2025/09/10 19:00
オオスカ(Gt、Vo)とマナミオーガキ(Ba、Vo)によるロックバンド、Nikoんのライブが8月27日に東京・渋谷CLUB QUATTROにて開催された。本ライブは、彼らにとって初のロングツアー【RE:place public tour 2025】のファイナル公演。同ツアーは7月の「九州シリーズ」に始まり、8月の「関西シリーズ」を含む全30公演で、バンドは2つのシリーズを「移住」と銘打ち、それぞれ大阪と福岡に部屋を借りて、そこを拠点に「地域密着型」のライブを行ってきた。この日のライブはゲストアクトにNo Busesが招かれ、かねてより交流の深い2組による親密かつ濃厚な一夜となった。
「あ、今日早く来ると良いものも見れまーす」
Xの公式アカウント「Nikoん[総意]」でそう予告されていたように、オーガキによる鍵盤弾き語りライブが急遽、開演前に行われた。会場のフロア中央にキーボードとマイクが設置され、Nikoんのレパートリーやオーガキのソロ曲、そして宇多田ヒカルの「In My Room」とNikoんの「ghost」をマッシュアップした特別バージョンなど6曲を、彼女がたった一人で披露。「正直、本編よりも緊張してます」と本人が笑いながら明かしていたが、シンプルなピアノのバッキングによりNikoんが持つメロディの力強さ、そしてオーガキの歌声が持つ儚さや美しさがより引き立つ演奏だった。
本編では、まずゲストのNo Busesが登場。サポートドラムとギターを加えた5人編成で、近藤大彗(Vo、Gt)による凄まじい雄叫びを合図に、1番のみ演奏された「Imagine Siblings」からライブをスタートした。タイトなドラムの上でドライブする杉山沙織(Ba)のベース、ときに幾何学的にデザインされ、ときに荒々しくレイヤーされるトリプルギターのオーケストレーションが、巨大な塊となってフロアへ放たれる。彼らのライブを見るのは久しぶりだったが、サウンドのテクスチャーも演奏力も飛躍的に進化しており早くも圧倒される。
各パートのアクセントを微妙にずらし、まるで変拍子のようなアンサンブルを展開する「Slip Fall Sleep」や、音源よりもカオティックな展開を見せた「Uni」、シンプルなフレーズの組み合わせによって、精緻なサウンドスケープを構築していく「Hope Nope Hope」。3人組になった彼らが今年4月にリリースした、およそ3年ぶり4作目のアルバム『NB2』からの楽曲を中心にライブは進む。そして後半は、初期の人気曲「Tic」や「Girl」、ソニック・ユースやピクシーズが内包していた殺伐さを現在進行形のロックサウンドに照射した「Rubbish:)」などを畳みかけ、フロアのボルテージをどんどん上げていく。ラストは再び「Imagine Siblings」を、今度は2番から演奏。円環を閉じるようにライブを締めくくった。
続いて登場したのはもちろんNikoん。この日はサポートドラムの東克幸を加えた3人編成で、まずは「Vision-2」でライブをスタート。ディレイでギターを変調させる音響的なアプローチから、徐々に3人の有機的なアンサンブルへと移行していくと、固唾を飲んで見守っていたオーディエンスも自然と体を揺らし始める。無垢な少年っぽさを残しながら、どこか狂気を孕んだオオスカのハイトーンボイスに思わず聴き惚れていると、続く「bend」ではオーガキが、ソウルフルなメロディをハスキーかつ伸びやかな声で歌い上げる。
「step by step」では、グリッターノイズのようなエフェクトをかけたオオスカのギターが宙を切り裂き、オーガキも負けじとうねるような高速ベースリフを繰り出していく。テンポを伸ばしたり縮めたり、縦横無尽に動き回るドラムの上で、2人が息を合わせてサビを歌ったと思いきや、ナイフのように鋭利なオオスカのギターソロがサウンドスケープをカオティックに掻き乱し、フロアのあちこちから大きな歓声が上がった。
「ghost」はメタリックなギターサウンドとエッジの効いたディストーションベースが絡み合い、〈生きたい訳でもないし/死ぬには金が無いし〉とオオスカが歌う、狂おしいほど切ないメロディに胸を締めつけられる。抑制の効いた、どこかヒップホップのエッセンスも感じさせるリズム隊と、時おり落雷のように振り下ろされるギターが強烈なコントラストを描き出す。
「珍しく友達の曲をやります」とだけオオスカが言って、演奏したのはNo Buses「Tic」のカバー。沸き立つオーディエンスの予想を裏切るかのように、演奏が進むにつれ「Nikoんワールド」の深みへとどんどん突き進んでいく。そのNo Busesの近藤にステージ上から「いる?」と呼びかけ、PAブースの前で待機していた彼と向き合う形で演奏したのは「publib melodies」。近藤がソロ名義「Cwondo」で参加した、うららかでノスタルジックなメロディに人力ドリルンベースが切り込んでくるコラボ曲だ。
再び3人となり、不協スレスレのギターにメロディックなベースラインが絡み合う「Fly,」では、曲名通り、ふわふわと空中を漂うようなメロディラインが多幸感をもたらす。そして、「Nikoんが今年の夏を完成させます」というオーガキの宣言とともに鳴らされたのは「さまpake」。ハスキーなのに、なぜか透き通るようなオーガキのファルセットボイスが「サンデー」と繰り返す、夏の終わりの切なさを思い起こさせるナンバーだ。この曲もポップでキャッチーなメロディと、オオスカが放つ痙攣ギターが無防備にぶつかり合う。異質なものが異質なまま、交わることなく1曲の中で共存しカタルシスを引き起こす。それがNikoんのオリジナリティであり、2人の生き様そのものなのかもしれない。
オーガキのコーラスから始まる「(^。^)// ハイ」でラストスパートをかけ、疾走感あふれる「グバマイ!!」で本編は終了。アンコールでは、普段サポートドラマーとして参加している有島コレスケ(arko lemming)とItsuki Kun(Fallsheeps)の2人をギタリストとして迎え、5人編成で「mouton」と新曲を披露。この日のライブに幕を下ろした。
なお、ライブのMCで今秋から来年にかけて「47都道府県ツアー」を行うことを発表したNikoん。さらに、そのツアーが、9月24日にCDのみでリリースされる2ndアルバム「fragile Report」のアウトストアLIVEであり、CDの購入者はどれか1つの公演に無料で入場できるという。5ヶ月で約100本にもなるという今後のLIVEスケジュールや、デジタル配信を行わず「CDのみ」で音源を販売するスタンスなど、この時代にあって「異例」づくしの活動を続ける2人。彼らの存在が、今後シーンにどのような影響を与えていくのか、これからも目が離せない。
Text by 黒田隆憲
Photo by 雨宮透貴
◎Nikoん 公演情報
【RE:place public tour 2025】
2025年7月1日(火)長崎・STUDIO DO!
2025年7月2日(水)福岡・UTERO
2025年7月4日(金)熊本・SOUND SPACE FACTOR
2025年7月5日(土)熊本・NAVARO
2025年7月6日(日)福岡・public space 四次元
2025年7月8日(火)福岡・ライブハウス秘密
2025年7月9日(水)大分・CLUB SPOT
2025年7月10日(木)鹿児島・MOJO
2025年7月11日(金)鹿児島・SR HALL
2025年7月12日(土)鹿児島・WORD UP STUDIO
2025年7月13日(日)福岡・小倉FUSE
2025年7月15日(火)佐賀・LiveHouse RIDE
2025年7月16日(水)福岡・public space 四次元
2025年7月28日(月)神奈川・横浜B.B.STREET ※自主企画
2025年8月3日(日)奈良・奈良NEVER LAND
2025年8月4日(月)大阪・Music Club JANUS
2025年8月5日(火)大阪・LIVE HOUSE Pangea
2025年8月6日(水)大阪・NICOtt bar
2025年8月7日(木)大阪・火影 -HOKAGE-
2025年8月8日(金)大阪・HARD RAIN
2025年8月10日(日)大阪・FANDANGO
2025年8月12日(火)京都・KYOTO MUSE
2025年8月13日(水)京都・Live House nano ※自主企画
2025年8月14日(木)大阪・Socore Factory
2025年8月15日(金)大阪・LIVE SQUARE 2nd LINE
2025年8月16日(土)大阪・BEARS
2025年8月17日(日)大阪・Yogibo HOLY MOUNTAIN
2025年8月23日(土)東京・新代田FEVER
2025年8月26日(火)東京・新代田FEVER
2025年8月27日(水)東京・渋谷CLUB QUATTRO ※自主企画
【Nikoん × Apes presents『Risorgimento』】
2025年10月30日(木)神奈川・川崎 CLUB CITTA’
OPEN 18:00 / START 19:00
出演:Nikoん、Apes
先行チケット販売(先着順):9/2(火) 12:00 ~ 9/30(火) 23:59
https://eplus.jp/nikonxapes/
◎Nikoん リリース情報
アルバム『fragile Report』
2025/9/24 RELEASE
※前代未聞の初回限定封入特典「47都道府県ツアー招待券」付き
<収録曲>
収録曲:
1. fragile report
2. bend
3. nai-わ
4. 靴
5. dried
6. さまpake
7. とぅ~ばっど
8. グバマイ!!
9. (^。^)// ハイ
◎No Buses リリース情報
アルバム『NB2』
2025/4/23 RELEASE
1. Uni
2. Our Broken Promises
3. Slip, Fall, Sleep
4. Inaho
5. Bloom
6. Hope Nope Hope
7. Eyes+
8. I'm Your…
9. Kaze
10.Them Us You Me
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