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2023/07/02

<ライブレポート>TOMOO、念願のNHKホールで見せた“影と日なた”を歩いてきた心の情景

 TOMOOが、ワンマンライブ【TOMOO LIVE TOUR 2023 “Walk on the Keys”】を、6月28日東京・NHKホールにて開催した。新旧楽曲を織り交ぜて行われたライブは当日がTOMOOの誕生日ということもあり、祝福ムードの中で心地良い余韻が残るツアーファイナルとなった。

 このライブは、自身最大規模のホール・ワンマン・ツアーとして、6月3日NHK大阪ホールに続き東京公演として行われたもの。両公演ともにソールドアウトとなっており、客席はギッシリと埋まっていた。

 ステージ右手のストリングスのカルテットが厳かに音を奏でると、ステージ前の紗幕が白に染まって行く。演奏が止まると眩い光が客席に放たれ、大きな拍手の中でTOMOOが中央のグランドピアノの前に座る。登り詰めるようなクラシカルな旋律からブレイクすると、身体全体で激しく鍵盤を叩いて始まったのは「オセロ」。イントロを弾いてからピアノを離れて歌うTOMOOを客席は総立ちとなり手拍子で盛り立てる。

 「こんばんは、TOMOOです!東京!盛り上がって行きましょう」と声を掛けると、「ウォー!」と物凄い歓声だ。ステージ上は左奥にホーンセクション〈永田昴生(SAX)横山ともこ(Sax)小松悠人(Tp)前田大輔(Tb)〉、手前に幡宮航太(Key)、Bunta Otsuki(Gt)、中央にTOMOOのピアノとキーボード、右側に勝矢匠(Ba)、関口孝夫(Dr)、右奥にストリングス【シモタニ(1st Vn)加藤光貴(2nd Vn)三輪紫乃(Va)山本健太郎(Vc)】という大編成。バンドのタイトな演奏が、TOMOOの伸びやかな歌声をがっちりと支えている。

 「3階!2階!1階ー!」と、上から客席に呼び掛けて、「恋する10秒」へ。クルクルとまわりながら歌う姿が、軽やかに爽やかに恋心を歌った曲の表情を豊かにしていた。ステージ左手のキーボード前に置かれた白いソファに座り、「らしくもなくたっていいでしょう」のイントロが鍵盤で鳴ると、合いの手を入れるオーディエンス。キャッチーなメロディを歌いながらステップを踏むTOMOOは、広いステージを味わいながら、お客さんと共に楽しんでいる様子だ。

 「“Walk on the Keys”、来てくれてありがとうございます!6月3日の大阪公演からあっという間に今日が来てしまいました。2つだけですけど、ツアーファイナルを無事に迎えられて本当に嬉しいです!」

 「特別な日にしたいと思いますので最後までよろしくお願いします!」との言葉から、“もうすぐやってくる夏”をテーマとしたコーナーへ。「shiosai」、「雨でも花火に行こうよ」、「いってらっしゃい」と、情景が浮かんでくる選曲たちでグッと惹きつけた。続いて歌われた「17」では丁寧に言葉を置くような歌い回しと、包み込むようなバンドの優しい演奏が素晴らしく、TOMOOの繊細な感情に触れられたような印象に残る4曲だった。

 ここで、鍵盤をモチーフにしたツアータイトル“Walk on the Keys”にちなんで、キーボードの幡宮との連弾を披露。曲は「ベーコンエピ」。TOMOOのグランドピアノの向かいに置かれたキーボードで幡宮が演奏して、リズミカルに2つの鍵盤が重なり合う、ふくよかな音が耳に心地良い。終盤、2人のエモーショナルなプレイが1つになっていく様は感動的で、演奏を終えると客席から大きな拍手が鳴り響いた。

 「今日、この場所この時間は私にとって本当に特別なので、普段のライブではあまりやらない懐かしい“レアキャラ”を放出しようと思います」と、10年前に書いたという「好きっていって」を弾き語り。流麗なピアノと透明感がありつつ芯の強さを感じるボーカルが耳に残る。曲間のMCでは、中学3年生のときに人生で初めてライブを観たのがここ東京・NHKホールでのアンジェラ・アキの公演で、ハンカチを濡らしながらライブを観ていたことを回顧。そして、音楽を始めようと思ったきっかけが、中学2年生のときに手紙をもらいその返事として曲を書いて友だちに聴かせたことだったというエピソードから、後にタイトルを付けたという「ピアス」を披露した。2本のスポットライトを浴びて歌うTOMOO。マイナー調で真摯なメッセージを感じさせる曲だ。

 続く「ナイトウォーク」、バンドが加わった「Cinderella」と、明るくポップなイメージとは違う、内省的な面の魅力がダイレクトに感じられた。「ロマンスをこえよう」ではステージ全体が古い映像の中にいるようなノスタルジックな雰囲気に包まれ、「夜明けの君へ」では歌詞が紗幕スクリーンに映し出される等の演出も、曲の世界に没入させる役割を担っていた。

 MCでは映画『君は放課後インソムニア』の主題歌としてリリースされたばかりの新曲「夜明けの君へ」について、「人生で初めて映画のために書かせてもらった曲です。“観に行ったよ”っていう声も届いていて、その声を聴いて改めて、私はこの映画の中で生きている人たちのことを愛おしく思って、この人たちから言葉をもらっているんだなって思いました。私が活動している中で思っていたけど言葉にしていなかったことを、歩き続けてクロスするように映画と出会って言葉にできたことがとっても幸せだなって思います。今日はみんなに聴いてもらえてすごく嬉しかったです」と思いを伝えて、会場は大きな拍手に包まれた。

 マイクを手にしたTOMOOが、「もう1回、盛り上がって行きましょう!」と呼び掛けると、途中から座っていた観客は再び総立ちとなって、「HONEY BOY」でライブは後半へ突入した。ステージの左右を行き来しながら煽り、サビで右手を振りながら歌うと客席も一斉に右手を振って応える。「夢はさめても」では、6人の“TOMOOダンサーズ”に囲まれながらの賑やかなパフォーマンスを見せ、続く「Friday」でもダンサーを従えて歌う華やかなステージング。カラフルな衣装を身に着けたダンサーたちの中央で歌うTOMOOの表情は、自信に満ち溢れたオーラを放っていた。

 「“Walk on the Keys”のKeysは鍵盤という意味で付けました。白鍵と黒鍵が連なって続いて行くこの鍵盤のように、影と日なたを繰り返して歩いて行くような、私たちってそういうものなんじゃないかなって。そうだったら、ホッとできていいよなあって付けたタイトルでした。ただ、もう1つ古いきっかけとして18歳の誕生日にもらった絵があるんです。その絵には草原があって、真ん中に道みたいに鍵盤が連なっていて、その上に女の子が1人立っていて。その草原はただの緑色じゃなくて、ピンクとか黄色とかいろんな色で描かれていて、光って見えるんです。真ん中に立っている女の子の顔も、表情は見えないけど草原と同じく色とりどりに重ねて塗られていて、それが金色に見えるんです。今10年経って振り返ってみると、やっぱり私の心の中の旅は、影と日なたを繰り返して歩いてきたんだなって。いつも光を見た日のことを、そして光に寄り添ってる影のことを歌ってきたなって、改めて思います」

 ツアータイトルに込められた想いを語ると、最後に歌われたのは「金色のかげ」。同曲のインストバージョンで始まったライブを、弾き語りで静かに締めくくると、ステージには万雷の拍手が贈られた。

 アンコールに応えて再びステージに上がると、すぐにピアノを弾き出して「I hope」へ。バンドと一体になった、しなやかでソウルフルな歌唱は穏やかながら熱く迫力があった。曲が終わってすぐに、バンドが「Happy Birthday」を演奏して、ステージ袖からスタッフがケーキを運んできた。28歳の誕生日を会場全体で祝福されたTOMOOは照れくさそうに、「ありがとうございます!」と感謝。「世界で一番、幸せなバースデーの人ですね。あんまりどこで歌うのが夢とか話さないタイプだったんですけど、ここNHKホールで歌うのは、本当は17歳の頃から夢でした。歩き続けてきて、今この瞬間にこの時間、この場所を作ってくれているみんなと一緒にいられることが、一番嬉しい!またこんな日を一緒に作れたらいいなって思います。これからも歌い続けます!」

 ラストは代表曲「Ginger」。曲の主人公の猫のように、ひらりとステージを飛び回り、2番の歌い出しではソファの後ろに隠れたりしながら歌うTOMOOと、それを見守りながら盛り上がるオーディエンス。ダンサーも加わって、最後は全員でジャンプして会場が一体となるハッピーなエンディングとなった。メンバー、TOMOOがステージを去ると、スクリーンに映し出されたのは、待望のメジャーファーストアルバム『TWO MOON』を9月27日にリリースすること、キャリア最大規模の全国ツアー【TOMOO LIVE TOUR 2023-2024“TWO MOON”】の開催、さらに公式ファンクラブ“YOU YOU”の開設という、3つの重大発表。TOMOOがこの先歩いて行く道にどんな光が見えるのか、ますます興味深くなるツアーファイナルだった。

Text:岡本貴之
Photo:Kana Tarumi


◎公演情報
【TOMOO LIVE TOUR 2023 “Walk on the Keys”】
2023年6月28日(水)
東京・NHKホール
<セットリスト>
オープニング:金色のかげ(inst)
1. オセロ
2. 恋する10秒
3. らしくもなくたっていいでしょう
4. shiosai
5. 雨でも花火に行こうよ
6. いってらっしゃい
7. 17
8. ベーコンエピ
9. 好きっていって
10. ピアス
11. ナイトウォーク
12. Cinderella
13. ロマンスをこえよう
14. 夜明けの君へ
15. HONEY BOY
16. 夢はさめても
17. Friday
18. 金色のかげ
アンコール
19. I hope
20. Ginger

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