2024/07/03
清水美依紗が、8枚目のデジタルシングルとなる新曲「Wave」を2024年7月2日に発売する。すでにライブでも披露している同曲は、TVアニメ『僕の妻は感情がない』のエンディング・テーマに起用され、初のアニメタイアップ曲として話題になっている。高校時代からテレビ出演やSNSで注目を集め、2022年のメジャーデビュー以降も圧倒的な歌唱力で高い評価を得ている清水にとって、自ら作詞作曲に携わった「Wave」とはどんな思いを込めた楽曲なのだろうか。制作過程やタイで撮影されたミュージック・ビデオ、音楽活動に対する想いを訊いた。
――6月15日に開催されたイベント【第16回味の素スタジアム感謝デー】でライブパフォーマンスを拝見しました。スタジアムのフィールドから見事な歌声を届けていましたが、いかがでしたか?
清水:観ていただいたんですか!?ありがとうございます。スタジアムで30分~40分ぐらい歌わせていただくという機会はあまりないのですごく嬉しかったですし、とにかく暑かったですよね(笑)。もう、「お客さまは大丈夫かな?」って心配するぐらい暑くて、自分もすごく汗をかいてましたけど、めちゃくちゃ楽しかったです。
――いろんなお客さんの目に触れる機会だったと思うのですが、メジャーデビューしてからこれまで、そういうお客さんの反響や身の回りの変化をどう感じていらっしゃいますか。
清水:私はSNSをきっかけにデビューしているので、お客さんの前で歌う機会が圧倒的に少なかったんです。最初はテレビの収録で歌わせていただくことの方が多くて、ここ数年で人前でパフォーマンスすることが増えてきたんですけど、今も毎回緊張はしますね。イベントに出させてもらったりソロツアーをやったり、ミュージカルに出たりしたのもこの1年ぐらいなんですけど、SNSやディズニーの曲で知ってくださった方、ミュージカルからファンになってくれる方がいたりとか、幅広い年齢層の方が私のことを応援してくれている印象があります。
――新曲の「Wave」はTVアニメ『僕の妻は感情がない』のエンディングテーマとなっていますが、アニメの内容を受けて書き下ろした曲なんでしょうか。
清水:もともとエンディングテーマが決まる前からできていた楽曲で、初のソロライブ(2023年11月)で未発表曲として歌わせていただいたんですけど、この曲がアニメのコンセプトにすごくマッチしているということで、エンディング曲に決まったんです。それから原作漫画も読ませていただいて、内容を踏まえてちょっと書き直したりとかもしました。
――最初はどんなテーマで書いた曲だったんですか。
清水:3rdデジタルシングル「Home」の歌詞を作ったのと同時期に「Wave」という曲が生まれたんです。「Home」の歌詞は、父が亡くなったことをきっかけに書いた歌詞で、「現実を受け止めたくない」という葛藤や、自分自身の感情と向き合わなきゃいけないっていう部分を描いた、父に向けた曲だったんです。それに対して、「Wave」は感情の起伏を波に見立てて描いた曲で、自分自身がすごく出ている楽曲なんじゃないかなと思います。
――「Home」と「Wave」は連作のような関係?
清水:そうですね、連作に近いと思います。
――アニメの内容は、人間とロボットの夫婦が暮らす日々を描いた、特殊な設定ですよね。そこはどう捉えて曲に反映しているのでしょう。
清水:感情っていう部分では、フォーカスが似ていると思ったんです。ロボットのミーナの過去のことや、ロボットなんだけれどもどこか感情が動いて見える部分に、ちょっと自分と似た部分を感じて書きました。血の繋がりだけが家族じゃないっていう意味も込めて作った「Home」から連作のように「Wave」ができて、『僕の妻は感情がない』の題材も家族やホッコリした温かさみたいなものなので、そういう部分でアニメと楽曲が合ったんだなって思います。
――<ぬくもりだけが暖かさじゃないと 瞳の奥で教えてくれたんだ>という歌詞は、まさにそこが表れていますね。
清水:そうですね。これは本当に降りてきた歌詞で、本当にスッと自分の頭の中に出てきた歌詞をそのまま使ったんです。<ぬくもりだけが暖かさじゃない>っていうのは、本当にアニメとイメージが繋がってますね。
――曲と歌詞はどちらが先に出来たんですか。
清水:一緒に出来た部分もあれば、先に歌詞ができた部分もあります。私のメジャーデビュー曲や他の曲も書いてくださっているMitsu.Jさんは、結構自分のパーソナルな部分もわかってくださっていて信頼関係があるので、今回「Wave」を1から対面でセッションしながら作っていきました。音数のことだったりとか、メロディを歌って「このメロディに合う楽器は何だろう?」って探りながら音を増やしていく作り方だったので、本当に丁寧に繊細な楽曲ができたんじゃないかなと思います。歌詞もChicaさんと一緒に、自分の伝えたいことをうまく整理してどう歌詞にはめたらいいかを考えながら一つずつ作りました。アレンジに関しても、今回は「こういう楽器を使いたい」とか、「音数を増やさなくてもいい」とか、「コーラスはこうしたい」とか、細かい部分も初めて自分が入って作っていきました。
――清水さんはバラードからダンスチューンまで、様々なタイプの曲を歌っていますが、「Wave」はどんなことを考えて歌いましたか。
清水:すごくわかりやすくシンプルに歌う、ということを考えました。自分の感情のエゴをなくして、セリフのように淡々と歌詞を説明するように歌うことで、聴く側がいろんな解釈ができるように歌うことを大事にしました。
――それは、「Home」を歌うときとは逆なんじゃないですか。
清水:真逆ですね。全然違っていると思います。
――人前で歌うようになってから、ボーカリストとしての表現で変化したことってありますか。
清水:あんまりお喋りをするのが得意ではないっていうか、こういうお仕事をしていなかったら、多分自分のことを話す機会はなかったと思うんですよね(笑)。自分がうまく人に伝えられない部分を、自己表現の手段が「歌う」っていうことなんです。
――自分もイベントで歌声を聴いて感動しましたし、聴いた人からの反響ってあるじゃないですか?清水さんにとっては思いがけない反応もあったりするんですか。
清水:それはたくさんありました。本当に音楽が好きで歌っていることって全部お客さんに伝わるんだなって思いましたし、「こういうコンセプト、こういう思いで歌詞を作っている」っていうことを知ってもらうことで、オーディエンスの方の感じ方が変わるんだなって。こういう取材で話すことで新たに気づいて歌い方が変わったりとか、全部繋がってますね。
――「Wave」を作るときにも、Mitsu.Jさんと話したことで自分の中にはない発想が出てきたりとか?
清水:そうですね。そもそも「こういう曲を作りたい」っていう説明をするのすら本当に苦手だったので(笑)。感覚的には作りたいものがわかっているんですけど、自分の思い描いているイメージのまま受け取ってくれるのかっていう部分で、うまく言葉で説明できないんです。でも、一番最初にMitsu.Jさんにデビュー曲「High Five」を作ってもらったときに、私が楽しそうに歌っている姿を見ながら曲を書いてくださったみたいなんですよ。それを聞いて圧倒的な安心感があったというか、どんなパーソナルなことでもきっとMitsu.Jさんが私のことを感じ取ってくれるんだろうなっていう部分もあったので、今回は一生懸命説明しながら、「Wave」を完成させることができました。
――「Wave」のミュージック・ビデオは、初めての海外ロケだったそうですね。
清水:タイのプーケットで撮影しました。海外でミュージック・ビデオを撮るのが夢だったので嬉しかったです。「Wave」のコンセプトもアコースティックなちょっと開放感がある感じだったりとか、波を連想させる部分の風景とかを想像したときに、タイのプーケットが一番合うんじゃないかなってチームで話し合って決まりました。
――実際にタイに行ってみていかがでしたか。
清水:暑かったです(笑)。めちゃくちゃ暑くて、しかも【Cherishツアー】の東京公演2Daysが終わった翌々日ぐらいにタイに飛んで、4~5日間くらい過ごして撮影して、戻ってきたらすぐ【Cherishツアー】の大阪公演があるっていう短いスパンの撮影でした。
――そんな怒涛のスケジュールだったんですか!?
清水:そうなんですよ。ツアー中だったので、バカンスみたいに羽を伸ばせはしなかったんですけど(笑)。とにかく風景が綺麗で、夕日のシーンだったりとか、「何で悩んでるんだろう?」って悩みが吹っ飛ぶような感じでした。誰も自分のことを知らない海外で作品を作って、すごく良い経験をさせていただきました。
――海のシーンが出てきますが、静かな波が「Wave」のイメージと重なりますね。
清水:そうですね。それと、音数が少ないシンプルな楽曲に対して、すごく開放的なあの風景と歌っている私がちょっと笑ったりもしつつあまり変わらない表情で歌っているっていう、対照的な部分はより一層「Wave」っていう楽曲の意味を表している感じがして、タイのプーケットで撮影できて良かったなと思いました。
――美味しいものも食べました?
清水:食べました!パイナップルチャーハンがめちゃくちゃ美味しかったです。あと私はブロッコリーが好きなんですけど、ブロッコリーの炒めものも美味しかったですね。ちょっとにんにく風味もあってすごく美味しくて、それを一生食べてました(笑)。そういうのも含めて、すごく良い刺激になりましたね。行ったことがない場所、感じたことのない空気感、匂いとかってすごく五感で感じるものがあって。そういう感じたもの全てを割とメモにするようにしていました。あと、時差ボケもあったと思うんですけど、夜あんまり眠れなかったんですけど、曲って眠れない日に生まれやすいんです(笑)。眠れなくてぐるぐる考えてるときに、自分が何にぐるぐるしてるのかなってメモに残したり。
――そういうときは録音しておいたりもするんですか?
清水:録音もしますね。それこそこのあいだ、別のお仕事の帰りにふとメロディが降りてきて、電車を降りて録音したりとか。高校生のときは授業中に歌詞を書いたりとかメロディが降りてきたと思ったときは、自分で五線譜を書いて音符を書いたりしていました。授業中に曲を書いてるのはよくないんですけど(笑)。
――いやいや、仕事になっているんだから全然良いと思います(笑)。ミュージック・ビデオの冒頭からポータブルカセットプレーヤーとヘッドフォンで音楽を聴いてますよね。カセットで音楽を聴いたことってありましたか。
清水:おばあちゃんやお母さんが持っていて見たことはあるんですけど、使ったことはないですね。あのアイディアはポンッと降りてきたもので、カセットプレーヤーも初めて手にしたんです。楽曲を作ったときのイメージではラジオをつけるっていうイメージだったんですけど、カセットプレーヤーを使うというのは、自分が想像していた解釈とミュージック・ビデオのチームの人たちの新しい解釈が混ざった感じがしてすごく面白かったですね。
――ミュージック・ビデオの撮影を挟んでの5月の初ソロツアーはやってみていかがでしたか。
清水:自分の楽曲は全部キーが高くて、セットリストにして1公演繋げて全部歌うってなったときに、ものすごく体力を消耗してしまうんですよね(笑)。そこの体力的なキツさみたいなものともすごく戦えたというか、乗り越えられた感じはありました。ボイストレーナーさんにもたくさんお世話になりましたし、メンテナンスって本当に大事なんだなって。行き当たりばったりで全力で歌うというよりは、力をセーブしながら歌うっていう技術みたいなのも得られた気がしましたし、この3日間を乗り越えられた自分を本当に褒めてやりたいなって思いました。
――秋のソロツアーも発表されました。
清水:【Cherishツアー】を経て、自分に足りないものや「もっとこうした方がお客さんに楽しんでもらえるな」とか、そういう部分を振り返った上で、MCも上手になりたいなって思っています。私は三重県鈴鹿市の出身で、自分がすごく喋りやすくて言葉が出やすいこともあってなるべく三重弁でMCをするようにしているんですけど、喋ることに対しての恥ずかしさみたいなのは、まだ抜けてなくて。その恥ずかしさによって、楽曲のことをうまく伝えられなかったりするので、「ここの歌詞に注目してほしい」みたいな部分をもっとうまく伝えられるようになれたらなって。歌だけじゃなくて、MCでの全体の雰囲気作りを次のライブでは新しくしたい気持ちもあります。もちろん歌に関してもレベルアップした新しいライブを更新していきたいなって思っています。
――ツアーの前には、7月21日に鈴鹿市文化会館リニューアルオープンでスペシャルコンサートを行うそうですね。
清水:最近、応援アンバサダーに就任したので、その表彰式も兼ねたイベントなんです。地元でライブをするのはデビューしてからは初めてなので、生まれ育った鈴鹿市で歌えるのはすごく大きなことですし、きっと地元の人たちもたくさん観てくれると思うので、すごく楽しみにしています。
――清水さんが歌手活動やミュージカルの舞台に立つことで元気づけられているファンの方も多いと思います。音楽を通して伝えたいことや、信念ってありますか。
清水:私自身が楽曲に元気づけられています。私はもう全然、みんなが思っているより元気じゃないっていうか、すごくネガティブなんですよ。でもそこを受け入れているからこそ、歌を歌えて自分を見せられていると思っているんです。そういう弱い自分とか感情の部分も「Wave」と繋がりますけど、“自分自身を受け入れる”っていう勇気づけは常に歌いながら持っています。弱さを見せられる強さが自分が持っている信念ですし、それを聴いた人たちが温かい気持ちになったり、「頑張ろう」って思ってくれたら嬉しいですね。
Interview & Text:岡本貴之
◎リリース情報
シングル「Wave」
2024/7/2 DIGITAL RELEASE
◎公演情報
ソロツアー
2024年9月24日(火)大阪・なんばHatch
2024年10月3日(木)東京・ヒューリックホール東京
チケット:全席指定 7,700円(税込)
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