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2024/09/19

<ライブレポート>S.A.R.×新東京、ナノ・ユニバース創立25周年イベントで聴かせたジャンルレスで自由な音楽

 2024年9月10日、ビルボードライブ横浜にて【S.A.R.×新東京 at Billboard Live YOKOHAMA 2024】が開催された。このライブは、ファッション・ブランド「ナノ・ユニバース」の創立25周年を記念して、ビルボードライブと共同でスタートさせた特別イベント。記念すべき第1回目として行われたS.A.R.と新東京の2マン公演から、1stステージの模様をレポートする。

 モダンで清潔感のあるデザインをベースに、人それぞれの個性を拡げる独創的な世界感で支持され続けるナノ・ユニバース。普段のライブよりもお洒落をして足を運びたくなるビルボードライブとのコラボは、双方にとってより多くに人に存在をアピールする機会になるはず。そんなイベントの初回に登場するS.A.R.と新東京は、ジャズ/R&B/ファンク等の共通点を持ちつつも既存のフォーマットにとらわれることのない、多様な音楽表現で注目される新進気鋭のアーティスト。今やサブスクでジャンルも国も世代もボーダレスに様々な音楽を楽しめる時代、想像を越える飛躍的な活躍に期待が持てる2組だ。

 最初に登場したのはS.A.R.。ステージに向かって左手からTaro(Key.)、Imu Sam(Gt. / MC)、Attie(Gt.)、Eno (Ba.)、may_chang(Dr.)がスタンバイして、サングラス姿のsanta(Vo.)が中央に立つ。オープニング曲は「Abstract Blue」。Taroの鍵盤がメロウに演奏の口火を切り、ゆっくりと他の楽器が加わる。文字通り抽象的な音に包まれて、時折顔を覗かせる日本語の歌詞が特徴的だ。揺蕩うように、徐々に力のこもった演奏に合わせて歌声も力が入る。

 「S.A.R.です、よろしくお願いします!」。santaが客席にひと声かけて、緩やかなビートが心地良い「Clouds」、may_changが軽快に刻むハイハットから重たいバスドラが響く「CAP」へとチェンジ。重心の低い演奏にボーカルのハイトーンが映える。Imu Samが歪んだギターで咆哮すると突如演奏はラウドに変貌して、やがて静けさを取り戻す。

 「お越しいただきありがとうございます、S.A.R.です! 今回、ナノ・ユニバース25周年企画ということで呼んでいただきました。僕たちが今着ているのはナノ・ユニバースさんからご提供いただいた衣装です。」(Imu Sam)

 そして、ナノ・ユニバースとS.A.R.、新東京それぞれのコラボアイテムが10月25日にZOZO TOWNにて発売されることも発表された。また、ファッションスナップとインタビューが掲載される特設ウェブサイトもそれぞれ公開されるとのこと。(新東京は10月4日~、S.A.R.は10月25日~)。

 続く「payrent」ではsanta、Imu Samの掛け合いで俄然熱量が上がる。ラップ、ダンサブルなリズムセクション、ファンキーなギターのカッティングとクールなキーボードで構築されたサウンドは、ジワジワと体を疼かせる。特に、ベースの太い音が曲の真ん中に芯を通している印象だ。ラップが全面にフィーチャーされた「Kawasaki」、ソウルフルな歌唱による「Uptown」と、淡々とした演奏が白熱していくときのバンドメンバーの一体感と爆発力、周囲を巻き込んでいく大きなビートのうねり、構築していくグルーヴ感は特筆ものだった。

 「ありがとうございました! 最後の曲です」とsantaが告げて披露されたのは、「Strawberry fields」。終始、熱くも洒落たムードを醸し出したライブだったが、最後はギターのチョーキングも生々しく泥臭さすら感じさせる熱演で、新東京にバトンを渡した。

 新東京の4人、杉田春音(Vo.)、田中利幸(Key.)、大蔵倫太郎(Ba.)、保田優真(Dr.)がステージに上がると、グリーンのライトが暗闇を照らす中、深淵なディレイサウンドが広がり「Heavy Fog (Organic)」からスタート。ベースの弾き出すビート、ピアノの艶やかな音色、重たいドラム。杉田の歌とともに演奏が加速しては立ち止まり、心象風景を描いていく。大蔵がスラップから思いっきり歪ませた音で前に出てソロを聴かせる。というか、全ての楽器が独立した演奏をしながら曲を構築しているように思えるので、ソロという概念すらないのかもしれない。1曲目にしてそんな集合体の奏でる音に早くも惹きつけられた。

 「新東京です! 今日はナノ・ユニバースの創立25周年、お越しいただきありがとうございます。そして、ナノ・ユニバース25周年おめでとうございます。ここにいるみなさんも、ほとんどの人がナノ・ユニバースで買い物したことがあると思います。そんな身近なブランドと一緒にできてとても光栄に思います。今日はよろしくお願いします!」(杉田)

 フリージャズに歌をつけたようにフリーキーな演奏に合わせて歌う「Perrier」から、〈さんざめく空の下 二人ダンスを踊る〉と歌う「踊」を経て「さんざめく」へ。切なさを感じさせる旋律をエモーショナルに歌い上げる杉田。バックの演奏は先ほどとはまた違う印象で、より歌を引き立てることに徹している印象だ。

 「こういうライブ・レストランでやるのは2回目で、テンションがわからない部分があるんですけど……どうですか? 良い感じですか?」と杉田が呼び掛けると拍手喝采。大蔵がMCを引き継ぎ、グッズの紹介からコラボアイテムを発売することを告知。「Tシャツの方が我々のアー写でスウェットの方は謎のデザインですけど、ただの謎じゃ終わらないぞという感じ」(大蔵)「これからの僕らの作品に関わっている部分なので、もしよかったらチェックしてください」(杉田)。また、ナノ・ユニバースから提供された衣装について、セットアップを着た杉田は「めちゃくちゃカッコよくないですか俺? ヤバいですよね。私服でもじゃんじゃん着ようと思います」とかなりお気に入りの様子だった。そして、保田が今年11月22日Zepp Shinjukuでワンマンライブを開催することを告知して、ライブ再開。

 力強いビートに乗せた「The Few」から、シームレスに繋がっていき「ユートピアン」へ。軽やかに歌いながら、曲中でジャケットを脱ぐ杉田。大蔵はステージ前に滑り込むように座り最前列のお客さんの目の前でプレイして盛り上げた。

 「ビルボードライブ、実は初めて足を踏み入れたんですけど、こんなに素敵な場所で、素敵なブランドと素敵な日を創れたこと、とても嬉しいです。みなさんに感謝です。引き続き新東京、末長くよろしくお願いします!」(杉田)

 嵐を思わせる轟音が鳴り響き曲に突入すると、ストレートな8ビートに乗せてしばし楽器陣がセッション的な演奏を見せる。杉田が歌い出したのは「Cynical City」。ドラム、ベース、キーボードが自由に飛び交うようにダンサブルに演奏する中で歌う杉田のボーカルは、タイム感が突出しているのではないだろうか。メンバー紹介では、保田は豪快にラウドに、大蔵はスラップを織り交ぜたフレーズで、田中はリズミカルにファンキーな演奏を披露した。ラストはタイトな演奏で伸びやかな歌声を聴かせた「36℃」で終演となった。

 新進気鋭の2組によるライブはイベント初回に相応しく新たなカルチャーの息吹を感じさせるもので、最高のスタートを切ったといえる。なお、本イベントは、kiki vivi lilyとtonunを迎えて11月12日にビルボードライブ横浜で開催されることが決定している。

Text:岡本貴之
Photo:後藤壮太郎


◎公演情報
【S.A.R.×新東京 at Billboard Live YOKOHAMA 2024】
2024年9月10日(火)神奈川・ビルボードライブ横浜

〈セットリスト〉
S.A.R.
1. Abstract Blue
2. Clouds
3. CAP
4. payrent
5. Desolate
6. Kawasaki
7. 3AMBLACKCAT
8. Uptown
9. Strawberry fields

新東京
1. Heavy Fog (Organic)
2. Perrier
3. 踊
4. さんざめく
5. The Few
6. ユートピアン
7. 刹那 (Organic)
8. Gerbera
9. Cynical City
10. 36℃

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