2025/09/15 12:00
世界的ヒットとなった「Bling-Bang-Bang-Born」を収録したアルバム『LEGION』を3月12日にリリースし、それに先駆け、2月11日には東京ドーム公演【Creepy Nuts LIVE at TOKYO DOME】を完売超満員で成功させたCreepy Nuts。ワールドワイドなフェスとして始まった【CENTRAL】でも日本公演最終日のヘッドライナーや、海外開催公演への出演など、その活動を文字通り世界に広げている。その彼らが5月よりスタートさせていた全国ツアー【Creepy Nuts ONE MAN TOUR 'LEGION'】の神奈川・Kアリーナ横浜公演が、8月11日および12日の2日間で行われた。本稿ではそのDAY1の模様をお届けする。
アルバムタイトルであり、ツアータイトルである「LEGION」、そして「Creepy Nuts」という文字がステージ後方のスクリーンに映し出されると、大きな歓声が上がる会場。そして全国ツアーで回る15か所(18公演)の都市名に、彫刻化されたR-指定とDJ松永というビジュアル・シークエンスが流れ、ステージには二人が登場し、その歓声は更に高まっていく。
ライブは、アルバムでもオープニングを飾った「中学22年生」からスタート。シンプルかつタフなビートに会場のクラップが重なり、そこにR-指定のラップが乗ることで、一体感に包まれながらライブが始まった。そして会場のレーザーシステムとサウンドFXが合わさった「doppelgänger」、「横浜踊れるか! 飛び跳ねろ!」というR-指定のコールと、DJ松永のビートの抜き差しによってライブならではの展開を聴かせる「ビリケン」と、会場の高揚感は上がり続ける。一方で、スクリーンの映像はモノクロ、ステージ上の二人にもスポットライトはまだ当たっておらず、ライブの冒頭は、視覚的な情報量をあえて削ぐことで、“音楽的な強度”と“ダンスミュージックとしての強さ”で会場を牽引したと言えるだろう。
R-指定の「Kアリーナ横浜、調子はどうですか! 改めましてCreepy Nutsです」というMCに、改めて大きな拍手を上げる観客。「熱気やバイブスが、最初からガンガンに伝わってきています。ありがとう。横浜っていう土地は、もっともっと上がれるのを知っているし、俺達ももっともっと頂上に連れて行くから、一緒に登っていきましょう。そして、その上がり方は自由です。適度に周りを無視して、自分のやり方で楽しんでください。バラバラなほうが、ほんとに楽しんでんなと分かるから」とガイダンスする。
そして合唱に包まれて始まった「よふかしのうた」、R-指定のコールと会場のシンガロング、そしてDJ松永のスクラッチでさらに熱気が上がる「堕天」、オーディエンスのジャンプによって会場が揺れる「2way nice guy」、「今日は歌うのも跳ねんのも全部“合法”やから出し惜しみすんなよ!」「調教済みの横浜は声上げろ!」とコールでも煽る「合法的トビ方ノススメ」と、メロディアスな楽曲をスピーディに展開する。自由でありつつ、同時に一体となって楽しむ会場の光景は、彼らの音楽を求める"同志"が集ったということを表しているだろう。
「R!」「松永!」と、子どもの声から高い声、野太い声など、様々な声が様々な場所からあがり、「ええ感じの声援、ええ感じのヤジ、ええ感じのバイブスが伝わってきますよ。自由極まりない。最高です」と満足げな表情を浮かべるR-指定。また、これまでは基本的にはR-指定が中央より向かって左側、DJ松永が右側だったステージセットが、R-指定が前方、DJ松永が後方の段上になったことに触れ、「段が上になったから、お客さんのことがよく見えるし、Rの頑張りもよく見える。やっちゃってよ。スピットしちゃってよ」と話すDJ松永に、「……急に上から?(笑)」と返すR-指定。そのままこの日の会場である横浜と、R-指定の地元である大阪、松永の地元である新潟の関係性についてのトーク(本人たちも「普通に話してたら金返せと言われる内容やな」と話していたので割愛)に続き、「そう考えると、日本全体が自分たちの地元、自分たちのホームやと思えるようになりました。俺達の地元の歌を歌わせてもらいます」という言葉に続き、日本のカルチャーを海外からの視点も含めカリカチュアライズした「japanese」へ。そして日本の怪談をラフカディオ・ハーン(小泉八雲)が採録した物語「耳なし芳一」をベースにした「耳無し芳一Style」へと展開。その意味では、海外からの文化をローカライズし、そこで生まれた“日本語でのヒップホップ”を操り、“海外からも注目される日本のヒップホップ”を生み出すという、彼らならではの説得力を持つ曲の展開といえるだろう。また、ライブという"個が集合体になる状況"とも意味合いが繋がる「LEGION」、DJ松永がヘヴィ・ロック的なトラックにスクラッチを乗せる新たなルーティンを構成したターンテーブル・ルーティン、超私的な内容を、語感の強いラップとハイパーなトラックによってリスナーの聴感をねじ伏せるような「ちゅだい」に続き、問答無用の「Bling-Bang-Bang-Born」へ。この一連の流れは“世界と対峙するCreepy Nuts”という意味合いを大きく感じさせた。
「横浜、松永のテクニック、俺のラップ、ガンガンにみんなに刺さってるみたいやな。なぜこの瞬間、今日のライブが成立してるのか。それは俺達だけじゃなく、みんなが飛んで、レスポンスしてくれてるからです。ライブに必要な最後のピースは皆さんです。そして、その役割を500%果たしてくれてるわ」と、観客に感謝の言葉を伝えるR-指定。そして「(そういうリスナーの前だからこそ)ここで取り繕ったメッセージは必要ないな。良いところも、ダメなところも、全部ダダ漏れになって、その思いにみんな自分を重ねてくれるんやろな」というR-指定の言葉を受け、「俺も上京して初めて横浜LOGOSに遊びに行ったとき、サンダル履きだったからドレスコードで追い返されたわ。夜中に。終電も終わってるのに」と、横浜の思い出を話し出すDJ松永。「でも、そこで靴を貸してくれたのがサイプレス上野さん」と、日本語ラップの良い話に落ち着き、「こういう超個人的な話ができるのもワンマンならでは。次もそういう曲です」と、R-指定の過去と現在を繋ぐ「はらぺこあおむし」に繋がっていった。
そのまま、創作者としての苦悩を歌う「エマニエル」、希望と幻像を掴み取ろうとする渇望を感じる「Mirage」、"ままならなさ"を歌う「阿婆擦れ」と、“クリエイションへの向き合い”をテーマにした楽曲を連続で披露。更に、彼がクリエイターへの道を踏み出した瞬間を振り返る「15才」へと展開し、その先に生まれたスターダムと一片のペシミズムを込めて形にする「Get Higher」へ接続。そこで歌われる〈人生さ〉という歌詞と笑顔には、様々な意味を感じさせられた。
「俺の、俺たちの個人的な話に盛り上がってくれてありがとうございます。横浜には仲間も先輩もおりますし、色んなアーティスト、とんでもないミュージシャンを輩出している場所です。その土地にどんなラップをぶつけるのが正解なのか。横浜だけじゃなく、日本や世界のいろんな場所に何を投げかけるべきか、いつも考えています。でも、そこでどうなるかわからん恐怖よりも、やりたいという気持ちが勝って、自分たちの興味が向いた方向にバンバン飛び込んでいるのが、Creepy Nutsです。日本のヒップホップの、どこかの何かを担ってしまっているけど、俺らはカリスマやリーダーではない。でも、飛び込んで、その先の道を見つけてる。その俺らにふさわしいのは、こういう言葉なんじゃないかなと思います」という、現状認識をオーディエンスに伝える言葉から「first penguin」。そのまま「二度寝」「オトノケ」とヒット曲を展開し、新曲「眠れ」へ。
そして自尊心を歌うリリックの合唱と、クラップと左右に振られる手で会場が一体となった「かつて天才だった俺たちへ」は、そのメッセージを松永のスクラッチとトラックが後押しして、希望が会場を包んでいく。その熱をゆっくり冷まし、リスナーの内省に繋がるような「ロスタイム」への展開も印象的だ。
「気持ちええわ、横浜。お客さんも、俺らもやかましい。その純度が充満して、ライブの醍醐味を味わえております。俺らは良くも悪くも、道端を歩いてる兄ちゃん。だから、伝えている言葉や曲も、その時のテンションやフェーズで受け取り方が変わっていくと思います。作った当時と今とで、まるっと意味が変わってる曲もある。俺ら自身、人間として変わりまくってるし、ぶれまくってるし、進化していっている。でも“自分であること”には筋が通ってる。それを表現して、ライブに昇華して、お客さんにぶつける。それが俺らのライブです。そしてこの数時間、みんなが一緒に歌ってくれたこの時間は、替えの効かない、スペシャルな“通常回”になりました。ありがとう」という言葉を残し、ライブのラストは「通常回」へ。どんな日々も特別であり、その積み重ねが日常になり、その日常を大切に愛おしむというメッセージを伝え、この日のライブを閉じた。
Text by 高木"JET"晋一郎
Photo by umihayato、かわどう
Retouched by Hiroya Brian
◎公演情報
【Creepy Nuts ONE MAN TOUR 'LEGION'】
2025年8月11日(月・祝) 神奈川・Kアリーナ横浜
▼セットリスト
1. 中学22年生
2. doppelgänger
3. ビリケン
4. よふかしのうた
5. 堕天
6. 2way nice guy
7. 合法的トビ方ノススメ
8. japanese
9. 耳無し芳一Style
10. LEGION
11. ちゅだい
12. Bling-Bang-Bang-Born
13. はらぺこあおむし
14. エマニエル
15. Mirage
16. 阿婆擦れ
17. 15才
18. Get Higher
19. first penguin
20. 二度寝
21. オトノケ
22. 眠れ
23. かつて天才だった俺たちへ
24. ロスタイム
25. 通常回
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