2014/07/10
マーヴィンの魂よ永遠に――。
45回目の誕生日の前日に、牧師である父親が発した凶弾に倒れたマーヴィン・ゲイ。今年は彼の没後30周年に当たる。今もラジオなどで耳にする彼の名曲。その音楽の制作現場にいたギタリスト、デヴィッド・T.ウォーカーが、マーヴィンのトリビュート・ライヴを東京と大阪の『ビルボードライブ』で披露する。こんな夢のような企画、ソウル・フリークはもちろん、メロウなギターに酔い痴れたい人は絶対に見逃すことはできないだろう。
ソウルやジャズなどのジャンルを軽々と飛び越え、絹の上を滑るように流れるロマンティックなオブリガート奏法で一瞬にして曲にエレガントな“華”を添えるデヴィッド。彼は黒人の父親とチェロキー・インディアンである母親の下に生まれ、近所の教会で演奏されていたゴスペルに参加したのがきっかけでプロに。その後、ニューヨークに出て活動を始め、モータウンなどを中心に、枚挙に暇がないほどのレコーディングに参加してきた。それはマーヴィンを筆頭にスティーヴィ・ワンダー、ボビー・ウォマック、マリーナ・ショウ、ダイアナ・ロス、キャロル・キングといった米国の大物だけでなく、井上陽水、吉田美奈子、古内東子、DREAMS COME TRUE、SMAPまで。さらには一時期、山岸潤史らと『バンド・オブ・プレジャー』を結成し、素晴らしい作品を残している。まさに日本とは強い縁で結ばれているミュージシャンなのだ。
ソロ・アルバムも多数制作し、特に73年作の“PRESS ON”(「前に進め」の意)は、彼の音楽に対する信条にもなっているタイトルとして有名。そんなデヴィッドが今回のステージでは、どんな演奏を聴かせているのか。
もちろん、美しいアレンジが施された「ホワッツ・ゴーイン・オン」や「レッツ・ゲット・イット・オン」のメロディが奏でられているのは間違いないが、常に“PRESS ON”している彼のこと、それだけで終わるようなショウではない。必ずオーディエンスが感激する「何か」を披露してくれている。それはみなさんが会場で実際に体験すべきものだから、これ以上話すのは野暮というもの(笑)。
70歳を越えた今もスタイリッシュなスーツ姿で、気心の知れた3人のバックが繰り出す心地好いグルーヴに身を委ねながら美しいフレイズで“歌う”デヴィッドのギターを、夏の都会で聴くクールネス。
さぁ、今宵はみんな、彼の奏でるロマンティックな響きに包まれながら、僕も体験した“音の摩天楼”を満喫して欲しい。リラックスした気分で、身も心も委ねて。“PRESS ON”!
TEXT:安斎明定(あんざい・あきさだ)
編集者/ライター
東京生まれ、東京育ちの音楽フリーク。ヒートアイランドの夏を乗り切るには、キンキンに冷やしたトスカーナの白「カプスーラ・ヴィオラ」で決まり!
Photo: jun2
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