2024/01/22
2023年はアイビーカラーにとって激動の1年となった。2月に初のホールワンマンライブを開催し、4月に佐竹惇(Vo./Gt.)のソロプロジェクトとして新体制で始動。6月には新体制第1弾デジタルシングル「だけどさ、」をリリースし、精力的なリリースとライブ活動を続けてきた。12月に全国4か所を回った【アイビーカラー -ONE MAN TOUR- Chapter2】のファイナル公演では、旧体制の頃に制作した楽曲も新体制で制作した楽曲も、もれなく現在のモードでポジティブに発信する彼の姿を見ることができた。
キーボーディストを擁する4人編成のサポートバンドと共に登場した佐竹は、まず「春を忘れても」をはじめ春を彷彿とさせる軽やかであたたかいサウンドスケープの楽曲を立て続けに届ける。元来アイビーカラーには“季節”と“恋”を掛け合わせた楽曲が多いが、生演奏がその物語の情景を鮮やかに映す。佐竹が楽曲に合わせてアコースティックギターとエレキギターを持ち替えるところにも、より物語の解像度の高いサウンドを追求する姿勢が見えた。
「OCEAN」は海風が暑さとともに首筋を通り抜けていくような爽やな音色が、瞬時に観客を夏の海へと連れ出した。その後も「214」では頬をつんと刺す2月の朝の冷たい空気、「魔法をかけて」では学校の教室でひとり心の中で一喜一憂する様子を軽快かつ衝動的に表現する。観客も楽曲の物語に没入したり、自分の恋の思い出と重ね合わせたり、グルーヴィーな生演奏を全身で堪能するなど、各々の楽しみ方をしていた。
センチメンタルな感情を疾走感のある演奏で煌びやかに彩る「アカツキ」、変拍子とマイナー調のコードがロマンチックな焦燥感を生み出した「L」とドラマチックに畳みかけた後は、ハンドマイクスタイルにチェンジして新体制以降にリリースされた楽曲「tumbler」を披露する。こうして新体制以降の楽曲と旧体制時代の楽曲を同じ並びで聴くと、その違いだけでなく共通点も見えてきた。佐竹はいつの時代も、メロディと歌だけでも成立するグッドミュージックを作り続けているのだ。バンドと比較すると多種多様な表現が可能なソロという形態は、ソングライターとしての可能性をより広げるきっかけになったと推測する。「懐かしかったあの頃を思い出しながら聴いてください」と告げ披露した「オーケストラ」は、感傷的かつ情熱的な歌声が心の奥まで響いてくる。前半のクライマックスとも言うべき一幕だった。
和気あいあいとしたMCの後は「orion」や「冬のあとがき」など、冬の恋物語を描いたバラードを中心に披露する。佐竹も曲の世界にじっくりと入り込んで歌い上げ、そのリアリティはドラマでも映画でもなく、ひとりの青年の恋愛や生活を間近で見届けているような感覚に陥る。その後のMCによると佐竹はバラードを大いに好んでいるとのこと。4曲連続でそれを披露できたことに喜びを噛み締めていたことも、会場を巻き込んだ一因となっていたのだろう。
心地よいリズムのなか振り付けとクラップで一体感を作り出した「AM2:00」、のびのびとしたサウンドスケープで魅了した「ハッピーエンド」、ポップかつエモーショナルな「愛が鳴る方へ」と会場を幸福感に包み込むと、2024年4月にアルバムをリリースすることと、5月11日に東京I’M A SHOWで二度目のホールワンマンを開催することを発表する。さらに「今までを知ってくれているお客さんに“アイビーカラーは(新体制になっても)変わらない”と言うのは我儘やと思うし、アイビーカラーを新しく塗り替えるのも違うと思う。アイビーカラーはずっと僕が背負っていきたい名前なので、2024年はまた一からやらせてください」と続け、あらためて今後の活動への覚悟をあらわにした。
「東京、消えた月」にアイビーカラーとして活動し続けるという強い信念を込め、ソロアーティストとしての要素とバンドの要素を取り込んだ最新デジタルシングル「bath towel」へとつなぐと、本編ラストは代表曲のひとつである「夏の終わり」。アンコールでは「だけどさ、」と「夏空」の2曲を披露し、新しい季節に駆けだすような晴れ晴れとしたムードのなか、ワンマンツアーを締めくくった。
彼はこの日、新旧織り交ぜたセットリストをなめらかに届け、どの時代の楽曲も同じ熱量でパフォーマンスした。彼のマインドがすべての楽曲としなやかにシンクロしている様子からも、彼がアイビーカラーとして発信してきた楽曲を堂々と背負っていること、そして歴史のすべてが彼にとって大切で、掛け替えのない愛しさに溢れていることが伝わってきた。2024年のさらなる飛躍を約束する、夜明けのような一夜。新体制初のアルバムとホールワンマンへの期待が高まるツアーファイナルだった。
Text by 沖さやこ
Photo by 酒田吉博
◎公演情報
【アイビーカラー -ONE MAN TOUR- Chapter2】
2023年12月22日(金)
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