2023/12/04
ClariSが11月24日と25日、東京・Zepp DiverCity(TOKYO)にて【ClariS AUTUMN LIVE 2023 ~Arcanum~】を開催した。
今年は『ALIVE』(完全生産限定盤)にはじまり、『淋しい熱帯魚』『コイセカイ』『ふぉりら』と、合計4枚の作品をリリースし、堅実に歩みを進めてきたClariS。10月にデビュー13周年を迎えた上で臨む今回のライブは、5月に東京・Zepp Hanedaにて開催した【ClariS SPRING LIVE 2023 ~Neo Sparkle~】から地続きに感じられる部分も。2日間で全3公演にわたって楽しませてくれたステージより、本稿では24日・初回公演の模様について振り返りたい。
すでに肌寒くなってきた東京だが、この日の最高気温は24.2℃。文句のつけようがない秋晴れの空も、夕暮れ時が終わった頃にフロアへと入場すると、ステージに見えたのはバンドセット。前回の【Neo Sparkle】と同様、今回もバンドスタイルでの楽曲披露が主軸になることは、開演前から多くのファンが察したところだろう。
ライブは、バンドセッションによるインタールードから開幕。すると、セッションの終わり際に「わん、つー、わんつーすりーふぉー!」と、かわいらしい声で“あの曲”のカウントが。もちろん「ナイショの話」である。ClariSのふたりは、登場の仕方こそシンプルだったのに、楽曲に込められたギミックと、それまでの演奏の“流れ”の両方がスムーズ、かつ巧みに組み合わさると、これほどまでに“開幕感”を後押しされるのか。見ると、フロアもすでに驚くほどの熱狂ぶりだった。それにしても、前回のライブから約半年が経っているはずなのに、「ナイショの話」や「ヒトリゴト」など、馴染みの楽曲が並んでいたからか、そこまで久しい感覚を覚えなかった。実家のような安心感とは、こんな感じを指すのかもしれない。
ライブ序盤には、“ありがとうkzタイム”も。5曲目からは、デビュー曲「irony」に「nexus」と、kz(livetune)のプロデュース楽曲を続けて歌唱。「irony」では、大切な人に素直になれない想いを描いた歌詞にあわせて、ClariSの歌声やダンスの振り付けもあえて少し無機質に。そこから楽曲が進み、間奏でのボーカルカットアップ、強めのスネア、スクリューエフェクト、落ちサビのメロディアスなキーボードと、展開にあわせて色彩多様なサウンドが重なるにつれて、ロボットチックにしてきたふたりの表情も柔らかに。最後にカレンが白い歯を輝かせて笑顔を覗かせるところまで、細かな表情の作り込みが天晴れだった。
「nexus」では、ビビッドイエローとライトブルーの照明を基調に、視覚的にも清涼感を運んでくる時間に。リリースから時間が経ってもなお色褪せない。kzらしい電脳エレクトロなサウンドは、生バンドと重なることで一層、セットリストのどこに置いても、決まってハイライトを演出してくれる。
ライブ中盤には、今回の核となる挑戦が。ライブタイトルにある“Arcanum”の意味は、秘密のことや、隠されたもの。前回の【Neo Sparkle】では、クララとカレンが小学生の頃、一緒にバンドを組んでいたという思い出話もちらりと明かされたが、あれも今回のステージまでの伏線だったかのよう。もう一度、かつてのように楽器を握ったらどうなるのか。“隠されていた秘密の扉”が、いま開かれる――。
ふたりでそう語りながら、ステージに運ばれてきたのは、高校生の頃に両親に買ってもらったという、カレン自前のアコースティックギター。ここからは、バンドメンバーとカレンのギター演奏によって、クララのソロボーカルでの「忘れてもいいよ」を支えるという。歌唱前には、イエローとブルーのサイリウムを照らしてほしいとも告げられた。
クララと一緒に歌詞を口ずさみながら、自身の手元を時折見つつ、確かなストロークで、フロアに浮かぶサイリウムで生まれた夜空に、眩しそうに目をやるカレン。こうして見ると、ふたりが並ぶステージはいつも通りなはずなのに、あまりにも新鮮すぎてもはや不思議さすら覚える。大サビ以降は、〈いつもそばにいたいよ〉という歌詞のメッセージが重なるように、クララとカレンがお互いを見つめ合い、想い合う姿が記憶に焼きついている。
今度は、クララの番。ステージにはキーボードが運ばれてきたものの、バンド活動当初に担当していたのは、あくまでボーカルのみ。人前でピアノを弾くのは、実に小学生ぶりだという。それでも、バンド演奏にコード感をあわせていきながら、途中にはソロパートまで弾きこなすクララ。さらにピアノをメインに据えた間奏でも、ステージ全体を快活に動き回るカレンを導くかのようだった。このパートの最後には、今後も新たな扉を開き続けたいと、前向きに語ってくれたClariS。いつか、ふたりが一緒に楽器を握り、セッションをするなんて日が、遠くない未来に訪れるのかもしれない。
その後、もうひとつの挑戦として、ここ数年で急増したカバー曲のメドレーを披露。「淋しい熱帯魚」にはじまり、「赤いスイートピー」「タッチ」「もういちどルミナス」と、名曲を歌い繋いだことも付け加えておきたい。
さて、このエピソードはアンコールで明かされた“秘密”なのだが、ClariSのふたりは前回のライブ終演後すぐ、今回も引き続きバンド演奏で、かつ自分たちも楽器に挑戦したいと、手を繋いでスタッフに直談判をしたとのこと。しかも、バンドメンバーの楽屋にまで出向き、その場でバンドマスターの黒須克彦を筆頭に、この日もステージに立っていた全員のスケジュールを、冗談抜きでその場で押さえたという。本当に、やる気以外の何物でもない。そうした裏話も耳に入れると、今回のライブは“秘密を明かす”と同時に、ClariSがファンのためを想い、新しい秘密を“作ってくれた”というニュアンスも強いように想像できた。バンドと共に成長した2023年のClariS。その締めくくりとして本当に最高のステージである。
ライブ終盤には、ライブ披露がレアな「恋磁石」や、恒例の人気曲「シニカルサスペンス」を経て、ラストナンバーには「ALIVE」が披露される。(ちなみに、今回のライブは1stアルバム『BIRTHDAY』収録曲のうち、その半数となる6曲もが歌唱されるなど、往年のファンにはうれしい部分もあったに違いない)。2022年を締め括った【ClariS HALL CONCERT 2022 ~ Let’s Snow Parade ! ~】でも、アンコールのラストを飾った「ALIVE」。当時にも増して楽曲と一体になり、ユニットとして背負っているものがひしひしと伝わってきたが、本当にいつ、どんなシチュエーションで浴びても、ClariSとして前に進む意志、そして我々がClariSと一緒に前に進んでいきたい意志を再確認させてくれる頼もしい楽曲である。
アンコールでは、最新シングル表題曲「ふぉりら」を初披露。同楽曲のMVに登場したのと同じ白衣姿で、クララはルーズソックス、カレンは懐かしのニーソックスをそれぞれ着用。ゆるめのギャルマインドとラップは、炭酸の泡のような“しゅわしゅわ感”が心地よく、あえてハスキーな雰囲気に仕立てた歌声も、ClariSの新境地を体現していた。
そのままの流れで、2024年5月より大阪、東京、さらには彼女たちにとって初上陸の広島を巡る【ClariS SPRING TOUR 2024】を開催することも明らかに。この日最後の楽曲「PRECIOUS」は、感謝の想いや祝福が舞い降りてくるようなハートフルナンバー。曲中には〈これから先も そばにいてね〉というフレーズもあったが、まるで今後のツアーへの希望を代弁するかのようだった。
本稿の冒頭に立ち返れば、この日の東京が季節外れな、まさにライブタイトル同様の“秋”の暖かさだったのも、もしかすると次の春からのひと足早い贈り物だったのかもしれない。そんな世界の優しさに包まれながら、来年もまた実家のような安心感あるClariSのライブに訪れたいと、願ってやまない一夜だった。
Text:一条皓太
◎公演情報
【ClariS AUTUMN LIVE 2023 ~Arcanum~】
2023年11月24日(金)、25日(土) 東京・Zepp DiverCity Tokyo
◎セットリスト (11/25夜公演)
1. ナイショの話
2. ヒトリゴト
3. コイセカイ
4. 君色
5. irony
6. nexus
7. blossom
8. treasure
9. 忘れてもいいよ
10. カイト
11. カバー曲メドレー
・淋しい熱帯魚
・赤いスイートピー
・タッチ
・もういちどルミナス
12. コネクト
13. ルミナス
14. Gravity
15. 幻想恋慕
16. 恋磁石
17. シニカルサスペンス
18. border
19. ALIVE
<ENCORE>
EN1. ふぉりら
EN2. PRECIOUS
◎公演情報
【ClariS SPRING TOUR 2024】
2024年5月25日(土) 大阪・Zepp Osaka Bayside
2024年5月26日(日) 広島・広島クラブクアトロ
2024年6月1日(土)、2(日) 東京・TOKYO DOME CITY HALL
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