ハンス・ジマーが奏でる名曲を“目の前で、全身で感じる” 贅沢な158分を映画館の大スクリーンで

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2025/07/04 18:00

　名作曲家ハンス・ジマーが手がけてきた数々の映画音楽を、映画館で親密に、かつ唯一無二の体験として楽しむことを可能にしたコンサート映画『ハンス・ジマー＆フレンズ：ダイアモンド・イン・ザ・デザート』が、2025年7月11日から一週間限定で全国公開される。

　『ライオン・キング』で【アカデミー賞(R)】を受賞し、『ダークナイト』『インセプション』『グラディエーター』など数々の名作で映画音楽の地平を切り拓いてきた作曲家、ハンス・ジマー。ドバイの砂漠に設えられた特設ステージや、美しい外観が目を引く音楽施設にて行われた彼の大規模なライブパフォーマンスを、臨場感あふれる映像と音響で捉えたのがコンサートフィルム『ハンス・ジマー＆フレンズ：ダイアモンド・イン・ザ・デザート』である。演奏とともに織り込まれるのは、ジマーにライブ活動を勧めたジョニー・マーとファレル・ウィリアムス、そしてジマーとの関わりが深いクリストファー・ノーランやドゥニ・ヴィルヌーヴら映画監督、さらにはティモシー・シャラメ、ゼンデイヤといった俳優たちとの対談。それらがジマーの音楽に宿る「物語の力」を克明に浮かび上がらせていく。

　ジマーは1957年、ドイツ・フランクフルト生まれ。『レインマン』で注目を集めて以降、あらゆるジャンルを横断しながら音楽を進化させてきた。クラシックの構造や、ロックの熱量、電子音楽の実験性、そして民族音楽やジャズのエッセンス──そうした要素を自らのルーツと融合させ、従来の「劇伴音楽」の枠を越えるスコアを数多く生み出してきた。

　本作に収められているのは、総勢30名以上の演奏家らと共に作り上げた壮大なライブパフォーマンスである。ツインドラムを柱にギターやベース、ホーン、ストリングス、キーボードといった楽器がシンメトリックに配置され、次々と登場するソリストやシンガーたちがアンサンブルを彩る。そこに光と映像が重なり、単なるサウンドトラックの再現ではなく「全身で感じる体験」として音楽が生み出されているのだ。

　シンフォニックな作風で知られる巨匠ジョン・ウィリアムズやエンニオ・モリコーネとは違い、ミニマルミュージックからの影響も色濃いジマーの作風は、繰り返されるシンプルなフレーズの中に感情のうねりを生み出す。ライブではその構造が一層際立ち、今年5月に実現した来日公演で味わったあの音楽の波に包まれるような感覚が、映画館という音響空間で鮮やかに甦る。

　特筆すべきは、ジマーとゆかりの深い映画監督たちとの対談だ。とりわけ印象的だったのが、『DUNE／デューン砂の惑星』や『ブレードランナー2049』でタッグを組んだドゥニ・ヴィルヌーヴとのやり取り。かつて「映画音楽は時に過剰で、作品の繊細さを損なう」と懐疑的だったヴィルヌーヴは、ジマーとの信頼関係を構築していくなかで「音楽が物語を語る」ことの力を認識し、今や欠かせぬ存在として彼を迎え入れている。

　また、ジマーにとって特別な存在であるクリストファー・ノーランとの話も興味深い。『バットマン』シリーズではお互いのこだわりがぶつかり合い、まさに魂を削るような制作の日々だったことを振り返る。また『インターステラー』では、音数を絞り込んでいくなかで自ら「最高傑作」と自負するサウンドトラックを作り上げた背景が語られている。

　ライブパートと対談パートが交錯しながら、ハンス・ジマーという希代の作曲家の“現在地” を浮かび上がらせていく本作。まるでステージの目の前にいるかのような臨場感と、創作の舞台裏に入り込むような知的興奮に満ちた158分だ。

Text by 黒田隆憲
(c) RCI Global LLC

◎公開情報
『ハンス・ジマー＆フレンズ：ダイアモンド・イン・ザ・デザート』
2025年7月11日（金）～、TOHOシネマズ日比谷ほか公開
監督：ポール・ダグデール
出演：ハンス・ジマー、ビリー・アイリッシュ、クリストファー・ノーラン、ドゥニ・ヴィルヌーヴ、ティモシー・シャラメ、ゼンデイヤ
日本配給：カルチャヴィル合同会社
https://www.culture-ville.jp/hanszimmer