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2023/11/18

<ライブレポート>MyGO!!!!!、【ちいさな一瞬】で仮想と現実から生まれた“第三の解”とは

 MyGO!!!!!が、11月4日に【BanG Dream! 12th☆LIVE DAY2 : MyGO!!!!!「ちいさな一瞬」】を東京ガーデンシアターにて開催した。

 2023年6月29日にTVアニメ『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』放送開始、9月16日にスマホ向けゲーム『バンドリ! ガールズバンドパーティ!(ガルパ)』参戦、11月1日に1stアルバム『迷跡波』をリリースしたMyGO!!!!!。【BanG Dream! 12th☆LIVE DAY2 : MyGO!!!!!「ちいさな一瞬」】は、MyGO!!!!!がもう“見習い”の立ち位置ではなく、「BanG Dream!(バンドリ!)」ファミリーとして本格的に仲間入りを果たし、プロジェクト全体を牽引していく宣誓式のような意味合いを持つステージだった。

 MyGO!!!!!の結成譚、あるいはバンドが持つ文脈は、TVアニメの放送を終えて、多くの人々の胸に刻まれたとおり。彼女たちが階段を駆け上がる瞬間を、リアルタイムで追えるのはいま、この瞬間しかない。会場に集まったファンことバンドリーマーがMyGO!!!!!のストーリーに没頭しているのは、キャストのスタンバイや楽器のチューニング中、彼女たちの名前を何度も叫ぶなど、熱狂的な声援の端々から感じられたところ。その上で、こんな期待感もあったのではないだろうか。

 セットリストは、アニメのコンテクストに忠実に寄り添ったものになるのか。はたまた、リリースしたばかりのアルバム『迷跡波』の曲順に従う形となるのか。それともーー。

 その答えは、どちらでもない“第三の解”であった。ライブ前半で描くのは、バンドの軸となる“仮想”の概念を基調に、メンバーの輪郭をあえて透かした“これまで”。そして、アニメのコンテクストを追いながら、メンバーとキャストの輪郭が“現実(リアル)”に重なることで見えてきた“これから”。結果的に、バンドの精神性を高純度で感じられ、いわばMyGO!!!!!がますます“MyGO!!!!!になる”ステージだったわけだ。

 少し抽象的な話になってしまったため、ここから具体的に振り返っていこう。ライブ前半は、今年4月に開催した【MyGO!!!!! 4th LIVE「前へ進む音の中で」】での演出同様、ステージ全体に妙幕を張って、映像がリリックビデオのように投影される形に。メンバーの姿が妙幕越しにうっすらと見えては、光の反射などで遠ざかる。掴めそうで、掴めないーー。このもどかしさがどこか、MyGO!!!!!らしく感じられた。

 いなたいギターでブルージーな「無路矢」からライブが始まると、MyGO!!!!!が織りなす重厚な世界観へと会場全体が引き摺り込まれ、どんどん沈んでいく感覚を覚えた。そこから「名無声」「Henceforth」(Orangestarカバー)「猛独が襲う」(一二三 feat.初音ミク カバー)と、ライブ前半には慣れ親しんだ楽曲をシームレスに披露することで、会場の空気を思うがままに掌握していく。アニメの放送を終えたばかりのタイミングなだけに、てっきりオープニングテーマ「壱雫空」などから開幕するものだと想像していたバンドリーマーも少なくはないはず。まさに“第三の解”である。

 それにしても、燈(CV:羊宮妃那/Vo.)のボーカル力には心底驚かされる。か弱さもありながら、力強さも同居した彼女の歌声。マイクを両手でぎゅっと握りしめるスタイルは健在で、「Henceforth」では楽曲にあわせて、唯一無二の“刹那色”な声色を操ったかと思えば、「猛独が襲う」ではわずかに肩を揺らすだけで、その小さな動きからは想像もできないほど、何倍ものエネルギーが放ってきた。

 四つ打ちダンスロック「影色舞」の間奏では、燈と愛音(CV:立石凛/Gt.)が右足、左足と、交互にキックをする軽やかなステップを魅せる。途中、燈が飛行機のように腕を広げて、“ぶーん”とでも効果音が届いてきそうな動きを見せていたが、紗幕越しに遠目に見えるあの羊宮の背中は、間違いなく、燈のそれだった。

 また背中繋がりでいえば、燈と楽奈(CV:青木陽菜/Gt.)が次曲「swim」(04 Limited Sazabysカバー)で背中合わせになる場面も。その際、お互いにがっしりとではなく、触れるか触れないかくらいの距離でそっと寄り添っていたあたりも、MyGO!!!!!らしい表現だと思えてしまった。

 ライブ前半を締め括ったのは「音一会」。ここからは、メロディとポエトリーディングを織り交ぜたパフォーマンスで、燈の紡いだ言葉が徐々にメロディへと昇華されていく。想いが歌に変わる、3秒前を描いたような楽曲。まだ折り返しにも関わらず、すでにクライマックスを迎えるかのような空気感とともに、“これまで”の集大成のようなステージがひと段落した。

 そしてライブ後半は、TVアニメ劇中歌をふんだんに盛り込んだセットリストに。燈のナレーションと、メンバーの足跡が徐々に交差しあう映像が投影される。メンバーと一緒に、これから先へと進んでいく。そんな宣誓が、燈の声でなされた。

 すると、この日初めて紗幕が上げられ、ステージの全貌がようやく明らかに。「人間になりたいうた Piano ver.」にあわせて、ステージ上に立っていたのは、燈ひとり。歌唱中、スポットライトに照らされるも、彼女は足元にある丸い光の中心に立たず、その端の方を微かに踏んだり、ときには勢いよく通り過ぎてしまったり。まるで、照明の光を“みんな”に見立てて、自らはその隅に立っているだけの人間だと訴えてくるかのように。いわば、“距離感で描く芸術”だった。

 そこから、初披露となるTVアニメ劇中歌「詩超絆」にかけて、長崎そよ(CV:小日向美香/Ba.)をはじめ、メンバーがステージ上に再集結したところで、アニメのコンテクストをまたひとつと回収していく。「一生、離さないから。」アニメ劇中で何度も繰り返された言葉が、当時の記憶とこの日のライブをリンクさせる瞬間だった。

 それは、同じく劇中歌「迷路日々」でも同様だったし、この流れで披露された1stシングル表題曲「迷星叫」に至っては、疾走感ある曲調も相まって、アニメではなく、リアルバンドの結成当時からの走馬灯のように、“あの頃”から駆け抜けてきた日々を思い返させられるような感覚に。本編最後の「碧天伴走」では、愛音と楽奈が普段とは逆の立ち位置で、お立ち台に上がる場面もありつつ、締めくくりには燈から「迷子でもいい、迷子でも進め───」と、アニメを終えてさらに大きな意味を持った、バンドの決意表明が堂々と届けられた。

 アンコールでは、メンバー全員がステージ前方に集まり、アコースティックセットで「栞」を奏でる。終演までの残り少ない時間、会場全体が名残惜しさを滲ませるも、林鼓子(椎名立希役/Dr.)から、まだ披露すべき楽曲が待っているという優しい諭しが。ここでようやく、前述の「壱雫空」と、ラストチューン「焚音打」が演奏された。

 なかでも「焚音打」は、銀テープが発射された煌びやかな光景のなか、燈から「大丈夫 僕たちは進もう 迷うことに もう迷わない」と、拳を天に突き上げながら、改めてバンドの力強さが言葉にされる。かつては言えなかった言葉が、気持ちを超えて歌になり、その想いが膨らむあまり、歌を超えて今度はストレートな言葉にーー。この楽曲の最後は、メロディではなくポエトリーディング。少女たちの想いがぶつかりあう様子が、言葉と歌を行っては戻る、まさに“迷子”を象徴する表現だと思わされた。

 TVアニメでのアフレコを通して、メンバーに対する理解がさらに深まっただろうキャスト陣。“キャラクターらしさ”を保つのであれば、もしかするとライブ後半も紗幕を垂らしたままの方がよかったのかもしれない。……なんて思うかもしれないが、キャストとメンバーが本当の意味で一体となり、その輪郭が重なりあったいまだからこそ、あのような展開となったのではないだろうか。むしろ、TVアニメ劇中歌を演奏しながらも、あくまで今回のライブは新たな“出発点”。そして、“これから”の未来に対して期待してほしいというメッセージさえ、ひしひしと感じられた。

 その想いを証明するかのように、アンコールでは2024年春に4th SingleやTVアニメ『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』Blu-rayの発売と、同年2月より東名阪と福岡の全国4都市を巡る【MyGO!!!!! ZEPP TOUR 2024「彷徨する渇望」】の開催を発表してくれたし、それに実はアルバム収録曲でありながらも、今回のライブでは披露していない楽曲がちらほら。もし気になったのであればぜひ、次回の全国ツアーに足を運んでみてほしい。

Text by 一条皓太


◎公演情報
【BanG Dream! 12th☆LIVE DAY2 : MyGO!!!!!「ちいさな一瞬」】
2023年11月4日(土)
東京・東京ガーデンシアター
出演:MyGO!!!!!(羊宮妃那、立石 凛、青木陽菜、小日向美香、林 鼓子)
<セットリスト>
M1 無路矢
M2 名無声
M3 Henceforth
M4 猛独が襲う
M5 影色舞
M6 swim
M7 音一会
M8 人間になりたいうた Piano ver.
M9 詩超絆
M10 迷路日々
M11 迷星叫
M12 碧天伴走
EN1 栞
EN2 壱雫空
EN3 焚音打

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