2024/08/03
悲願の年末パシフィコ横浜単独公演ソールドアウトに燃えるいぎなり東北産。彼女たちが、その前哨戦と位置づけたホール公演【東京ワンマンライブ ~年末への前哨戦~】を、2024年7月26日にかつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホールにて行ない、その公式レポートが到着した。
学生は夏休みとはいえ、世間的には平日の金曜日にも関わらず、2部制で行なわれたこの日の公演は、両部ともにチケットは完売。先日行なった彼女たち初の日比谷野音フリーライブでの大盛況っぷりとともに、今のいぎなり東北産の勢い、注目度、そして動員力をしっかりと見せつけたライブとなった。
開演時間を少し過ぎ、暗転した会場に、いぎなり東北産のライブイベントではおなじみの出囃子が鳴り響く。ステージを覆っていた緞帳が少しずつ上がり、カラフルな光が暗転した客席側へと溢れ出してくる。そして、幕が上がってステージセットが少しずつ明らかになっていく瞬間、観客誰もがこれから始まるライブを想像してわくわくを覚えたことだろう。スイカやアイスクリーム、メロンソーダなど夏っぽくもあり、パステルカラーで女の子っぽくもあるモチーフが散りばめられているものの、目の前にあるそれは、間違いなくお祭りで設置される櫓(やぐら)。しかも中央には、これまたカラフルな太鼓が鎮座して、いぎなり提灯が櫓の周りを彩っている。これはまさしくにっぽんの夏、いぎなりの夏。月初に彼女たちは山形県にあるリナワールドでグループ結成9周年の水ぶっかけ祭りを行なったが、月末のこちらは葛飾区パシフィコ公演前夏祭りだ(まあ、パシフィコ公演“前”と言うには、同公演の開催は12月なので前すぎるのだけど)。
(太鼓を叩く)バチを手に、櫓の上でポーズをとるいぎなり東北産の9人。花火をイメージし、スカートにメンバーカラーの反対色を差し色として入れているのがポイントだという新衣装に身を包んだ彼女たちが、円陣を組むようにひとりずつ自分の名前を叫ぶ。そして、早くも興奮と歓喜が混ざり合う観客の声に応えるように、1曲目「東京アレルギー」は櫓の上からスタートさせた。しかしながら、葛飾区といえば東京の下町。そんな場所で行なった公演で最初に披露したのが、東京には絶対負けるわけにはいかないという決意を高らかに歌い上げるこの曲。いぎなり東北産、よく考えるとなんともロックである。
コンセプトが夏祭りということで、「おのぼりガール」「テキーナ」と、いぎなり東北産の中でもハッピーに盛り上がる曲が序盤に並べられる。とりわけ、お祭り騒ぎな空気を作り出したのは「テキーナ」。この曲では、橘花怜を始めとしてみんなが注目しているポイントは、吉瀬真珠の「大好き!」の台詞。彼女が毎回アドリブを追加して放つ「大好き!」の一言には、ステージ上だろうが客席だろうが関係なく悶絶する人が続出する。しかし今回、「あのね、あなたのことが……大好き! だから今日は……会いに行っちゃいまーす!」という吉瀬の言葉を合図に、メンバーはステージを降りて客席へとなだれ込む。メンバーは縦に長いシューボックス型ホールの一番後ろまで、歓喜する客席の間をすり抜けると、何人かはそのまま後方扉の向こう側へと姿を消す。
次の曲として、撮影可能曲にも指定されている「服を着て、恋したい」が始まった途端、律月ひかるら1階後方の扉の向こう側に消えたメンバーたちは、なんと2階客席の扉から姿を現す。そして彼女たちは、客席の通路をくまなく回りながら、手書きのメッセージが入ったカラーボールと幸せを観客に手渡していく。ホールで撮影可能曲を披露する場合、ステージ上でのパフォーマンスだと、(特にスマホのカメラでは)どうしてもメンバーを小さく写すことしかできない。ならば、メンバーのほうから近くに行き、この公演をそれぞれのカメラを使って思い出とともに記録してもらおう。そんな彼女たちの配慮は、特に1階で何か起こっているのか把握できなかった2階席の観客にとって、実に嬉しいサプライズになったはずだ。
客席降臨を終えて、メンバーは「いぎなり魔曲」で急いでステージへと駆け込んでくる。客席も一体となってコール&レスポンスがホールを揺らす「ハイテンションサマー!」では、ソフトクリームを手にして歌い踊る彼女たちの後ろに降ろされた幕が、夏の日差しの中を吹き抜ける風もしくは寄せては返す波をかたどっていく。一方、ピンクを基調としたパステルなライトに染められながら披露した「わざとあざとエキスパート」では、観客をステージに視線釘付けにしつつ、ほとんどの人たちがステージ上の彼女たちと一緒に振りコピ。もしかしたら「わざとあざとエキスパート」は、いぎなり夏祭りにおける盆踊りなのかもしれない……なんてどうでもいいことを思わずにはいられない。
中盤に用意された最初のMCで、安杜羽加が「今日(仕事を)サボった人! 平日の真っ昼間にこちらの“推し事”を選んでいただきありがとうございます。来たことを絶対後悔させません!」と、男前な発言で会場を沸かせると、橘花怜の「人生は一度きりで、大好きなみんなの笑顔をあと何回見れるかわからないので……今日は、明日も明後日もみんなが思い出して、笑顔になれるように“絶対アイドル”で頑張ります!」という人生の真理にも触れる発言で客席をざわつかせる。一方、桜ひなのの「お祭りとかけまして、リボンと解きます。その心は、どちらも“ぼん”がつくでしょう……盆踊り!」という、唐突な謎かけには、別の意味で客席はざわつく。そして伊達花彩の「みなさん骨になるくらい盛り上がれますか? 一緒に骨になりましょう! 燃え尽きるっていう意味でね。」という挨拶には、言葉の意味はあまりよくわからないものの、結局、彼女の勢いに押されて歓声を上げてしまう。まあいずれにせよ、いぎなり東北産メンバーそれぞれの個性は、楽曲披露とは違った形でも会場を沸かせていた。
夏は楽しさやパワフルさ、輝きといったイメージがある半面、切なさや寂しさといった顔も持ち合わせている。そこで、いぎなり東北産の夏祭りでは、そんな、夏のもうひとつの顔も表現してみせる。口火を切ったのは、事前アナウンスされていた「TOHOKUちゃんぷるー」の初パフォーマンスだ。
夕日のようなオレンジの照明に照らされて浮かび上がる彼女たちが、三線の音色に声を重ねる。4月にリリースされた3rd アルバム『東北産万博』収録曲の中で、唯一ライブで披露されたことがなかったこの曲。タイトルはもちろん、メロディーやアレンジ、そしてメンバーの振りにも沖縄テイストが存分に盛り込まれ、沖縄の陽気さを表現しつつ、同時に宴が終わった後の少しの切なさも感じさせる。そして何より、客席との「イーヤーサーサー(ハーイーヤー)」のコール&レスポンスはライブの一体感を生み出していた。
夏の終わりの記憶を思い起こさせるような風鈴の音色を挟んで「おぼろ花火」が続く。イントロが流れ出した途端、ステージには夜の帳が下りたように星球が輝き出す。花火をイメージした衣装を纏い、満天の星空を仰ぎ見て、たおやかに曲の世界観を表現するいぎなり東北産。これまでのかわいさや元気さとは違った魅せ方に、オーディエンスは手元のペンライトをかすかに振りながらも、ステージから視線を外せなくなってしまう。そして昨年のパシフィコ横浜公演以来の披露となる「旅の途中」へ。あれから半年が過ぎ、いぎなり東北産の物語にも、またいくつか新しいページが書き加えられたものの、それでもやっぱりまだ旅の途中。幾千もの星に包まれて、メンバーは、これまでの出来事を思い出すように手を伸ばし、これからに向けた想いを力強く歌い描く。「今 ここで声を聞かせて」。彼女たちからのそんな声の響きに、観客は万雷の拍手と声援で応えたのだった。
後半戦は、「Burnin’ Heart」から始まるメドレーで会場を燃え上がらせると、アイドルスマイルでキラキラに輝くいぎなり東北産を届けた「結び」。「天下一品 ~みちのく革命~」で、興奮でテンション振り切れた観客からの地響きのようなコールを引き出せば、「沼れ!マイラバー」でかわいさもしっかりアピールする。そんな楽曲を次々に乱れ撃つことで、彼女たちは最後まで観客を圧倒し続ける。
そして1部の夏祭りは「伊達サンバ」で大団円を迎えた。お祭りうちわを手にしてステージを縦横無尽に動き回るメンバーのもとには神輿も担ぎ込まれ、そのまま再度みんなで客席を練り歩く。本来、祭りとは祈りの儀式。いぎなり東北産のもとに集まった観客ひとりひとりの笑顔と年末のリベンジライブ成功への祈りは、彼女たちが今抱えている、もしくはこれから抱えることになるであろう数々の不安を軽減させ、今後の自信につながるものとなるに違いない。最後、紙吹雪が舞い散るステージで櫓に登り、目を輝かせながら満員の客席を眺める9人の姿に、そんな確信を得ることができた前哨戦ライブだった。
さて、年末への前哨戦と銘打った公演ということで、ライブ後半に差し掛かるところで、メンバーは、リベンジとなるパシフィコ横浜公演にむけての想いをマイクに乗せた。「動員だけに囚われるんじゃなくて、醒めない夢を一緒に見れるようなライブにしたい。」と語ったのは律月ひかる。葉月結菜は、リベンジという言葉にあった違和感について「(失敗というネガティブな意味というよりも)ちゃんと100%成功達成していく。ごまかさないでやっていく。それが私たちいぎなり東北産のやり方」だと整理できたと話す。吉瀬真珠は「『負けたことがある』ということがいつか大きな財産になる」という『SLAM DUNK』の名言を引き合いに出し、「友情、努力、勝利」での団結を呼びかけると、リベンジは自分の目標である「みんなずっと一緒にいる。おばあちゃんになるまで一緒。」のため、そのための大事な場所を守る戦いだと決意を述べた桜ひなの(そして、1部の公演中のMCなのに「1回目より絶対2回目の方が東北産は上手くいく」と口を滑らせて、メンバー全員を慌てさせる)。最年少の伊達花彩は、感情が溢れ出てしまうのが抑えきれず、駆け寄ってきたメンバーたちに守られるように囲まれ、そして声を震わせながら「(リベンジだと)パシフィコは同じ会場だけど、ライブは同じものじゃないから……“来ない”っていう考えはやめてください。以上ですぅ!」と素直な気持ちをぶつける。
いずれも大人たちに用意された借りてきた言葉ではなく、それぞれがちゃんと自分たちの言葉で想いを届けようとするから、時に笑いが起きつつも、それでも言葉は確かな温度を携えて観客へと伝わる。そして、あらためて年末のパシフィコ横浜公演ソールドアウトに向けての気持ちをみんなでひとつにさせたのだった。
「正解がないこの世の中なので、今、いろんなことを、すごいみんなで手探りで掴んで触ってみて……みたいな感じで進んできたんですけれども、結果、フリーライブもたくさんの方が来てくださったり、今日もみなさん来てくださって満員になったりして、少しずつ着実に、ちゃんと前に進めているのかなと思っています。私は最近、いぎなり東北産は 9人が最強だ、ということを知ってるんですよ。でも同時に、いぎなり東北産は永遠ではないことも、ちゃんとわかってるんです。だから、私たちが大好きだって、1番最強だって思えるこのいぎなり東北産の姿をみんなにもっとたくさん見てほしいし、これからも最強の私たちが作る伝説をみんなと一緒に追いかけていきたくて。……もう結構、自分的には、どんな未来がこの先待っていても後悔なんてひとつもないって言い切れるんです。だけど、やっぱり“みんなとだから”見たい景色があるし、“みんなとだから”行ける場所がある。なのでこれからも、パシフィコ横浜も武道館も、そしてその先も、もっともっとみんなとたくさんいろんな景色を見て、 感動を分かち合って、一緒に幸せになっていけるように頑張っていきたいなと思っています。そしてですね、なんと年末のパシフィコ横浜のチケットの販売が……おおーっ! なんと本日からファンクラブ先行で開始します! なので、今日ここに来てくれてるみんなと一緒にパシフィコに行けたらすごく心強いなって思うんですけど、皆さん来てくれますか? これからもほんとに、みんなと1秒でも長くいれるように頑張っていきますし、 そしてみんなの自慢の推しになれるように、これからも全力で頑張っていきます。みんなと夢の続きをいっぱい追いかけていけたらいいなと思います。リベンジということで、もう攻める以外の選択肢はなしです! 今日の前哨戦ライブも最後まで攻めて攻めて楽しんでいきましょう!」── 橘花怜(いぎなり東北産・リーダー)
なお、2部のMCにて不退転の覚悟を口にしたリーダー・橘花怜からも発表があった通り、年末12月29日にパシフィコ横浜国立大ホールで開催が予定されている【いぎなり東北産 リベンジライブ】のチケットがファンクラブ先行にて販売開始となっている。
Text&Photos:Yosuke TSUJI
◎公演情報
【東京ワンマンライブ ~年末への前哨戦~】
2024年7月26日(金)東京・かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール
第1部 セットリスト:
出囃子
東京アレルギー
おのぼりガール
テキーナ
服を着て、恋したい
いぎなり魔曲
ハイテンションサマー!
わざとあざとエキスパート
狂くるどっかーん
TOHOKUちゃんぷるー
おぼろ花火
旅の途中
メドレー(Burnin’ Heart、いただきランチャー、HANA、Fly Out)
結び
天下一品 ~みちのく革命~
沼れ!マイラバー
伊達サンバ
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