷なスケジュールを乗り越えての大活躍を見せたインディーズロックバンド 井乃頭蓄音団の1日に密着した。
井乃頭蓄音団とは、2008年にボーカル 松尾よういちろうを中心に結成されたバンドで、現在はヒロヒサカトー(g)、ジョニー佐藤(g)、大貫真也(b)の計4名がメンバーとして在籍。全員が30代の男性である彼らは、他にもバンドを掛け持ちするなど、インディーズバンドらしい活動で着実に人気を伸ばしている面々だ。
一方、【見放題2014】は大阪のアメリカ村周辺に点在するライブハウス、カフェ、クラブ等の複数のスペースを活用して行うサーキット型のロックフェスで、メジャーインディー問わず様々なバンドが出演。今年はGOING UNDER GROUNDやアンダーグラフなど歴戦のメジャーバンドも参加した人気イベントになるが、井乃頭蓄音団は2011年の初参戦より4年連続での出場となった。
<出発は2時。深夜の激走~たこ焼きパーティへ>
そんな彼らの【見放題2014】は、日付が7月5日に変わったばかりの深夜2時、東京都内よりスタート。レンタルした大型のワゴン車に各機材を詰め込むと、サポートドラマー 岸本篤志やマネージャーらを加えた大所帯で一路大阪へ。やはりインディーズバンドの遠征といえばワゴン車だが、メンバーも運転しながら夜通し500km弱。約8時間の激走を経て、朝10時すぎに会場となる心斎橋駅周辺に到着した。
井乃頭蓄音団の【見放題2014】出演は16時30分からなので、本来であれば余裕のある移動は可能だったはずだ。しかし、彼らは今回、井乃頭蓄音団からチケットを購入した人を対象とした“たこ放題”なるスピンアウトイベントを、11時30分より心斎橋の定番スポット 三角公園(正式名称:御津公園)で企画していたのだ。
心斎橋に到着したメンバーは、それぞれ有名たこ焼き店にて、ファンのために大量のたこ焼きを購入、園内に並べて、たこ焼きパーティを敢行。ジョニー佐藤直筆のオリジナル名札を首から下げた4~50人の男女が、メンバーも交えて和気あいあいと談笑する様はまるでお見合いパーティのようでなかなかシュールだ。なお、メンバー全員の昼食は、もちろんこのたこ焼きである。
<チラシ配りも自分たちで。【見放題2014】での痛快アクト>
そんなエクストラステージ約1時間を終えたメンバーは、一度楽屋に戻ると今度は自らがクリッピングした大量のチラシを手に、再び街へ。すでに別バンドのライブがスタートした【見放題2014】の各会場に散らばったメンバーは、声を大にしてチラシ配りを始める。
当然、軽食を摂る暇もなければ、仮眠すら許されない。華やかなステージのそれとは対照的な姿かもしれないが、これだってインディーズバンドなら誰もがやっていること。実際に彼らの周囲では、他バンドの面々が同じようにチラシや無料CDを配っていた。足りない人手は自ら補うDIY(=Do It Yourself)な精神で、少しでも知ってもらおうと額に汗しているのだ。
そうして各会場を巡ること約2時間、ようやく楽屋に戻ったメンバーたちは、いよいよ【見放題2014】出演のため、SUNHALLのステージへ。持ち時間は30分と短いながらも、今春にリリースした新作『おかえりロンサムジョージ』収録曲を中心に5曲を披露した。
特に終盤、松尾よういちろうの口(くち)ギターソロが炸裂する「アンゴルモア」から、同じく松尾の「心のなかにあるはずだ、お前の小さな親不孝!」という名文句が飛び出した「親が泣く」という流れは見事で、場内もひときわ沸いていたのが印象的だ。
<チラシに物販にと大奔走。大阪初ワンマンは深夜に開催>
さて、本来であれば井乃頭蓄音団の【見放題2014】はここで終了となるはずである。しかし今回の彼らには何と、このSUNHALLにて23時よりワンマンライブ【SUNHALL presents『いの放題2014』】が予定されていたのだ。
【見放題2014】でのライブが終わったのは17時。次の出演者のためにステージを片付け、物販エリアでグッズ販売も行っていたメンバーたちが、会場の向かいにあるホテルにチェックインできたのは19時前だ。そこからしばし休憩となるのだが、20時すぎより各会場のラストアクトが順に終了していくため、彼らはまたしてもチラシを手に会場へ。
このころになるとさすがに足取りは重く、その表情は疲れの色が隠せない。さらに21時半からはリハーサルが控えていたため、結局ロクに休むこともできずにSUNHALLに戻ることに。ここまでくると、バンドマンといえどかなりのハードスケジュールだ。
もはやボロボロの状態ではないかと目された井乃頭蓄音団 初の大阪ワンマン【いの放題2014】。リハーサルもどこか覇気がないように感じられたが、いざ本番でステージに立った5人は、豹変したようにエネルギッシュなアクトを展開していくのだから大したものだ。
さらにライブ中盤には、メンバーのほとんどが10代という4人組ガールズバンド まがりかどや、盟友 THEラブ人間のボーカル 金田康平がゲストとして登場。日付が変わるまで続いた深夜のワンマンとなったが、“2020年の東京五輪が終わるまでには頑張るから、僕を支えてくれ”と願望を吐露する新たな名曲「東京五輪」では、多くの観衆がその目に涙を浮かべる感動的な一幕もと、素晴らしいステージになった。
結局、このワンマンで20曲近く演奏し、果てないアンコールに何度も応えるサービス精神で、最後の最後まで戦い抜いた彼ら。その上、ライブ後はやはり物販があり、終電を逃した観衆と談笑するなどして、ホテルに戻ってきたのは朝4時。見上げる夜空はすっかり青味を増していた。
<これで終わりじゃない。翌日は下北で松尾ソロ>
こうして井乃頭蓄音団の長い一日+αはやっと終了……と思えたが、実はまだある。驚嘆することに7月6日、つまり【見放題2014】の翌日夕方より、松尾よういちろうは【第24回下北沢音楽祭】に弾き語りで出演するというのだ。
よって一同は、先ほど帰ってきたばかりのホテルで荷物を片付けて準備を急ぐと、7時30分にはチェックアウト。再びワゴン車に機材を積み込むと、前日に通ってきた道をなぞるように都内へ戻っていく。この日の昼食は、行きの朝食と同じくサービスエリア。思えば大阪では、飲食店を訪れる時間は一度たりともなかった。
途中、渋滞に巻き込まれながらも大貫による法定速度ギリギリの爆走で下北に到着し、野外になる南口 CLUB Que地上ステージのトリを担当した松尾は、予定を大きく上回って計40分も演奏。ファンから高い評価を獲得している名曲カバー「カントリーロード」では、“今の場所が 目的地だったかわからないけど 振り返るとそこにあるのは一本道でした”という名フレーズのリフレインに、幾人もの通行人が足を止めて聴き入っていた。そしてこのステージの終了をもって、ようやっと井乃頭蓄音団の長い2日が幕を下ろしたのだった。
日をまたいで約40時間、総移動距離は1000kmオーバー。フルバンドで2ステージ、松尾にいたっては3ステージをやりきるという行程は、さすがに過酷だっただろう。
しかし、こうした日常を送っているバンドは、日本各地にごまんといる。「それくらい普通じゃない?」と意に介さないミュージシャンだって少なくないかもしれない。そうまでしてライブを、音楽をやりたいというのがバンドであり、ステージに立った瞬間から強烈に輝き出すのがミュージシャンなのだ。
ちなみに井乃頭蓄音団は7月後半も仙台や下北沢でのライブ出演があり、8月にスキップカウズ主催のフェス、9月はTHE電影少女の企画ライブで北海道に初上陸することが決定している。
◎井乃頭蓄音団 2014年7月5~6日 タイムスケジュール一覧
<7月5日(土)>
02:00 都内某所にてワゴン車に全メンバーを収容、大阪へ出発
10:00 大阪アメリカ村に到着、機材搬入、たこ焼き買い出し等
11:30 たこ放題@アメリカ村三角公園(約1時間半)
13:30 【見放題2014】各会場にてチラシ配り開始
16:00 本番リハ
16:30 井乃頭蓄音団ライブ@SUNHALL(30分)
17:10 物販エリアにてサイン、握手に応じる
18:50 ヒロヒサカトーを除くメンバー、ホテルで小休止
20:15 SUNHALL出入口にてチラシ配り
21:15 【いの放題2014】リハスタート
23:00 井乃頭蓄音団ライブ@SUNHALL(2時間半)
<7月6日(日)>
04:00 物販等すべて終了、ホテルへ帰還
一部メンバーは外出
07:30 ホテルチェックアウト、機材積み込み等
09:00 大阪アメリカ村を出発、東京へ
17:00 途中、幾度か渋滞に遭遇しつつ下北沢到着
17:20 松尾よういちろう【第24回下北沢音楽祭】出演(40分)
南口 CLUB Que地上ステージにて野外フリーライブ
19:00 下北沢にて散会
◎井乃頭蓄音団 ライブ情報
【猫の夜会】
7月22日(火) 仙台FLYINGSON
【俺たちの陣-2マンライブ-】
7月28日(月) 下北沢CLUB Que
【イマフェス2014】
8月2日(土) 名古屋 ell.SIZE
8月3日(日) 大阪 ROCK TOWN
8月24日(日) 渋谷CHELSEA HOTEL
【THE電影少女企画】
9月26日(金) 北海道 札幌 SUSUKINO810
9月27日(土) 北海道 札幌 Sound Lab mole
9月28日(日) 北海道 札幌 LOG
取材:杉岡祐樹
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