2023/06/12
【祝・日比谷野音100周年 日比谷音楽祭 2023】が、2023年6月3日~4日の2日間に渡り日比谷公園とその周辺施設にて開催された。
【日比谷音楽祭】は、“新しい音楽の循環をみんなでつくる、フリーでボーダーレスな音楽祭”を目指し2019年よりスタート。コロナ禍で中止や、開催スタイルの変更を余儀なくされていたが、今年は4年ぶりに飲食ブースも含めた元の形で開催された。また、今年で100周年を迎えた日比谷公園大音楽堂で開催された、【Hibiya Dream Session】には、ゲスト・アーティストとして2度目となるMr.Children・桜井和寿、初登場の木村カエラ、Tani Yuukiなどが出演。さらに、6月4日の【Hibiya Dream Session 2】にはシークレット・ゲストとして、B'zが登場し、大きな話題となった。本稿では6月4日に開催された【Hibiya Dream Session 3】の模様をお届けする。
前日までの雨が嘘のように晴れ上がり、都心に位置する夕暮れ時の日比谷公園大音楽堂が、次々と観客で埋め尽くされていく。開演時間になると、紫の照明に照らされる中、亀田誠治率いるThe Music Park Orchestraが拍手に包まれに登場した。そして、亀田が「皆さんこんばんわ~」と挨拶。続けて、「Hibiya Dream Session 3、今年最後の公演となってしまいました。皆さん準備はいいですか?」と煽ると、会場も大きな歓声で応えた。
亀田が「今年出会ってしまった素晴らしいゲストから始めたいと思います。SO-SO!」と紹介するとステージ脇から、スポーツカーの音と共にヒューマンビートボクサー・SO-SOが登場。想像以上にリアルなサウンドに静まり返ったあと、一転して場内がどよめきのような歓声に包まれた。そして、ループステーションを使いながら、すべてのサウンドを声で表現した即興演奏を披露。彼から出る音はとても密度が高く、体に響くようなアタック感のある音には衝撃を受けた。SO-SOが登場してから一瞬で日比谷公園大音楽堂はクラブのような雰囲気に早変わりし、会場にいた観客は一体となって手を上げ音楽を楽しんでいた。
MCでは、亀田誠治が「SO-SOは去年にYouTubeの動画で知って、そこからSNSをこっそりフォローして、タイミングを狙って日比谷音楽祭に出ませんか?と連絡したんです」とSO-SOと出会った経緯を語った。これに対してSO-SOは、「急に亀田誠治さんからフォローされましたという通知がきて、え!? 東京事変のあの亀田さん?」と驚き最初は偽アカウントかと疑ったとコメントすると、会場からは笑いがおこった。
MCのあとは「SO-SO Exercise」を披露。 “胸を叩いて”や“足踏みをして”などSO-SOのリクエストにあわせて、観客が一緒に体を動かすという一曲だ。SO-SOのインパクトのあるヒューマン・ビートボックスから始まると、The Music Park Orchestraのサウンドが加わり熱を帯びていく。さらに、SO-SOにあわせて観客が足踏みや手拍子などで体を動かし一体となって活気付いていく中、終盤ではダブステップのような展開となり、会場を大いに盛り上げた。
2人目はシンガー・ソングライターのさらさが登場し、「太陽が昇るまで」を披露。先ほどのSO-SOとは一転して、一気に大人でチルな雰囲気が会場を包み込む。MCでは、日頃制作するときに掲げているテーマについて語られた。さらさは、“ブルージーに生きる”ということをモットーに制作を行っているそう。ポジティブなことばかりではなく、ネガティブなことも起こる人生について「両方あってバランスが取れている状態」だと述べ、「ネガティブなことも起きないとバランスがとれてなくて、両方あってこそだと思っています。なので、受け入れにくいネガティブなことも、まぁいいか、そんなこともあるか、と受け入れられるような、そういう意味での“ブルージーに生きろ”というモットーで、普段モノづくりをしています」と自身の活動への想いを明かした。そして次に披露されたのは亀田と2人で何曲か案を出し合い決めたというUAの「情熱」。グルーヴ感のある安定したバンドサウンドとさらさのスモーキーな歌声はとてもマッチしており、徐々に盛り上がっていく楽曲に対し、会場からは自然とクラップが鳴り響く。そして、最後には伸びやかなロングトーンを最後に披露し会場を沸かせた。
ここで、The Music Park Orchestraにドラマー・YOYOKAを迎え、亀田が20歳の時に影響を受けたという坂本龍一の「黄土高原」を披露。YOYOKAが加わった事でバンドサウンドにさらに厚みが増し、キレのあるドラムサウンドの音は聴いていてとても気持ちよく安定感のある演奏を見せつけた。
続いて会場を大いに盛り上げたのは、日比谷ブロードウェイの井上芳雄と甲斐翔真だ。この日、惜しくも出演予定であった望海風斗が体調不良の為、出演キャンセルとなってしまったが、颯爽と登場してから井上が「本当は3人なんですけど、ちっと事情があって2人になってしまいましたが、3人分頑張りますのでよろしくお願いします。盛り上がっていきましょう!」と元気よく挨拶し「Shut Up and Dance」からスタート。伸びやかでパワフルな歌声が会場を包み込むと、会場をポジティブなエネルギーで満たしMCへ。今回初の出演となる甲斐が「ステージ脇にいる時は雰囲気にのまれてしまいそうになったんですけど」と語ると、井上が「のまれてしまえば良かったのに」と、二人の仲の良い様子がうかがえた。そんな掛け合いを見せた後は「エリザベート」を披露。悲壮感のあるピアノフレーズから始まり、そこに力強い歌声が混ざっていく。サビでは鳥肌が立つほどの美しいハーモニーが会場に響き渡り、観客を魅了した。
そして、3曲目には桜井和寿が日比谷音楽祭の為に書き下ろした、「雨が止んだら」を初披露。ミュージカルの世界観をイメージしながら、少しずつコロナ禍が明けようとしている今の状況を表現した楽曲で、桜井から是非、日比谷ブロードウェイのメンバーに歌ってほしいと指名されたという。曇っていた空が晴れていくかのような、希望感のあるピアノフレーズから始まり、Aメロを歌い終えると会場の脇から桜井本人が登場。会場はこの日一番の歓声が沸き起こった。桜井と日比谷ブロードウェイの3人による調和された歌声はとても美しく希望に満ち溢れた曲には胸が熱くなった。
会場を大いに盛り上げた日比谷ブロードウェイの後は、本イベントの大トリとなる桜井のステージに。さらに、ギターにシンガー・ソングライターの弓木英梨乃を迎えてのステージとなった。冒頭MCでは「雨が止んだら」の制作会議での様子を桜井が明かす。亀田とのミーティングが終わった後、桜井は車中でメロディが浮かび、そのまま車の中で楽曲が作られたという。そして、前のステージで演奏した井上と甲斐に感謝の言葉を述べつつ、日比谷音楽祭に初登場した2年前を振り返りながら、「(一昨年)はまだ無観客でお客さんの声を聞くこともできなかったんですけど、その時に歌った曲がミュージカル・アニーのテーマ曲「Tomorrow」で。明日こそはこうやって沢山のお客さんの前で歌えるようにとの願いを込めて歌いました。そして、Mr.Childrenの曲で「Tomorrow never knows」という曲も歌いました。コロナ禍を果てしない闇に例えて、その向こうに手を伸ばそうというメッセージを込めて歌いました。そして今年、あの時イメージした闇の向こうが今現実として広がっています。最高に幸せです。」と、力強く語り「東京」を披露。野音で聴くことのできるこの楽曲は最高の贅沢だと感じられた。
2曲目はミーティングの際に亀田がリクエストしたという「CROSS ROAD」。自身初のミリオンセラーとなったヒット曲にも関わらず、桜井は「僕自身、あんまりこの曲の良さが分かってないです。(笑)」と意外な一言。当時は、デビューしたばかりで必死だったそうで、「テレビで初めて流れた時は、すごく嬉しかった」と明かした。「僕が作ったというより、ドラマが引っ張ってくれた曲」だと振り返りつつ、今日のステージに向けて自宅で練習していた時に亀田から言われた「コロナ禍が明けた今だからこそ、響く」という一言が実感できたと、選曲の理由を明かした。
そして、桜井が日比谷音楽祭に参加した全ての人に対し「味わったものを忘れないようにして」と【日比谷音楽祭 2023】の最後に選んだのは「シーソーゲーム ~勇敢な恋の歌~」だ。The Music Park Orchestraと桜井和寿が奏でる音楽は言葉に出来ないくらい素晴らしく、最高の余韻を残したまま2日間に渡って開催された様々なアーティストによる【祝・日比谷野音100周年 日比谷音楽祭 2023】は幕を閉じた。
Text by Hironari Kagehi
◎公演情報
【祝・日比谷野音100周年 日比谷音楽祭 2023】
2023年6月3日(土)4日(日) 東京・日比谷公園及びその周辺施設
©日比谷音楽祭実行委員会
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