Billboard JAPAN


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2023/08/29 20:35

<ライブレポート>GO-BANG’S/ジュンスカ/PERSONZが【バンドやろうぜ】名古屋公演で魅せた”バンドブームの現在進行形”

 『バンドやろうぜ』創刊35周年を記念した【バンドやろうぜ ROCK FESTIVAL THE BAND MUST GO ON!!】の名古屋公演が、8月19日Zepp Nagoyaにて開催された。

 「名古屋が一番、前売りの反応がいいんですよ!」と関係者が前のめりになっていたとおり、チケットの売れ行きは上々。その要因のひとつが名古屋公演の主催、TOKAI RADIOの『SF Rock Station』だ。1986~93年にわたって放送されたこの番組は、ローカル発でありながら氷室京介、小室哲哉、奥田民生、ザ・ブルーハーツ、BLANKEY JET CITY、今公演の出演者のJUN SKY WALKER(S)、PERSONZら錚々たる面々がDJを務め、この地域のロックファン必聴のプログラムとして人気を博した。今回我先にとチケットを買い求めた人の中には、当時、真夜中にラジオにかじりついてロックを聴き漁っていた同番組リスナーも少なくなかったに違いない。

 公演当日、そんな前もっての期待感の高まりを反映し、会場のZepp Nagoyaはほぼ満席。40~50代と思しきバンドブームど真ん中世代が客席の大半を埋め尽くした。出演は、GO-BANG’S、JUN SKY WALKER(S)、PERSONZ。シーンの中でもそれぞれ異なる輝きを放っていた3バンドが一堂に会するラインナップは、多彩なアーティストが誌面を飾った『バンドやろうぜ』の記念企画にふさわしい。

 トップバッターはGO-BANG’S。ピンクのブラウスに水色のスカートという衣装も含めて、森若香織の変わらないキュートさは落涙モノ。「かっこイイ ダーリン」「ざまぁカンカン娘」「チキチキバンバン」「OK!」など王道ナンバーが、色あせないポップさで会場を盛り上げる。現在GO-BANG’Sは森若のソロユニットとなっているが、バンドの演奏にも華やかさがあり、森若のキャラクターを引き立ててくれている。

「スペシャルボーイフレンド」では森若も「何これーッ!?」とびっくりのサプライズが。サビに入るや観客が一斉にハートのパネルをふり、会場中がピンクに染まったのだ。まさに全員“ゴーバニスト”状態。幸福感に満ちたサイコーの雰囲気の中、ラストの「あいにきてI NEED YOU!」でしめくくられた。

 このサプライズを演出したのは観客の1人である40代のTOMOくん。開演前に客席中を回って、「徹夜でつくった」という数百枚の紙製ハートを来場者に配っていたのだ。「“楽しんだもん勝ち”がゴーバニスト。バンドブームの頃は中学生でお金もなかったのでライブに行けなかった。2018年と19年の東京でのバースデイライブに行った時にサプライズをやったら森若ちゃんが喜んでくれたので、今日もみんなで楽しもう! と思って協力してもらいました」と、してやったりの表情。

 続いてはJUN SKY WALKER(S)。1曲目から大ヒットナンバー「歩いていこう」で会場のテンションをマックスに引き上げる。度肝を抜いたのは宮田和弥の力強く伸びやかなボーカル。衰え知らずの歌声に、この公演が決して懐メロ企画ではなく、現役バリバリのロックバンドによるライブツアーなのだと思い知らされる。新曲を織り交ぜた構成もだからこそなのだろう。「もう一度 歩いていこう」は往年の代表曲の詞やメロディーのオマージュ、「そばにいるから」はスケール感とビート感が融合したジュンスカの新たなスタンダードになり得る名曲で、初めて聴いてもグッと世界に入り込める。これらの新曲やラストの「全部このままで」まで、ジュンスカらしさを十二分に感じさせながら、キャリア35年の貫録も実感できる圧巻のパフォーマンスを披露してくれた。

 トリを務めたPERSONZは一曲目……いやJILLの第一声が放たれた瞬間から会場の空気を支配した。何だ、このきらめきを放ちながらどこまでも伸びていく高音は!? 来場者に配布された『バンドやろうぜ』特別編集版のインタビューで、“50代を目前に初めてボイトレを受けて明らかに前より声が出るようになった。今が40年の中で最強”と語っていたのは伊達じゃなかった。バンドサウンドは円熟味を増し、そこにJILL史上最強のボーカルが乗っかる。それをズバリ言い表したかのようなナンバー「I AM THE BEST」では、ファン全員が手拍子を打ち鳴らして一体感を共有。そしてとっておきの大ヒットナンバー「DEAR FRIENDS」を森若香織、ジュンスカと共演し、それぞれ今こそが全盛期といわんばかりの歌と演奏で、会場の熱気も最高潮に達したのだった。

 終演後のファンの表情は、どっちを向いても興奮で満ち足りたものだった。「無茶苦茶カッコよかった! 一番好きだったのはZIGGYだけど、世代だから観なくちゃ、と。『バンドやろうぜ』は毎月買っとってバンドもやってたからね」とは40代男性。「ジュンスカとPERSONZが目当て。当時は中学生でライブに行けなかったので今年初めて生で観ました。もう、“ホントの神”です!」とは公演中ずっと声援を送り続けていた50代女性。そしてバンドブーム世代ばかりでなく20代のファンも。「普段はビジュアル系が好きなんですけど、お母さんがファンなので一緒に来ました。聴くのはほとんど初めてだけどカッコよかったです」。こんな母娘2世代の姿を見られたのも、親子仲がよく、百貨店での母娘買いが多いといわれる名古屋ならではだったのかも(?)。

 チケットを購入した時は、ブームだった時代を懐かしんで、という人も多かったはずだが、ステージを体感した後は多くの人がそんな郷愁を吹き飛ばされたのではあるまいか。目の前で力強い演奏を見せつけてくれたバンドたちは、まぎれもなく今も全力で走り続けている。だから自分たちも、ずっとバンドブームのまま追っかけていけばいい! そんな風に奮い立たせてくれるライブショーだった。

 そしてこのバトンは、9月2日の【バンドやろうぜ】東京公演へと渡される。

TEXT  大竹敏之
PHOTO SUGI(LiveYou)

◎公演情報
【バンドやろうぜ ROCK FESTIVAL THE BAND MUST GO ON !!】
<東京公演>
2023年9月2日(土)東京・Zepp Haneda
START 18:00
出演:岸谷香/筋肉少女帯/JUN SKY WALKER(S)

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