2011/02/18
現代における音楽ビデオの低迷こそ、ベルリン映画祭の短編部門に出品されたARCADE FIREのSPIKE JONZEが監督したショート・フィルム『SCENES FROM THE SUBURBS』の機動力だった。
グラミー賞とブリット賞を獲得したばかりのバンドは時差ぼけでクラクラしながらも30分の映画のプレミアのために現れた。
彼らのアルバム『THE SUBURBS』にインスパイアされた映画は、「郊外と街がお互いに戦争を起こす」暗い世界を背景に、次第に離れていく友だちを挿話的かつ印象的に描いている。記憶の断片をつなぎ合わせようとする男性の思いつきで、シーンが飛んだり跳ねたり、浮かんだり消えたりする様子が俳優の十代らしい自然な演技で印象的に描かれている。
バンドのメンバー(であり兄弟の)WILL BUTLERとWIN BUTLERがJONZEと共にプロジェクトを考え、JONZEがオースチンでまったく無名のキャストを集めた。主役の女の子は学校の劇で照明を担当していたドラマ専攻生だった。
バンドがこんなプロジェクトに手を出すのは珍しい。ことにマーケティングの目的なしで作られる作品なのだから(ARCADE FIREはアルバムが出たときにこれを公開することをわざと避けていた)。
映画は、誰もがビデオを見たり作ったり、そのビデオの視聴者を見つけたりできるという、今の時代ならではのビデオの使われ方が発端になっている。
「僕たちは自分たちのビジュアルの財産で誰かに語ってもらいたかったんだ」とWIN BUTLERは言う。「そうすれば今から30年してコンピューターのウィルスがすべてのコンピューターを壊してしまい、人々が2000年代初期の頃の生活がどんなふうだったかをDVDで見なくちゃならなくなったとき、僕たちがビジュアル的に何を考えていたかという記録が残っているわけだよ。僕たちの生きている時代のせいで、何もかも失ってしまうのはイヤだったからね」
「音楽ビデオは僕たちがほんとの音楽ビデオを作るチャンスを手に入れる前に死に絶えてしまったんだ」とも彼は言った。
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