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2023/12/04

<ライブレポート>あたらよ 季節と感情の美しさを描いた『季億の箱』リリースツアーファイナル、活動丸3年を涙まじりに祝う

 あたらよの全国ツアー【あたらよ3rd tour ”季億の箱”アルバムリリースツアー in「初めての土地編」】が、11月29日の東京・下北沢Shangri-La公演で幕を閉じた。

 開演時刻を迎え、SEと水色の照明が神秘的な空気を演出するなか、メンバーのひとみ(Vo. / Gt.)、まーしー(Gt.)、たけお(Ba.)がステージに現れた。ひとみがすっと息を吸い、歌い始めた1曲目は「アカネチル」。季節の美しさをメンバーの感性で切り取ったアルバム『季億の箱』の収録曲だけに、〈雨ざらしのバス停で〉という歌い出しから、一気に景色が浮かび上がる感じがある。目を瞑ったり胸に手を当てたりしながら歌うひとみの丁寧な歌唱とバンドサウンドが一体となり、情感豊かな演奏を繰り広げた。続いては「13月」で、前曲からの声色や音色の変化、表現の振れ幅も聴きどころ。最初の2曲は最新アルバム『季億の箱』収録曲だったが、その後は、あたらよが最初に発表した楽曲で、バンドの名が広まるきっかけとなった「10月無口な君を忘れる」など、過去作からの曲も披露。最初のブロックではバラードを中心に演奏し、各曲の世界観に観客をぐっと引き込んだ。

「10月無口な君を忘れる」の演奏後、ドラムのビートが曲間を繋げるなか、「さあさあさあ、みなさんこんばんは、あたらよです! ツアーファイナル、盛り上がる準備はできていますか?」とひとみがフロアにマイクを向ける。声を出して応える観客に対し、「あたらよのライブは静かに聴けるって油断してたんじゃないの?」といたずらっ子のように笑うひとみ。そして「ここからあたらよのライブの固定観念を壊していきます」と、開放的なアッパーチューン「空蒼いまま」へ突入した。ギターリフが印象的なイントロに合わせて観客がジャンプすると、「最高だよ、ありがとう!」とひとみは笑顔。まーしー、たけおも目線を上げ、嬉しそうな表情で観客の盛り上がりようを見ていた。メンバーは後のMCで、「とにかく音楽を楽しみたい」「みなさんに感謝を伝えたい」という気持ちでライブに臨んでいると明かしていた。バンドの活動開始から3年。リリースやライブ経験を重ねるなかで、自分たちの感情をより素直に反映させたライブができるようになりつつあるのではないだろうか。

「今夜2人だけのダンスを」を終え、ライブ終盤に差し掛かったところでこの日初のMC。MCでは、ひとみが、3年前の11月28日に「10月無口な君を忘れる」のMVをアップしたと振り返り、「だから今日は、みなさんに直接感謝を伝えに来ました。みなさん、ありがとうございます!」と観客に伝えた。あたらよ結成以前にも下北沢でよくライブをやっていたというまーしーは、観客でパンパンのフロアを前に、「見たことのない光景。(楽屋の)モニターで見ただけでも度肝を抜かれたし、1曲目から泣きそうでした」と語る。たけおが頷くなか、ひとみも「本当に異次元」と同意。そして「次の曲を始めたらこの素敵な時間が終わっちゃうなって思うと、名残惜しいけど」としつつ、「全力で楽しんで、お互い悔いの残らないように楽しんでいきましょう!」と結んだ。

 演奏再開は、過ぎた季節を思い起こさせる「夏が来るたび」「夏霞」から。水泡の音をバックにした歌とポエトリーリーディングが交差するインタールード、そして「52」であたらよの真骨頂、ストーリーテラーとしての表現力を見せたあと、「僕らはそれを愛と呼んだ」で本編を締めくくった。振り返れば、〈散りゆく秋の葉が赤い絨毯のように/街を彩っていく〉と歌う「アカネチル」で始まり、〈茜色染まる空の下/僕らはそれを愛と呼んだ〉と歌う「僕らはそれを愛と呼んだ」で終わった今回のライブ。街を彩る紅葉から、街を包み込む夕焼け空へ。痛みや悲しみの表象としての茜色が、どちらの曲でも温かみのあるイメージとして描かれているのが印象的で、どんな感情もきっと美しいのだと、私たちに伝えてくれているようだった。

 止まない手拍子とメンバーの名前を呼ぶ声に応えてのアンコールでは、「ただ好きと言えたら」「雪冴ゆる」を披露。MCでは、「元々は、僕がふたりを無理矢理誘ったところから始まって」とバンド活動を振り返ったまーしーが、普段は言葉少ななたけおから「無理矢理誘ったってまーしーは言ってたけど、無理矢理誘ってくれてありがとう」と言われ、涙。さらに、ひとみも「みんなも“明日が来ないでほしい”って思う日があるでしょ? でも、みんながあたらよの曲を聴いて、こうして(ライブに)来てくれるから、明日も頑張ろうって思えるわけですよ」と語りながらもらい泣き。こっそり目頭を押さえていたたけおは、ひとみから「泣いてるの?」と聞かれると手を振って否定していたが、本当のところはどうだったのか。いずれにせよ、温かな空気とともにライブは幕を閉じたのだった。

Text by 蜂須賀ちなみ
Photo by 木下航

◎公演情報
【あたらよ3rd tour ”季億の箱”アルバムリリースツアー in「初めての土地編」】
2023年11月29日(水) 東京・下北沢Shangri-La

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