ビリー・アイリッシュが投稿したインフォグラフィックで世界一の富豪であるイーロン・マスクを公然と批判したことを受け、本人が先週反撃に出た。テスラCEOが持つ歴史的規模の富を慈善活動に活用できると示唆した彼女の投稿に対しマスクは、「彼女はあまり頭が切れるほうじゃないね」と応じた。

　ビリーが投稿したのは、54歳のマスクが世界初の兆万長者になる可能性があるという先週のニュースの最中だった。23歳のシンガーは、米国の富の格差について近頃強い問題意識を持っており、先月開催されたWSJマガジンの【2025 イノベーター・アワード】では、深夜番組司会者のスティーヴン・コルベアがプレゼンターを務め、彼女が【ヒット・ミー・ハード・アンド・ソフト・ツアー】を通じて食料不安や気候変動に取り組む団体へ1,150万ドル（約17億円）以上寄付してきたことを紹介していた。

　その場でビリーは、米国の億万長者たちに対し、困っている人々のために資産を活用してはどうか、と呼びかけた。その中には、経済誌フォーブス推定で資産2,280億ドル（約35兆円）のマーク・ザッカーバーグもいた。「お金を持っているなら良いことに使って、必要としている人たちに分けてあげるといいと思います」と彼女は述べ、「皆さんのことは大好きですが、この場には私よりはるかに裕福な人もいます。もしあなたが億万長者なら、なぜ億万長者なのですか？敵意はありませんが、お金は分けましょうよ、皆さん」と語った。

　しかしマスクの神経を逆撫でしたのは、先週ビリーが彼について語った別の発言だった。彼女は複数のインフォグラフィックを投稿し、マスクがその資産で世界にどれほどの善をもたらせるかを示した。たとえば毎年400億ドル（約6兆2,200億円）の投資で2030年までに飢餓を終わらせる、1,400億ドル（約21兆7,700億円）で今後7年間の安全な水の提供を全世界に保証する、あるいは10,443種の深刻な絶滅危惧種を年1億～2億ドル（約154億～310億円）で絶滅危惧レベルまで回復させる、さらに戦争で荒廃したガザ地区と占領下ヨルダン川西岸地区を532億ドル（約8兆2,700億円）で再建するといったものだった。

　ビリーは現地時間2025年11月13日に投稿したインスタグラム・ストーリーズでマスクを名指しし、「クソ情けない、どうしようもないヘタレの卑怯者」と罵倒し、持論をさらに強めた。彼女の発言は、株主投票によってマスクが今後10年間で特定の業績目標を達成すればテスラ株で1兆ドル（約155兆円）を手にする道が開けた直後のことだった。マスクはすでに純資産4,650億ドル（約72兆円）で世界一の富豪となっている。

　マスクは2022年にテスラ株19億ドル（約2,950億円）相当を匿名の慈善団体へ寄付し、2021年には57億ドル（8,850億円）相当を寄付したと報じられている。しかし2024年3月の米ニューヨーク・タイムズは、ビル・ゲイツが莫大な資産をアフリカの医療改善に投じてきたのとは対照的に、マスクの慈善活動は「行き当たりばったりで、主に自己利益に基づき、莫大な節税につながり、彼のビジネスにも利益をもたらしている」と報じた。同紙によると、マスクは2020年以降、株式70億ドル（約1兆880億円）超を税控除対象として財団に提供してきたが、その財団は近年“その税控除に最低限必要な分配”すら満たしていないという。

　さらにNYTによると、その財団はスタッフを雇っておらず、数十億ドルの資金はマスクとボランティア2名で管理されており、そのうち1名は週に6分相当しか慈善活動を行っていなかったことが判明した。同紙の分析では、2021年と2022年（当時入手可能な最新年）の寄付の約半分は、マスク本人、彼の従業員、または彼のビジネスと何らかの関係があったという。

　記事執筆時点で、ビリー・アイリッシュ側はマスクの投稿に関する米ビルボードのコメント要請に応じていない。