2014/04/08 12:20
新国立劇場とバイエルン州立歌劇場の共同制作によるアルバン・ベルク作曲オペラ『ヴォツェック』が4月5日より新国立劇場 オペラパレスにて開幕した。
オペラ『ヴォツェック』は、貧困から生まれる暴力と、その連鎖を描いたストーリー。無調音楽、シュプレヒゲザング(語り)、シュプレヒシュテンメ(歌と語りの中間)の手法が取り入れられた構成でオペラと演劇の魅力を併せ持ち、1925年の初演以来 世界各地で公演が行われている20世紀オペラの代表作だ。
幕が開けると、主人公ヴォツェックの不安定な精神状態や崩壊へ向かう家庭を表すかのように、大きな部屋のセットがユラユラと吊られている。その下のステージには水が一面に張られ、出演者の動きに合わせて飛沫をあげ、さらに水面に反射した灯りが舞台全体を不思議な揺らめきで包み込む。
妻マリーと幼い子供を養うため医者の人体実験まで務め、幻覚まで見るようになってしまうヴォツェック。ヴォツェック役のゲオルク・ニグルと、マリー役のエレナ・ツィトコーワの真に迫った演技と迫力のある歌声によって、客席は瞬く間に狂気の世界へ導かれていく。そして、鼓手長役のローマン・サドニックや医者役の妻屋秀和らが不穏な空気をさらに煽る。水の張ったステージでは、ヴォツェックをそんな生活に陥れた“社会”を糾弾するかのように、「職 求む」と書いたプラカードを首から下げ、冷たい水の中に巻かれたパンやコインを漁り、社会の闇を訴える。濃密な時間はあっという間に過ぎ、子供たちの澄んだ歌声によって1時間35分のステージは幕を閉じた。本作は、4月13日まで計4公演が予定されている。
◎公演情報
アルバン・ベルク作曲 オペラ【ヴォツェック】
日程:4月5日(土)14:00、4月8日(火)19:00、4月11日(金)14:00、4月13日(日)14:00
会場:新国立劇場 オペラパレス
指揮:ギュンター・ノイホルト
演出:アンドレアス・クリーゲンブルク
出演:ヴォツェック/ゲオルク・ニグル
鼓手長/ローマン・サドニック
アンドレス/望月哲也
大尉/ヴォルフガング・シュミット
医者/妻屋秀和
第一の徒弟職人/大澤 建
第二の徒弟職人/萩原 潤
白痴/青地英幸
マリー/エレナ・ツィトコーワ
マルグレート/山下牧子
合 唱/新国立劇場合唱団
管弦楽/東京フィルハーモニー交響楽団
共同制作:バイエルン州立歌劇場
写真:新国立劇場オペラ『ヴォツェック』(2014年4月) 撮影:寺司正彦/提供:新国立劇場
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