2014/05/14
5月14日から開幕する、新国立劇場の新制作オペラ『カヴァレリア・ルスティカーナ』と『道化師』が、5月11日に最終舞台稽古を行った。
マスカーニ作曲『カヴァレリア・ルスティカーナ』と、レオンカヴァッロ作曲『道化師』は、いずれも人々の日常を現実的に描いたヴェリズモ・オペラの代表作であり、上演時間が短いことから二本立てで上演されることの多い作品だ。また、両作品ともに朝から晩までの一日のストーリーであり、南イタリアを舞台にした愛憎劇であるなど、共通点がとても多い。
『カヴァレリア・ルスティカーナ』では、前奏曲とともに、ゆっくりと時間をかけて幕が開くと南イタリアの美しい朝の景色が広がった。ステージバックのホリゾント幕は、ストーリーの進行とともに少しずつ色が変化し、時間の経過を教えてくれる。本作は美しい間奏曲がとても有名だが、サントゥッツア役のルクレシア・ガルシアと、トゥリッドゥ役のヴァルテル・フラッカーロの、ふくよかで豊かな歌声によるアリアは素晴らしく、互いを罵り合う迫真のシーンでは、今の時代にも共通する愛、そして愛があるからこそ生まれる嫉妬などがリアルに伝わってきた。
休憩時間を挟み、『道化師』では閉まったままの幕の間から一座のトニオが顔を出して前口上を述べる。幕が開けると一気に道化師たちが表れ、自分もまるで道化師らの登場を待ち望んでいた村人の一員になったかのような錯覚に陥った。『道化師』の見どころの一つである劇中劇では、妻に裏切られたグスターヴォ・ポルタ演じるカニオの真に迫る演技で、どんどん現実と劇の見境がつかず混乱していく様子が痛いほど伝わってくる。また、2人の男性の間で揺れつつも、一座の演技をまっとうしようと必死で続けるラケーレ・スターニシ演じるネッダには、男性を魅了する美しさゆえの哀しさすら感じられた。前口上から最後の「喜劇は終わりました」という有名なセリフまで、トニオ役のヴィットリオ・ヴィッテリの演技は、ストーリーに絶妙なアクセントを添えた。
同じ舞台セットの中で演じられた両作品は、デフロによる正統派な演出によって、それぞれの登場人物の心情を、より鮮やかに描き出しており、瞬く間にドラマの中に引きずり込まれるような舞台を創り上げていた。
◎公演情報
オペラ【カヴァレリア・ルスティカーナ/道化師】新制作
イタリア語上演/字幕付
指揮:レナート・パルンボ
演出:ジルベール・デフロ
日程:5月14日(水)~30日(金)全6回公演
会場:新国立劇場オペラパレス
出演:
『カヴァレリア・ルスティカーナ』
サントゥッツァ:ルクレシア・ガルシア
ローラ:谷口睦美
トゥリッドゥ:ヴァルテル・フラッカーロ
アルフィオ:成田博之
ルチア:森山京子
『道化師』
カニオ:グスターヴォ・ポルタ
ネッダ:ラケーレ・スターニシ
トニオ:ヴィットリオ・ヴィテッリ
ペッペ:吉田浩之
シルヴィオ:与那城敬
合唱:新国立劇場合唱団
児童合唱:TOKYO FM少年合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
More info : http://www.nntt.jac.go.jp/opera/cavalleria/
写真:1枚目~4枚目
新国立劇場オペラ『カヴァレリア・ルスティカーナ』(2014年5月) 撮影:寺司正彦 提供:新国立劇場
写真:5枚目~8枚目
新国立劇場オペラ『道化師』(2014年5月) 撮影:寺司正彦 提供:新国立劇場
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