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2023/07/03

<ライブレポート>『ぼっち・ざ・ろっく!』の初ライブ、結束バンドが鳴らしたロックの快哉

 結束バンドは、はまじあき原作のTVアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』に登場する主要キャラクター4人によって結成された高校生バンド。2022年10月に放送開始した『ぼっち・ざ・ろっく!』は、個性豊かなキャラクターやリアルに描写される演奏シーンに加え、様々なクリエイターが提供する楽曲の人気も高い。2022年12月28日にリリースされたフルアルバムにしてセルフタイトル『結束バンド』は、Billboard JAPANの総合アルバム・チャート“Hot Albums”にて通算2度の総合首位を獲得し、先日発表された2023年上半期のダウンロード・アルバム・チャート“Download Albums”ではback number、Ado、ELLEGARDENといった錚々たるアーティストが並ぶなか、見事首位を獲得してみせた。

 そんな結束バンドによる初のライブイベント【結束バンドLIVE-恒星-】が、5月21日にZepp Haneda(TOKYO)にて開催された。当然のことながらチケットはソールドアウト、開演前から大入りの場内には期待の熱気が渦巻いていた。出演者には後藤ひとり役の青山吉能、伊地知虹夏役の鈴代紗弓、山田リョウ役の水野朔、喜多郁代役の長谷川育美といったキャスト陣に加え、バンドメンバーとして生本直毅(Gt.)、五十嵐勝人(Gt.)、山崎英明(Ba.)、石井悠也(Dr.)が参加。

 一足早くスタンバイしたバンドメンバーに続き、長谷川育美がステージに上がると、ショーは「ひとりぼっち東京」からスタート。直情的なバンドサウンドに乗せて<ギターの音が 熱くなるのは/わたしの中に青い炎があるから>と歌われるオープニングが、この作品で描かれる高校生たちのモラトリアム的なメランコリーを彷彿とさせる。長谷川が「こんばんは、結束バンドです」と告げ、続いて披露された「ギターと孤独と蒼い惑星」は、結束バンド始動時にライブハウスのオーディションで演奏された劇中曲で、ライブのスタートダッシュにも相応しい威勢を放つ。

 長谷川育美のボーカリストとしての魅力が、音源以上にライブという場で力強く機能していたこと、それがまず初めに何よりも印象的だった。どこか影を感じさせつつ野生味を増した絶唱の「ラブソングが歌えない」に続き、一転して「Distortion!!」ではポップでカラフルに弾けてみせる。自由自在な声色の切り替えは声優だからこそなせる技かもしれないが、それでも音楽活動がほぼ未経験の長谷川がここまで生のバンドサウンドを巧みに乗りこなすとは驚きだった。

 これまた印象が変わって、伸びやかで疾走感のある「ひみつ基地」の歌唱を終えた長谷川からバドンタッチ、続いてステージに上がったのは水野朔で、tricotの中嶋イッキュウが作詞作曲を手掛けた「カラカラ」をパフォーマンス。プリミティブな叫びのようなギターと透き通った歌声のコントラストが凄まじいナンバーなのだが、この日はむしろ水野のボーカルがとことんエモーショナルで、とりわけ新鮮な印象を感じた一幕だった。その後のMCでも「気持ちはそっち側です」「バンド最高!」と興奮気味に語り、合流した長谷川に「めっちゃテンション高くて可愛い」と言われていた水野だが、パフォーマンスにもその高揚と“ぼざろ愛”が大いに直反映されていたのだと思う。

 アニメでも視聴者を驚かせた“後藤ひとりのアドリブ演奏”が忠実に再現されて始まった「あのバンド」は中盤のハイライトで、客席フロアの熱気も一気にピークへ達したライブの折り返し地点。ここまで積み重ねられてきた熱気を心地いい陶酔に転じさせた「小さな海」を経て、再びボーカルが交代、今度は鈴代紗弓がステージに現れると、作詞作曲をthe peggiesの北澤ゆうほが手掛けた「なにが悪い」が始まる。シンガロングにハンドワイプにとオーディエンス参加型のパフォーマンスで会場を一体にした鈴代は、MCパートでもコール&レスポンスでファンと楽しそうにコミュニケーションをとる。鈴代が演じる伊地知虹夏は結束バンドのムードメーカーであり、そのステージングはまさしく面目躍如といった感じだ。

 全編を通してアルバム『結束バンド』の楽曲群にライブの息吹が吹き込まれていくのだが、この日は初披露の新曲もプレイされた。「ひとりぼっち東京」や「あのバンド」も手掛けた樋口愛が作詞、agehasprings Party所属の南田健吾が作曲を務めた「青い春と西の空」は、シンプルなアンサンブルの中でツインギターの美しい音色の応酬が交わされるナンバーで、これまた珠玉のギターロックといった仕上がり。演奏後に「タイトル通り、青春を感じさせる曲」と長谷川も語った通り、切ない哀愁を醸していて、結束バンドの新しいエッセンスを予感させる一曲でもある。

 <青い春なんてもんは/僕には似合わないんだ>と歌う「忘れてやらない」は、前述の「青い春と西の空」とのつながりも感じさせつつ、サビではオーディエンスの大合唱、間奏ではバンドメンバーの紹介も。続いては「忘れてやらない」と同じく、結束バンドが文化祭で披露した楽曲「星座になれたら」。ギターソロは喜多郁代の成長と後藤ひとりの機転によって生まれた“アニメver.”のアレンジとなっていて、これには客席からも盛大な歓声が送られた。そして本編ラストに演奏されたのは、アルバムでもエンディング的な役割を担う「フラッシュバッカー」。ミドルテンポながらも確信に満ち溢れたような力強い演奏と歌声が特大の余韻を残し、ショーはひとまずの締めくくりを迎えた。

 ギターを抱えた青山吉能が現れ、ASIAN KUNG-FU GENERATION「転がる岩、君に朝が降る」のカバーからスタートしたアンコール・パート。青山が課題曲のギターを弾けるようになるための特訓企画「ギターヒーローへの道」がYouTubeで配信されていたが、実は最終回後も密かに練習を続け、この日のために準備していたという。思わぬサプライズに会場が驚きと感動に包まれるなか、続いて披露されたのは新曲「光の中へ」。SAKANAMONの藤森元生が作詞作曲を手掛けた一曲で、まさしく光の中を一気に駆け抜けるような疾走感が溢れる。そして、いよいよライブはフィナーレへ。最後はアニメのオープニング主題歌「青春コンプレックス」を披露。長谷川とファンがともに叫んだ<かき鳴らせ>の大合唱は、これぞライブ、これぞバンド、これぞロック、そんなふうに噛み締めたくなる、どこまでも痛快な瞬間だった。

 今年8月には舞台化が決まっており、2024年春には劇場総集編も上映予定。まだまだ『ぼっち・ざ・ろっく!』の今後の展開から目が離せない。


◎公演情報
【結束バンドLIVE-恒星-】
2023年5月21日(日)
Zepp Haneda(TOKYO)
<セットリスト>
1. ひとりぼっち東京
2. ギターと孤独と蒼い惑星
3. ラブソングが歌えない
4. Distortion!!
5. ひみつ基地
6. カラカラ
7. あのバンド
8. 小さな海
9. なにが悪い
10. 青い春と西の空
11. 忘れてやらない
12. 星座になれたら
13. フラッシュバッカー
En
14. 転がる岩、君に朝が降る
15. 光の中へ
16. 青春コンプレックス

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