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2023/07/07

<ライブレポート>江口洋介、デビュー35周年イヤーを記念して開催した初のビルボードライブ公演

 デビュー35周年を記念し、江口洋介がキャリア初のビルボードライブ公演【BE HERE NOW】を6月21日に開催した。本稿では、その1部の模様をお届けする。

 開演時間になり、真壁陽平(Gt)、TOKIE(Ba)、吉田佳史(Dr)、Sin(Key)という錚々たるバンドメンバーが姿を現す。セッションのようなアンサンブルのなか、タンバリンを片手に持った江口が登場すると、大きな歓声が上がった。江口は「ようこそ! ようこそ!」と笑顔で口にし、アメリカンロック調の「夢ゴコチ」からライブがスタート。分厚いアンサンブルに江口が吹くブルースハープの旋律が乗る。サビでは右手でタンバリンを掲げながらジェスチャーを交え、ワイルドでご機嫌なムードを増長。間奏では真壁のギターが唸りを上げ、江口も負けじと「行くぞ、六本木!」と叫び、再びブルースハープを吹き鳴らす。とても熱いオープニングに対し、オーディエンスものっけから熱狂を露わにした。

 真壁のシャープなギターのカッティングが響き、江口もギターを演奏する「GOOD TIMES」に突入。<長い長い夢を見ようよ おまえと踊り続ける>。カリフォルニアの空気をめいっぱい吸い込んだようなアメリカンロックと呼応するように、江口の歌詞はどこまでも雄大だ。「カモン!」のかけ声に、オーディエンスのハンドクラップの音も大きくなる。フロアからは男性の「かっこいい!」という声が上がった。

 江口が「今年は35周年の年で、それに便乗してくれる方はどんどん便乗してください(笑)」と言い、このライブはみんなで集まるための口実で、これまで照れ臭かったが配信も始めたと、一連の活動を説明。「次の曲は1stアルバムの曲です。この曲をやるのも35年ぶりくらいです。この曲からすべてが始まりました」と前置きして、1stアルバムのタイトル曲「READY TO GO」をアコギとともに披露した。温かい風のような楽曲に対し、「あんちゃん!」という歓声が上がる。社会現象を巻き起こしたドラマ『ひとつ屋根の下』で演じた“あんちゃん”のような熱血で人情味溢れるオーラが江口からは放たれているのだから不思議だ。

 続いて披露された「天気雨」の歌詞は、日本を代表する脚本家であり、江口とは『東京ラブストーリー』などで関わりがある坂元裕二との共作だ。江口が、20歳のときに一緒に談合坂をドライブしながらこんな曲が作りたいねという会話を経てこの曲が生まれたというエピソードを明かした後、「今日はその坂元裕二さんがいらっしゃってます! つい最近カンヌ映画祭に行っていて友達として誇りに思ってます」と客席にいる旧友を紹介。坂元は席から立ち上がり、ステージの江口に向かって、「MCが下手になったね。もうちょっとうまかった(笑)」と愛のある一言。江口は「うるさいよ!(笑)最近時の人ですから。テレビで坂元さんが喋っているのを見ると、うちでは“あの坂本さんが!”と話題になります。時を重ねていくとそういうことも起こるんですよね」と感慨深げに話した。

 演奏の合間に挟み込まれるMCは、驚くようなニュースを知るとつい映画化のことを考えてしまうとか、沖縄にロケで行ったときに通った飲食店で身バレしないように下を向いていたらお笑い芸人だと勘違いされたとか、素が垣間見られるエピソードばかり。その飾らない人柄に場内の空気はどんどん親密になっていった。

 中盤には、コロナ禍で街に人がいない風景を見ながら、ギターを練習したり、曲を作っていたりした時期に制作したという「風の街」を演奏。“大人に向けての応援歌”として作られた新曲で、雄大なアンサンブルに乗せて、<どんな時代も君となら超えていけるさ 君となら笑っていけるさ>という力強いメッセージが歌われた。

 そして、ハンドマイクでステージを移動しながらノリノリで歌ったロカビリー調の「It's Fine Today」、そこからさらにアッパーな「逃げられた天使」へ流れ込み、場内には熱気が立ち込める。さらに、ハードロック風のアレンジが施された「愛は愛で」を続けた。ブルースハープを吹き、<本気で笑って>と歌いながらオーディエンスを指差す等、終始熱いパフォーマンスが繰り広げられた。江口がマイクを通さず、大きな声で「サンキュー!」と言って、本編は終了。「熱くなったか? 六本木!」と問いかけ、オーディエンスの手をタッチしながら去って行った。

 アンコールで再登場した江口が、「今日はありがとうございました。またいつもとは違った雰囲気で“なるほど”って感じでした。またやるぞ、ビルボード! みんな(バンドメンバー)のスケジュール次第だぜ、みんな忙しいぜ!」とシャウトすると、大きな拍手が送られた。貴重なライブを見ようと日本各地のファンが集結していたが、ビルボードライブ東京の近所である麻布十番から来たというオーディエンスに江口がピックをプレゼントする一幕もあった。

 「感謝しています。35年はあっという間でした。コロナがあったり、いろんなことがあって、今ここにいるんだということが言いたくて、【BE HERE NOW】というライブタイトルを付けました。複雑な世の中ですが自分次第です。“私はここにいる!”っていう気持ちでいてください。この歌は皆さん一緒に歌いましょう」と江口が言って、代表曲「恋をした夜は」を披露。もちろん大合唱が起こる。そして、「明けていく街」で大団円を迎えた。

 『FNS音楽祭』の出演がすでに報じられている江口だが、他にもこれから発表されるニュースがあるという。デビュー35周年というメモリアル・イヤー、役者とミュージシャン、両方とも精力的な活動を展開してくれそうだ。


Text:小松香里
Photo:菊池修

◎公演情報
【BE HERE NOW ~ 35th Anniversary ~
YOSUKE EGUCHI LIVE 2023】
2023年6月21日(水)ビルボードライブ東京

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