Billboard JAPAN


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2024/10/30

<ライブレポート>MONO NO AWAREが1年ぶりビルボードライブ公演開催 鍵盤を加えた特別編成で観客を魅了した一夜

 今年6月に通算5枚目のアルバム『ザ・ビュッフェ』をリリースした4人組バンド、MONO NO AWAREが10月22日、【MONO NO AWARE Billboard Live Tour 2024】の東京公演を行った。彼らがビルボードライブに出演するのは、昨年10月の初出演からおよそ1年ぶり。前回は活動休止中だった竹田綾子(Ba. / Cho.)に代わり、サポートベーシストの清水直哉を交えての出演だったが、竹田が復帰した今回はその清水が鍵盤およびパーカッション奏者として参加した特別編成に。アルバムを引っ提げ4人でのワンマンツアー【アラカルトツアー】を8月に終えたばかりの彼らだが、それとは一味違うサウンドスケープを全編にわたって展開した。会場も今回、東京だけでなく大阪も加わり2会場での開催となった。

 筆者が観たのは東京公演の1stステージ。夕方の早い時間だったにもかかわらず、会場には多くの人が集まっている。定刻になり、メンバーの玉置周啓(Vo. / Gt.)、加藤成順(Gt. / Cho.)、竹田、柳澤豊(Dr. / Cho.)、そしてサポートの清水が姿を現すと客席からは大きな拍手と歓声が湧き上がる。

 まずは『ザ・ビュッフェ』の冒頭を飾る「同釜」から今日のライブをスタート。清水の流麗なピアノに合わせ、玉置が静かに歌い始めると、会場はぴんと張り詰めた空気に包まれる。そこに柳澤のマーチングドラムと加藤のアルペジオが加わりアンサンブルが少しずつ熱を帯び始め、フロント3人のハーモニーが響きわたるなか一気にバーストしたサウンドに、オーディエンスの熱気は早くも最初のピークを迎えた。しかし楽曲はそこからサイケデリアの更なる深淵へと進み、念仏のような玉置のラップを挟んで再び耳をつんざくようなノイズギターに導かれ大団円を迎えると、会場は大歓声に包まれた。

 続く「イニョン」は映画『パスト ライブス/再会』のセリフからインスパイアされた楽曲で、ジャズやブラジル・ミュージックの香り漂う美しいコード進行が印象的だ。玉置が伸びやかな歌声で、〈あんたにはまたどっかで会うわ〉と繰り返し歌い、そこに加藤が奏でる中毒性のあるギターリフが絡みつくと、えも言われぬ切なさが込み上げてくる。シンプルでどこか懐かしいピアノのイントロに合わせ、玉置がアコギを爪弾く「88」も疾走感あふれるバンドサウンドと、哀愁ただようメロディ&歌声のコントラストが心のひだを震わせた。

 しんみりと聴き入るのも束の間、竹田が繰り出す印象的なベースラインに導かれて「かむかもしかもにどもかも!」へ。フランツ・フェルディナンド経由のソリッドなポストパンクサウンドの上で、玉置が早口言葉を羅列するライブの人気曲だ。この日は客席とステージの距離が近いビルボードライブ東京ならではの特性を活かし、玉置が最前のテーブルに座る観客一人一人にマイクを向けて早口言葉を促す一幕も。かと思えば「夢の中で」ではオレンジ色の照明の下、曲名通り時空を超え夢の中を彷徨っているような、プログレッシブかつ予測不能なアンサンブルを展開した。さらに「ヒトノキモチニナ~ル」では変拍子を駆使したトリッキーなドラムの上で、加藤と竹田がキング・クリムゾンばりのリフをユニゾンしてみせた。

 「本日は、ビルボードライブ東京にお集まりいただきありがとうございます。MONO NO AWAREでございます」と玉置がここでようやくMC。「今回は、清水がいるおかげでできるアレンジの曲をいっぱいやろうと思って来ました。次は、久々に『育ての親系』の曲を演奏するのですが、これもピアノがないとできない曲です」

 そう言って披露したのは、〈今さらながらアイラブユー、マム〉〈遅ればせながらアイラブユー、ダッド〉〈そんなことはずっと昔から わかりきってはいたけど言うよ〉と歌う「A・I・A・O・U」。「夢の中で」同様、プログレッシブで変態的なアレンジだが、歌詞はもちろん唱歌「おもいでのアルバム」をオマージュしたギターソロなど、その根底にはMONO NO AWAREの一貫したテーマでもあるノスタルジアが深く息づいている。だからこそ、どれだけぶっ飛んでいても決して難解にならないのだろう。

 ライブ中盤は、〈言葉がなかったら 迷わず抱きしめてたろう〉と歌う、玉置の朗々とした歌声が胸をすくその名も「言葉がなかったら」から、軽やかなカッティング・ギターがザ・スミスやサンデイズを彷彿とさせる「忘れる」に繋げ、回るミラーボールの光の下で「LOVE LOVE」を披露。「こうしてみなさんが集まってくださる中、演奏できるのは決して当たり前じゃないと思っています」と照れくさそうに玉置が挨拶した後、ドリーミーなギターフレーズとコード進行がビーチ・ハウスを思わせる「あたりまえ」へ。エンディングでは洪水のようなフィードバック・ギターがフロアを埋め尽くした。

 鳴り止まぬアンコールに応え、まずはメンバー4人で「東京」を演奏。イントロが鳴らされた瞬間、ステージ後方のカーテンが開き、東京の夜景が目の前に広がるとオーディエンスから大きな歓声が上がる。そして再び清水を呼び込み、「楽しかったー! ありがとうございます。最後の曲です、楽しんでください」と玉置が笑顔で挨拶し、「水が湧いた」へ。〈ヤッピー 街はお祭り状態〉という歌詞のとおり、ブラジル・ミュージックと日本のお囃子を融合したような祝祭感覚に満ちたこの曲で、ビルボードライブ東京を「お祭り状態」にしてライブを締めくくった。

 サイケ、ブラジル音楽、ジャズ、ファンク、ポストパンク、民謡、プログレなど、ありとあらゆるスタイルを取り込み再構築された目眩くアンサンブルと、実験的でありながら遊び心に溢れた唯一無二の音楽性に酔いしれた一夜だった。

Text:黒田隆憲
Photo:マスダレンゾ


◎セットリスト
【MONO NO AWARE Billboard Live Tour 2024】
2024年10月22日(火)東京・ビルボードライブ東京 1stステージ
1. 同釜
2. イニョン
3. 88
4. かむかもしかもにどもかも!
5. 夢の中で
6. ヒトノキモチニナ~ル
7. A・I・A・O・U
8. 言葉がなかったら
9. 忘れる
10. LOVE LOVE
11. あたりまえ
En1. 東京
En2. 水が湧いた

◎公演情報
【天下一舞踏会 2025】
2025年1月12日(日)大阪・味園ユニバース
2025年1月24日(金)東京・恵比寿LIQUIDROOM

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