2014/03/31
ボサ・ノヴァ永遠の名盤『ゲッツ/ジルベルト』誕生50周年を記念したトリビュートライブが3月19日に六本木・ビルボードライブ東京で開催。ギタリストの伊藤ゴローを中心に、豪華ミュージシャンが集い、一夜限りのスペシャルパフォーマンスを披露した。
『ゲッツ/ジルベルト』はアメリカのサックスプレイヤーであるスタン・ゲッツがブラジルのジョアン・ジルベルトとアントニオ・カルロス・ジョビンと共に制作した作品で、ボサ・ノヴァという音楽を世界に広めた決定的な1枚だ。その50周年を記念して昨年6月に伊藤ゴローが指揮を執り、トリビュート盤『ゲッツ/ジルベルト+50』をリリース。まるごと1枚カバーしたこのアルバムは各方面から大絶賛。今回、多くのファンの要望に応えて、レコーディング・メンバーが集結するライブを行うこととなった。『ゲッツ/ジルベルト』は1963年3月18日と19日にレコーディングされたとあり、これ以上ない日程だろう。
この日は伊藤ゴロー(Gt.)、みどりん(Dr.)、秋田ゴールドマン(Ba.)の3人が屋台骨のメンバーとなり、ピアノ、サックス、ヴォーカルが続々と入れ替わるスタイル。もちろん、『ゲッツ/ジルベルト』の曲順通りに楽曲を披露していく。まずは土岐麻子(Vo.)、菊地成孔(Ts)、山下洋輔(Pf)を迎えて「イパネマの娘」でスタート。続いて「ドラリッシ」をこの日参加できなかった布施尚美に変わり花井ゆきが歌う。ピアノも山下から坪口昌恭に。アルバムに続きライブでも指揮を執る伊藤は「司会は苦手なんだけど…(笑)」と語りメンバーを紹介していく。3曲目「プラ・マシュカール・メウ・コラソン」ではヴォーカルは細野晴臣、サックスを清水靖晃が務める。大物の登場にどよめく客席と伊藤。しかし、演奏が始まれば、やさしくもひきしまったギターの音色が美しく楽曲を彩る。細野の語るような歌声も心地よく、清水がサックスがきっちり響いてバンドを引っ張り上げる。これぞベテランと言わしめる圧巻のパフォーマンスをみせた。4曲目「デサフィナード」では音源で坂本美雨が務めたヴォーカルを男性アーティストであるTOKUが任された。更にピアノに山下洋輔が戻り、レコーディング時の話題を振るもタジタジの様子。
そして、レコード盤を裏返すようにライブも折り返し地点へ。ここまでゲストたちをステージに呼び込んできた伊藤も「そろそろ自主的に入ってきていただいてもいいですか(笑)」と会場を和ませる。ヴォーカルに土岐が戻り「コルコヴァード」へ。CMソングからナレーターまでこなす彼女だけあって“溶け込む”ような歌声がボサ・ノヴァというジャンルにとてもフィットしているように思える。トリビュート盤ではカヒミ・カリィだったが、こちらも絶品だ。6曲目「ソ・ダンソ・サンバ」ではその音源の面子を完全再現したTOKU、菊地、坪口がフロントに戻りパフォーマンス。普段はフリューゲルホルンを持ってステージに立つTOKUもこの日はヴォーカルに専念。「ちょっと落ち着かない」と語っていたが、その歌声は菊池のサックスと重なり合い優しく会場を包み込んでいた。7曲目「オ・グランジ・アモール」は山下洋輔が堂々したピアノソロを披露。ピンと張りつめた空気の中で、緊張感たっぷりだが、演奏はエモーショナルで温かい。
本編を締めくくるべくヴォーカルとして登場したのは原田知世。ここまで熟練のベテランたちとステージを進めてきた伊藤も数々の共演で馴染み深い原田の姿に一息ついた様子。『ゲッツ/ジルベルト』を再現するセットリストだったが、「少し趣向を変えまして」と披露したのは5月7日にリリースを控える原田の新作アルバム『noon moon』から「青空の月」。そして「ヴィヴォ・ソニャンド」を優しく、甘く、大人っぽく歌唱して本編が終了。アンコールでは「演出上、予定を入れ替えました」と伊藤ゴロー、坪口昌恭、秋田ゴールドマン、みどりんの4人でジョビンの名曲「Samba De Uma Nota So (One Note Samba)」を披露。ラストは再び細野晴臣をヴォーカルに呼び込み「時間押してるからちょっと(テンポ)早めに…」とジョアン・ドナートの名曲「O SAPO」に突入。贅沢な時間はカエルの鳴きマネであるユニークな歌唱でフィナーレを迎えた。
<出演アーティスト>
伊藤ゴロー with GETZ/GILBERTO LOVERS
feat. 細野晴臣、原田知世、土岐麻子、TOKU、清水靖晃、菊地成孔、山下洋輔、坪口昌恭、秋田ゴールドマン、みどりん
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