2024/08/30
2024年8月21日と8月22日にMUCCが目黒鹿鳴館で2デイズ・ライブを開催した。1日目は逹瑯(Vo)のバースディ・ライブも兼ねた【逹瑯爆誕祭】、2日目はMUCCが目黒鹿鳴館への熱い想いを込めた【目黒爆音祭】となった。
ライブハウスに通うロック・ファンならご存知だと思う。会場となった目黒鹿鳴館は、1980年のオープン以来、様々なバンドやアーティストが伝説のステージを繰り広げてきた聖地であることを。80~90年代に掛けて、多くのヘヴィ・メタル・バンドが目黒鹿鳴館でワンマンすることを目標に己を磨き続けた。結果、その目標を果たし、メジャー・デビューしたバンドも数多い。そして90年代に入ってからは、ヴィジュアル系バンドたちが火花を散らすようなライブで、多くのオーディエンスを熱狂させてきた。MUCCも1999年4月に初めて目黒鹿鳴館のステージに立って以降、事あるごとに鹿鳴館に出演。とくにバンド初期のツアーでは欠かせないライブ会場のひとつにもなっていた。メンバーにとって、初期からのMUCCファンにとって、たくさんの思い出が詰まったライブハウスだ。
そんな目黒鹿鳴館が、ビルの老朽化による伴う退去で、この場所での営業を続けられなくなってしまった。ビルの解体スケジュールがまだ確定していないことで、退去までの期間が延長され、2024年12月まで営業できることにはなっている。しかし、この地で40年以上続いてきた熱い歴史がもうじき一区切りを迎えることになる。その前に、自分たちを育ててくれた目黒鹿鳴館に感謝すべく、MUCCは2デイズ・ライブの開催を決めた。各日、入場者は300人限定の激レア・ライブでもある。1日目の【逹瑯爆誕祭】の模様をレポートしよう。
SEに合わせて赤いライトが生命力を持ったようにトーンを強弱させていったのは、18時35分のこと。ステージに燦然と輝くネオン管の“鹿鳴館”というサインに一礼するように、ステージに現われたYUKKE(Ba)とミヤ(Gt)とサポートのAllen(Dr)。最後に大歓声を浴びながら登場したのは逹瑯。直後、ミヤの浮遊感あるフレーズと共に「星に願いを」からライブはスタートした。
骸骨マイクを握りしめ、メロディで酔わせたかと思えば、次の瞬間には咆哮し、とてつもない熱も炸裂させる逹瑯。圧巻のスキルで重厚なバンド・サウンドを容赦なく浴びせかけるミヤ、YUKKE、Allen。その声と音を全身で浴びて表情をいきいきとさせていく300人の夢烏たち。曲に合わせて前後や左右にうねる夢烏たちの波も激しい。開始早々、濃厚なライブが繰り広げられていく。「今日は誰を祝いに来たんだ!」ミヤの叫び声と共に突入した「零色」ではコール&レスポンスも巻き起こし、中盤では久々に懐かしいの消防車テルミンまで持ち出してYUKKEやミヤと絡む逹瑯。さらに「夏はまだ終わりじゃねーぞ!」とミヤの煽りで「謡声」に続くと、クラウドサーフやダイブする夢烏たちも。ライブハウスならではの抑えの利かないテンションと灼熱のような高い熱量、そしてクシャクシャの笑顔と歓喜の叫び声や歌声。全てが入り混じりながら突き進むライブだ。
「鹿鳴館は何年ぶりでございましょうか? たくさんぶりです。祝われに来たのか、あなたたちを楽しませるために来たのか、ちょっと分かりませんが。お互い、同じぐらい楽しんで帰れたらいいなと思ってますんで。俺たちと遊んでください、よろしく」
逹瑯の言葉に続いて「G.G.」が続くと、今度は巨大な水鉄砲を持ち出して撃ちまくったり、それでは飽き足らず今度はシャボン玉連射銃で夢烏やメンバーにシャボン玉を浴びせる逹瑯。かと思えば、歌いながら背中から夢烏たちの上に寝そべるように軽いステージダイブも。ミヤも立膝になって、客席に突っ込んでいく勢いでリフやギター・ソロを決めまくる。YUKKEもフロントにベタ付き状態だ。まるで無法者たちが占拠するステージのような様相に、夢烏たちも自分を思いっきり解放して楽しむのみ。でかい声で逹瑯と共に歌い、MUCCのサウンドで乱舞し、夢烏同士で楽しさを分かち合い、心を無敵状態にしていった。
セットリストは、【MUCC TOUR 2024「Love Together」】を軸にしながら、随所にレアな曲を挟みこむスペシャルな構成。そんな中で「俺の誕生日にこの曲をやりたいなと思って入れました」と逹瑯が、今日のセットリストに入れた1曲が「スーパーヒーロー」だった。
逹瑯が作詞、作曲したナンバーで、他界した父親に向けて書いたもの。永遠の別れをただ悲しむのではなく、生前の父親の楽しい一面を歌にして、ポップな曲調の中に優しさも感謝もめいっぱいに詰め込んだ曲だ。今、逹瑯は父親や、自分たちを育ててくれた目黒鹿鳴館への気持ちも込めて、歌声を響かせていく。そしてこみ上げる想いは、曲の後半、言葉になって逹瑯の口から飛び出る。「俺だ! 今日、この日、俺は生まれました! 俺も、いつか君たちのスーパーヒーローになれるように頑張るんで、そのときまでよろしくお願いします!!」感動的な場面だが、しかし、今日のMUCCはそれを噛みしめる隙すら与えてくれない。「誰に会いに来たんだ! 誰に会いたかったんだ!!」と逹瑯は言葉を畳みかけ、疾走する「娼婦」へと展開。激しいバンド・サウンドや煽りを食らわせ続けるMUCCに、夢烏たちはクラウドサーフで狂い咲く。本編ラスト「Living Dead」では強靭な生命力とエモーショナルさ、説得力あるバンド・サウンドを轟かせた。
止まることのないアンコールに呼ばれてまず現われたのは、バースディ・ボーイの逹瑯。「俺の誕生日だと思って集まって来てくれていると思うんですけど、例年は誕生日が今日なんです。でも今年は、昨日だったかもしれない。いろんな人からLINEが来るじゃない? それが昨日、“誕生日、おめでとう”ってLINEが来てしまった。俺は“ありがとうございます”って返した。…だってHYDEさんからLINEが来たから。ええっと…HYDEさん、今日で~す!」
そんなハプニングもぶっちゃけつつ、メンバーと目黒鹿鳴館の思い出話も。昔は椅子席でグッチャグチャなライブになったこと、初ワンマンのときにステージから観た客席の扉が閉まらなかった光景、ワンマンで入り待ちのお客さんがいなくてズッコケたことなど。さらに鹿鳴館といえばツーバスというイメージがあって、今日のためにAllenにツーバスのセットを組んでもらったこと。鹿鳴館が移転して開店するときには、こけら落としでMUCCが「爆音祭」の2デイズを開催することを、店長とすでに約束したという話も。
しかし誕生日らしい仕掛けやお祝い事などなく、夢烏たちからは不満の声もあがりつつ、アンコール曲へ突入した。とはいえ曲が始まれば、そんな不満はどこへやら、この最高の瞬間をMUCCととことん味わうように激ノリ。「名も無き夢」ではコール&レスポンスはもちろん、ダイバーも続出。それでも「目黒、テメーらの全部、俺によこせ!」と熱を注ぎ続ける逹瑯。興奮と高揚は頂点までブチ上がっていく。そのままラストへと続くと思ったとき、YUKKEが「よっしゃー! サプライズ始めるぞ!!」と叫んだ。
照明が明るくなって全員で歌うハッピー・バースディと、ケーキを持って登場するのは様々な時代の逹瑯の衣装を着た怪しげな人々。逹瑯っぽいメイクのせいで誰が誰だか分かりづらいが、ガラ(メリー)、団長(NoGoD)、咲(甘い暴力)、未羅(ex.孔雀座)、命依(MAMA.)、ANNIE A(CHAQLA.)である。そんな逹瑯の分身も加わって、ラストに決めるのはもちろん「蘭鋳」だ。中盤のブレイクで逹瑯はこう感謝の言葉を投げつける。「今日は私のお誕生日会に来てくれてありがとうございます。みなさんの素晴らしい笑顔が、最高のプレゼントになりました。今年1年、頑張っていこうと思います。私の生まれた日にこの言葉をみなさんに捧げたいと思います。愛をこめて、全員…死刑!!」激しい音と飛び交うシャウトと、常軌を逸するヘドバンの嵐。
こうして逹瑯の45回目の誕生日は、目黒鹿鳴館の歴史に新たな伝説として加わりながら、熱狂の一夜になっていった。
Text:長谷川幸信
Photos:冨田味我
◎公演情報
【逹瑯爆誕祭】
2024年8月21日(水)東京・目黒鹿鳴館
セットリスト
1. 星に願いを
2. 零色
3. 謡声
4. サイレン
5. 愛の唄
6. G.G.
7. 狂乱狂唱~21st Century Baby~
8. モノポリー
9. Violet
10. XYZ.
11. ニルヴァーナ
12. 睡蓮
13. ENDER ENDER
14. スーパーヒーロー
15. 娼婦
16. Living Dead
En1. 家路
En2. 名も無き夢
En3. 蘭鋳
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