2024/07/10
いぎなり東北産のグループ結成9周年イベント【TOHOKU 9】が、7月6日、山形県にある東北最大級の遊園地・リナワールドにて開催され、公式レポートが到着した。
野外ステージにて水を使ってみんなでびしょ濡れになるのがお約束となっている彼女たちの周年イベント。今年は、毎年恒例のカオスな光景が広がったことに加えて、7月20日に日比谷野外大音楽堂にてフリーイベントを開催することが決定したことをサプライズで発表。また本イベントから派生して、いぎなり東北産「服を着て、恋したい」がTikTokでの再生回数急増により、 TikTokクリエイティブセンターが発表している直近7日間のトレンド曲ランキングでTOP20位以内にランクイン(7月8日の時点で220万再生を突破して19位)。彼女たちのTikTokバズり曲「わざとあざとエキスパート」「沼れ!マイラバー」に続く新たなうねりが、今まさに起きようとしている。
そんな彼女たちの2024年の9周年イベントの模様をレポートで振り返ってみたい。
いぎなり東北産がリナワールドで周年イベントを開催するのは、2023年に続いて2回目。前回の【末広がり8周年祭】は、メンバー、スタッフ、観客、参加者全員が例外なくびしょ濡れになって楽しんだこともあり、「2023年、面白かったいぎなり東北産のイベントランキング」があったら間違いなく最上位にランクインするであろうほどに、ファンにもメンバーにも印象深いものとなっていた。
そして2024年。いぎなり東北産9周年も再びリナワールドで。“9周年も、そこから先も、この最高な東北産の9人で。”という想いが込められた【TOHOKU 9】には、あの夏の興奮と歓喜と喧騒、ハチャメチャとメチャクチャとぐちゃぐちゃへの期待に胸を膨らませた皆産(いぎなり東北産ファンの呼称)が、大きめのポリ袋を手に集結していた(大きめのポリ袋は、自身の荷物が濡れないよう保護する用途として持ち込みが推奨されていた)。
客席も上段のほうまでしっかりと埋まり、いよいよ開演の時。「メンバー入場時は動画撮影OK」というスペシャルな事前アナウンスもあって、観客は動線となっている上手側階段のほうに一斉にスマホを向ける。入場曲「服を着て、恋したい」が会場に流れると、山形県産(山形出身)の藤谷美海を先頭にメンバーが登場する。そして「みんなのところに行っちゃうよー!」という藤谷の一言を合図に、メンバーはステージ前の通路はもちろん、客席間の通路を駆け上がったり、客席後方の通路を移動したりと会場に散らばり、集まってくれたすべてのファンに手を振り、向けられたスマホのカメラを覗き込んだりしながらファンの声に応えていた。そして、客席の間を縦横無尽に移動していたメンバーたちがステージに集結すると、「どっち?こっち?どうすっぺ!」からライブはスタート。いぎなり東北産の歌声と観客のクラップやコールで、9周年イベントも、やっぱり最初からお祭り騒ぎだ。
「9周年おめでとう!」
「みんなのことだけでなくメンバーのこともびしょ濡れにしたい。」
「(放水で)溺れないように気をつけてください。」
「日本で一番熱い山形にしていきましょう。」
メンバーひとりずつ挨拶を行なった最初のMC。今日が初めてのいぎなり東北産現場だという観客を見つけると、葉月結菜は「(周年イベントは)1年に1回やるとんでもないイベントなんですけど、今日を乗り越えたらどんなイベントもいける!」と、謎にそのファンを激励する。一方、2年連続で地元での周年イベント開催となった藤谷美海は、「リナワールドは昔から家族で来ていたところだから、なんでみんないるの? って思う。リナワールド自体も楽しんでもらえたら。」と語っていた。
撮影可能曲としてアナウンスのあった「服を着て、恋したい」では、ステージでパフォーマンス中のメンバーの可愛さをひとつも逃すまいと、彼女たちのかけがえない瞬間を狙って望遠レンズを装着したカメラやスマホが客席からステージへと向けられる。ちなみに現在、いぎなり東北産は同曲の動画投稿につながる施策を積極的に展開中。この日も、「#服恋」「#服を着て恋したい」のふたつのハッシュタグと、「服を着て、恋したい(サビver.)」として公開されている曲を使った動画をみんな一斉にTikTokに投稿するよう呼びかけていた(その結果が、本稿冒頭に紹介した TikTokクリエイティブセンター発表の直近7日間のトレンド曲ランキングTOP20位ランクインにもつながっている)。
「さあお前ら、びしょ濡れになる準備はできてますか?」
可愛い空気感をガラッと変える安杜羽加の煽りが入ると、待ってましたとばかりに客席は歓声に沸く。そして始まった“真夏のアゲアゲバッコーン!!”こと「ウィンターのアゲアゲバッコーン!」では、サビに差し掛かったところで、伊達花彩がステージ前に設置された今回初登場の何とも禍々しい物体……ガトリング砲タイプの放水銃の元へと走り、そして銃座につく。次の瞬間、太陽の光でギラつくその銃口は唸りを上げながら回転を始めて放水開始。圧倒的な水量と水圧で、観客をびしょびしょに濡らしていく。その後も桜ひなのと安杜羽加がそれぞれ銃座について放水銃を可動域の限界まで動かし、広範囲を少しの隙間もないくらいに丁寧かつ念入りに放水。オーディエンスを立ったままで溺れさせていった。
そんなカオスが始まってしまったからには、観客側のテンションもここで最初の限界突破。続く「いただきランチャー」「大勝利宣言」では、オケの音が聞こえなくなるくらいの声援がリナワールド全体を包み込む。会場がすり鉢型の構造ゆえに、まるで滝壺に流れ落ちる水流のようにステージへと注ぎ込まれた観客からの声は、当日夜に行なわれた個人配信にて、橘花怜も「(「いただきランチャー」での)歓声がすごく大きく聞こえた。」と感慨深く振り返るほどだった。
ライブ中盤には、野外イベントだからこその、ライブハウスやホールでは行なえない企画が並ぶ。水が入った箱に沈んでいる中身を当てる「水の中身はなんじゃろな」コーナーでは、さくらんぼやぶどうのフェイクフルーツからウィッグやブラシ、ぬいぐるみといった、水の中に沈んでいてはいけないものや「水の中身じゃなくてもよくない?」と言われてしまうものまで用意。メンバーはひとりずつ目を閉じて手を水面に差し入れる。ただでさえ視覚を奪われて恐る恐るな状況にも関わらず、橘花怜のチャレンジ中に、正解を導くために水に入れた手を横からつまむ悪戯をする桜ひなのがいたり、安杜羽加のチャレンジ中に耳に息を吹きかけようとする桜ひなのがいたりで、時としてステージ上はちょっとしたパニックになっていた。
一方、前年の流しそうめんに代わって行なわれたのが「流しさくらんぼ」コーナー。曲に合わせてスーパーボールすくいのようなプールの中を回っているさくらんぼやミニトマトを食べるという、ステージ上でのお食事企画だ。今回は、藤谷美海と律月ひかるがさくらんぼの被り物をかぶり、曲のサビごとに目を閉じて口を尖らせてゆるく左右にリズムをとるという、無駄に中毒性ある動きで可愛さ(?)を振りまいていた。なお、本コーナーは写真に限り撮影OKだったので、「#いぎなり東北産」のハッシュタグから参加したファンの投稿を見ることができるだろう。
また、9人がソロ歌唱をメドレーで披露するコーナーも周年イベントでの楽しみのひとつ。今回は“2023年の生誕イベントで披露した曲”という縛りを設けて、普段のライブでは聞くことができないカバー曲が次々に披露された。その中でもこちらの想像を超えてきたのが、メドレーのトップバッターを務めた橘花怜。「私は歌わないんですけど、歌える方がいたら、一緒に歌ってほしいです。」と、ステージ下手に陣取ると、橘以外のメンバーは上手側に一列に並ぶ。彼女の生誕イベントに参加したファンは、この陣形からすべてを悟ると、橘がすっと右手を上げた瞬間、ステージ上のメンバーと同じように、自分の足を半歩横に開く。そして披露されたのは、合唱曲「COSMOS」。ステージ上のソプラノパートが、客席側からのソプラノ、テノール、アルトの各パートの歌声と山形の自然の中でハーモニーを生み出す。自身の生誕イベントで観客も巻き込んで合唱曲「COSMOS」を演ったアイドルも橘花怜くらいかもしれないが、周年イベントで観客を巻き込んで合唱をするグループも、いぎなり東北産くらいなものだろう。しかも今回は生誕イベント時とは異なり、観客への事前告知や練習の案内など一切なしのアドリブで、である。
そのほか水鉄砲片手にステージを駆け回る伊達花彩や、9人組ガールズグループの可愛さをひとりK-POPで再現した北美梨寧。ステージ前通路を闊歩しながらセクシーなパフォーマンスでも沸かせる安杜羽加に、消毒に用いるような噴霧器を担いで客席後方から水を浴びせる藤谷美海。律月ひかるは大好きな世界観を表現しながら水鉄砲を発射。自身の乙女心を最大化させて指差しで客席にレスを送る吉瀬真珠に、「超絶かわいい!ひなもん!」コールが発生した桜ひなの。メドレーのトリを務めた葉月結菜は、会場一体となってのコールに応えるように放水銃のトリガーを引く。さらにステージに用意されていた5本の散水ホースでの放水も加わり、客席はここでも大量の水に襲われるのだった。
ミウオくんがユナちゃんのために馬を購入(?)し、一緒に乗馬する物語から始まるなど、本人たちの手によって9周年バージョンに歌詞のアップデートがなされたミュージカル曲「トーホク・ラブ・ストーリー~恋はいつも突然に~」からのイベント後半。ギャル杜も含めた3人の熱演に、最前で観ていたほかのメンバーからもスタンディングオベーションが送られる。
一方、「Being」と「負けないうた」では、歌声とステージングで魅せるいぎなり東北産もしっかりと印象付けていく。今年も彼女たちの夏が始まった。去年がそうだったように、今年の夏もまた、楽しいことだけでなく、大変なことやピンチな状況にも陥るかもしれない。しかし、そんな夏をがむしゃらに駆け抜ける彼女たちは、未来へと続くどんな景色を見せてくれるのか。そして我々は、そんな彼女たちの夏を彩るピースのひとつにはなれるのだろうか。2024年の夏の記憶を一体どのくらい彼女たちと共有できるのか。彼女たちが「青春」と呼ぶ、そのかけがえのない瞬間をひとつでも多く共有できたなら。少しでも素敵な時間になるための欠片のひとつにでもなれたなら。ステージで「負けないうた」を歌い継ぐメンバー9人の姿に、ふと、そんな想いを重ねた人もいたかもしれない。
ここで、リーダーの橘花怜がグループを代表して、あらためていぎなり東北産が9周年を迎えることができた感謝を口にする。
「9周年。本当に迎えられると思ってなかったというか。この周年イベントも何回目かな。3、4……5回目かな。こうやって毎回みんなと周年を迎えるたびに、ここまでこれたのは、みんなのおかげだなって思うんです。普通に生きていて9年続いていることって、自分たちの意地とか根性とかだけでは叶わない、できないって思っていて。やっぱり、出会ってくれたみなさんがいてくれたからこそ、みんなでこうやって進んでいくことができたし。だからこれからも、みなさんに素敵な景色をみせていけるように頑張りたいと思いました。みなさん本当にありがとうございます。今年もツアーをやったり、各地を巡ったり、“可愛い皮を被ったり”していたんですけど、みなさんも私たちが黙って何かを見つけようとしている姿をそばで支えてくれているじゃないですか。“なんだよそんなの!”とか言わないで、そばにいてくれて。そんなみんなに支えられて活動できているので、たくさんの感謝の気持ちを伝えたいです。本当にありがとうございます。……頑張ろうね、私たち。10周年もみんなでお祝いしたいね。」
その言葉に呼応するようにメンバーひとりひとりが頷く。そして、葉月結菜が、「10周年は、あれなんだよ。タイムカプセル。イービーンズの4階かな? タイムカプセルを埋めていて。その中に自分に宛てた手紙を入れていて……。」と、封印されたタイムカプセルを開ける年でもあることを告げる。すかさず藤谷美海が「交換しようよ。」と、タイムカプセルに入れた自分宛ての手紙交換を提案するも、「黒歴史交換は嫌。」と、さすがにそれは即却下。一方、最年少の伊達花彩が「(いぎなり東北産10周年だと)みんな二十歳だしね。」と発言すると、もうすぐメンバー全員でお酒で乾杯できる時が来るという事実にメンバーはうきうき。「昔はみんなが20歳になるのが想像できなさすぎて。そのくらいあまりに遠い未来すぎて、“みんなで乾杯する時に、私はいるのかな。”って思ったりもしたけど、それもあと半年後。」と、間違いなくメンバーの中で一番お酒が好きな葉月も目を細めていた。
イベントもいよいよ終盤。ここまで来ると、あとはステージ裏に用意されたタンクの水を枯らすのみ。「みんな、まだまだ足りないよね! ずぶ濡れになるぞ!」と、橘が絶叫し、タオル曲「飛ぶぞ!」でいよいよラストブロックへと突入する。吉瀬真珠のソロパートで無数のシャボン玉がメルヘンチックな演出を描き出す一方で、客席に咲いたタオル回しの花には水やりの如く容赦ない放水が浴びせられ、観客は“濡れた服や身体をタオルで拭く”という退路が絶たれる。そしてここから「わざとあざとエキスパート」を挟みつつも、最後のカオスにふさわしい、客席参加型の盛り上がり曲「青春修学旅行」に「ハイテンションサマー!」が続いて、客席側はこの日何度目かの限界突破。ホースも放水銃もフル稼働となり、さらにステージに設置されたプールの水を浴びせるべく、たらいやバケツ、水をかけられるものは総動員しての、歓声と放水のコール&レスポンス。これぞいぎなり東北産という圧倒的な盛り上がりとパワーを見せつけ、メンバーもオーディエンスも全身全霊で楽しみ、全力で水をかけ、全身で水を受け止めての9周年イベントとなった。
さて、今年もBGMに合わせて、拳をツンと伸ばして強く強く突き出すようなポーズと大合唱で幕を閉じるかに思えた、いぎなり東北産の周年イベント。しかし、最後の最後に、チーフマネージャー“キャプテンEO”氏から、観客にも、そしてメンバーにもサプライズなアナウンスが行なわれた。
突然、7月実施のフリーイベント【毎月都内近郊フリー巡業】の場所が確保できたことをマイクを通して会場に伝え始めるキャプテン。「なんでこのタイミングで?」と思った人も多くいたようで、会場からは苦笑も起こる。もしかしたらメンバーも同じことを思ったかもしれない。しかし、キャプテンがその会場名を告げた瞬間、誰もが自分の耳を疑った。
「急遽、取れたんですよ。……会場は、日比谷野外大音楽堂です!」
一拍置いて、“日比谷野外大音楽堂”というワードと、東京・霞が関のビルに囲まれたあの伝統の野外ステージが結びついたオーディエンスから、驚きと歓喜が混ざった地鳴りのようなどよめきが発生する。一方で、想定外の会場名の響きに理解が追いついていないのか、目を丸くしてフリーズしていたのがいぎなり東北産のメンバーたち。しかし、あの日比谷野音でのイベントだとわかった途端、9人はステージ中央に駆け寄り、輪になって喜びを爆発させた。
もっとも、今回はフリーイベントとしての開催なので、ライブのような演出やセットなどは一切なし。そんなキャプテンからの追加アナウンスには不満を表したりズッコケたりしていたメンバーだったが、とはいえ「いつか立ちたい」と憧れていた会場での単独イベント。9人は嬉しそうな表情を見せていた。
そして最後はみんなびしょ濡れになりながら、全員で子供用プールに仲良く入水。ひとりずつメンバーやいぎなり東北産への愛を語って9周年イベントを締めくくった。
「るんちゃんはできればどんな気持ちも言葉にしてきたんですけど、言葉にできない気持ちをたくさんくれたのがいぎなり東北産のみんなで。すごいなんか、あの……本当は人前ではずっと可愛くいたいって思うし、こんなぐちゃぐちゃになるって信じられなかったけど、そんなのどうでもよくなって楽しいのが東北産だし、そう思えるのも東北産だから。東北産だからこんなぐちゃぐちゃでも楽しくて。本当に出会ってくれてありがとう!」── 律月ひかる
「ずっと続けているといろんなことがあるんですけど、何かあった時にメンバーが話をきいてくれたり、誰一人として置いていこうとしないでくれるメンバーたちなんですよ。だからこそみんなでここまでやってこれたし、それを期待してくれるみんなと皆産がいてくれたから9周年を迎えられました。これからも、10周年もみんなで迎えたいし、メンバーの夢、みんなの夢をどんどん叶えられるように私たちも精一杯頑張っていきます。今日もいつも幸せをたくさんくれてありがとう!これからもよろしくね!」── 橘花怜
イベント中にサプライズで開催が発表されたフリーイベント【毎月都内近郊フリー巡業】七月場所は、7月20日に日比谷公園大音楽堂にて開催。また、年末のパシフィコ横浜公演に向けての前哨戦として位置づけられている【東京ワンマンライブ ~年末への前哨戦~】は、7月26日にかつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホールにて行なわれる。
Text & Photos:Yosuke TSUJI
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