2025/11/07 19:00
ラッパーのR-指定と、DJのDJ松永による1MC1DJヒップホップ・ユニット、Creepy Nutsが、初のアジアツアー【Creepy Nuts ASIA TOUR 2025】を開催した。今回はその台北公演DAY2の模様をレポートする。
ソウル・YES24 LIVEHALL 2DAYS、台北・Legacy TERA 2DAYS、香港・Kitty Woo Stadium TungPo、上海・Shanghai VAS est、北京・FULLOF Livehouse-FU。全5都市7公演にわたる今回のアジアツアーは、発表と同時に全会場がソールドアウトし、急きょソウルと台北での追加公演も決定した。それだけでも、アジア各国に広がるCreepy Nutsの人気と、ファンの熱い支持を証明する結果となった。この日の台北公演もその例に漏れない。 Creepy Nutsにとって台湾は、2023年12月の【RUSH BALL in 台湾】、2024年11月の【春浪音樂節(Spring Wave)】、そして2025年3月の【大港開唱 MEGAPORT FESTIVAL】への出演を経て、初のワンマンライブとなった。そのチケットが即完したことは、これまで台湾のファンと築いてきた確かな絆の証といえるだろう。
この日のライブは、2月11日の東京ドーム公演【Creepy Nuts LIVE at TOKYO DOME】や、アルバム『LEGION』を引っ提げての全国ツアーと同じように、「中学22年生」からスタート。そこには、海外公演というプレッシャーや環境の違いよりも、“これまでと変わらないスタンスで音楽を届ける”という確固たる姿勢があった。それは自分たちの楽曲への自信と矜持であり、同時に海外のリスナーへの信頼だと感じられた。〈台湾から次LA/KoreaからNYへ〉というリリックに拍手が上がったことからも、それは多くのリスナーに伝わっていると思わされた。そのまま「Whats' up, 台北!」というコールに歓声も響いた「doppelgänger」、会場全体が一体となってジャンプした「ビリケン」と、楽曲が展開するに連れ、会場の温度はしっかりと高まっていく。
MCでは中国語と日本語、英語を織り交ぜて挨拶をするR-指定。「数は多くないけど、いくつか台湾の言葉を覚えてきました」と、「盛り上がっていこう」「一緒に歌ってくれ」「ジャンプ」といった単語を中国語で呼びかける。そして「台北での初のワンマンツーデイズ、盛り上がっていけますか! 最高の“よふかし”をしていきましょう」という言葉から「よふかしのうた」、中国語で「歌ってくれ!」と呼びかけ、コール&レスポンスに包まれた「堕天」と、ライブは高い一体感に満ちていった。
その後のMCでも「楽しんでますか?」といった言葉を中国語で呼びかけるR-指定。そのサービス精神の高さからは、どんな観客も楽しませたいというCreepy Nutsらしい気質が伝わってくる。同時に「みんなも知ってる日本語があったらバッと言ってくれればいいから」という呼びかけに、「格好いい」「最高」「世界一」という声が上がり、台湾のオーディエンスのCreepy Nutsへの期待感も、その反応から伺えた。
ライブ中盤は、「japanese」で日本と海外文化の衝突と融合を描き、「ちゅだい」では高速ラップに歓声が上がる。続くDJ松永のターンテーブル・ルーティンでは、世界一の技が披露され、ライブはさらに勢いを増していった。
Creepy Nutsは、台湾最大級の音楽配信プラットフォーム「KKBOX」が主催する、2025年度【第20回KKBOX風雲榜(ミュージックアワード)】において、「年度百大風雲歌手(Top 100 Artists of the Year)」に選出。これは、KKBOXでの年間再生回数に基づき、その年もっとも活躍したアーティストに贈られる栄誉ある賞であり、さらに同アワードでは「Bling-Bang-Bang-Born」がKKBOX日本語年間シングル累積チャートで1位を獲得した。そういった背景も作用してか、「Bling-Bang-Bang-Born」では会場は当然のように大合唱とジャンプの渦に包まれ、その光景からも、この楽曲の圧倒的な認知度と人気の高さがうかがえた。
「改めて台北、最高やわ。こんなに一つになれる瞬間、最高でございます。ありがとう。その言葉を俺の方言、カントリーグラマーでいうと……(観客から『おおきに』という言葉が上がり)そう!『おおきに』。台北のみんな、ほんまおおきに」と観客とコミュニケーションを取るR-指定。一方、DJ松永は「俺は全然しゃべれなくて申し訳ない」と話すが、R-指定が「でも、喋れなくても(DJの)この指先で伝わるから」とフォローすると、観客から大きな拍手が起こった。そして「俺達の曲で日本語を覚えた人もいると思うけど、知らない曲、難しい曲だったら『イエー!』と叫んでくれればええから」と呼びかけるR-指定。そのニュアンスはしっかり伝わり、「エマニエル」「Mirage」「眠れ」などの連続披露には、大きな歓声と合唱が起きる。
「またぜひ台北でライブしたいと思ってます。これからも遊びに来てくれる? この最高な盛り上がり、グッドバイブスがもっと高まることについて、ピッタリの日本語を使った曲があるんです。それは『のびしろ』といいます」と語り、「のびしろ」へと繋げる。また、この曲のフックでは歌詞をなぞった大きな合唱が起こり、この楽曲の持つ世界的な普遍性も感じさせられる。そのまま、会場からの大きなクラップが楽曲と重なっていく「二度寝」や、大きく左右に手が振られる「かつて天才だった俺たちへ」と、会場の空気はより一体感を増していく。
「最高やわ。こんなにも音楽で通じあえて、台湾の言葉を教えてもらったり、俺からも日本語を浴びせたりすることで、エナジーの交流ができたんじゃないかなと思います。そして、言葉や文化を超えて、音楽で一つになって、遊べたことが最高に楽しかったです。次に来るときはもっと言葉を覚えてくるわ」と呼びかけるR-指定。そしてライブはラストとなる「通常回」で幕を閉じた。また、終演後もアンコールを待ち望む声に会場が包まれていたことからも、その待望感と熱気、そしてライブに対する興奮度の高さが伝わってきた。
日本語への理解を含め、Creepy Nutsのリリックやバックグラウンドを深く理解しているリスナーが多いことは、観客の反応からも伝わってきた台北公演。同時に、そういった背景や理由を超えて、聴感の良いラップとトラック、それをステージで表現するパフォーマンス力が生み出す楽しさ、ライブならではの一体感を通して、オーディエンスを牽引したCreepy Nuts。その意味では、「意味」と「強度」という両面でオーディエンスを魅了したと言えるだろう。また、「Bling-Bang-Bang-Born」や「オトノケ」といった世界的ヒット曲だけではなく、「はらぺこあおむし」や「ロスタイム」といったアルバム曲でも合唱やレスポンスが起こったことからも、海外リスナーの愛情と熱の高さ、訴求力が感じられた。
この音楽的魅力が、来年4月に出演する世界的フェス【Coachella Valley Music & Arts Festival 2026】など今後の海外公演で、どのようなステージとして花開くのか。そして、その経験が日本で行われるCreepy Nutsのライブにどのようにフィードバックされ、「通常回」になっていくのか。期待は尽きない。
Text:高木“JET”晋一郎
Photo:Hiroya Brian
◎公演情報
【Creepy Nuts ASIA TOUR 2025】
2025年10月26日(日) 台北・Legacy TERA
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