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2023/05/29

<ライブレポート>SARM、ルーツ・ミュージックを自身のスタイルに昇華した音楽性で魅了した2日間

 2019年にファースト・シングル「I Still Got It」をリリース。2020年【FUJI ROCK FESTIVAL'20 LIVE ON YOUTUBE】の“ROOKIE A GO-GO”ステージに出演、シングル「BONBON GiRL」がJ-WAVEの『J-WAVE SONAR TRAX』に選出され、ビルボードジャパンの急上昇チャート“Heatseekers Songs”でTOP 9位入り。2022年には『出れんの!? サマソニ!? 2022』を勝ち抜き、【SUMMER SONIC 2022】に出演するなど、活動の幅を広げてきたシンガーソングライター、SARM。湘南乃風、ALIなどとコラボし、独自のファッション性でも注目されている彼女が5月23日、24日、BLUE NOTE PLACE(東京・恵比寿)に登場した。ジャズ、ソウル、ブルースなどをルーツにしたハイブリッドな音楽性、“ヴィンテージボイス”と称される歌声、そして、観客の心と身体を揺さぶる生々しく、開放的なパフォーマンス。この日のステージでSARMは、アーティストとしての奥深い魅力を存分に発揮してみせた。

 1stStageのオープニングは「Persona Ladies」。オーセンティックなブルースに現代的にポップネスを織り交ぜたサウンド、<何度ももがいた 証を叫べ>というフレーズ、強いパッションを込めた歌声が響き、一気に惹きつけられる。

 今回のライブは、SARMにとって新しい編成で行われた。バンドメンバーは、東京とニューヨークを行き来しながら活動するアーティスト/ベースプレイヤーのShin Sakaino(Ba)、ソロプロジェクトで活躍する一方、藤原さくら、THE BAWDIESなどのサポートも行っているKazuhiro Bessho(p/key)、そして、10代の頃からプロドラマーとして活動している気鋭のドラマーDesire Nealy(ds)。共通しているのは、ジャズやブルースなどのルーツ・ミュージックを現代に継承する音楽家ということだろう。

マーク・ロンソンとエイミー・ワインハウスによるヒット曲「Valerie」(原曲はザ・ズートンズ)をカバーした後は、美しいエレクトリック・ピアノの音と切なくも愛らしいボーカルラインを軸にしたバラード「Passionate Kiss」。そして「BONBON GiRL」へ。シックなバンドグルーヴと<赤い唇から ただ愛が必要なだけ>というキャッチ―なラインが響き合うこの曲は、TikTokでもバズり、SARMの代表曲として浸透している。サビのコーラスのパートを観客が歌い、心地よい一体感を生み出した。1stStageの最後は、「New York State of Mind」(ビリー・ジョエル)。ジャズのエッセンスをたっぷり注いだアレンジとボーカルで、原曲の新たな魅力を引き出した。

 discoSARAによるDJタイム(「Never Too Late for Your Lovin’」「Let Me Show You」など80’sソウル/ディスコが中心)を挟み、2ndStageは「Breaking Dawn」から。曲名通り、夜明けを想起させる壮大なサウンドスケープが広がり、会場の雰囲気は一変。続く「Muscari」では、憂いを帯びたメロディラインで観客を魅了。“Muscari”とは花の名前で、“寛大な愛”“明るい未来”と“絶望”“悲嘆”という両極端の花言葉を持つ。感情の起伏を反映したSARMの歌声をダイレクトに体感できる楽曲と言えるだろう。続いてはファースト・シングル「I Still Got It」。ジャズを軸にしたスムース&ブルージーな音像、“しなやかな憂い”と称したくなるメロディラインが共鳴し、音楽的な快楽が会場全体に広がった。

 ニーナ・シモンの歌唱で知られる「Feeling Good」を叙情豊かなに歌い上げた後は、ラストの「I am I」。高揚感に溢れたビートと解放的なボーカル、そして、“私は私よ”という力強い意志を込めたリリック。生命力に満ちた音楽が高らかに鳴り響くなか、ライブはエンディングを迎えた。

 ニーナ・シモン、ジャニス・ジョプリン、エイミー・ワインハウス、アリシア・キーズ、コリーヌ・ベイリー・レイ、笠置シヅ子、UA、二階堂和美――ライブを観ている間、筆者は何人かのアーティストを思い浮かべたが、SARMは誰にも似ていない。古き良きルーツ・ミュージックをたっぷりと吸収し、彼女自身の経験や感情を刻み付けながら、今の音楽として表現する。これこそがSARMの音楽の核なのだと思う。“Sun And Moon”を由来とする彼女のアーティストネームはここから、さらに多くの音楽ラバーに浸透するはず。そのことを確信させられた濃密なステージだった。

 23日には、SARMの新しいアーティスト写真と、リニューアルしたオフィシャル・サイトが公開された。こちらも是非チェックしてみてほしい。


Text:森朋之
Photo:Yasuaki Komatsu


◎公演情報
【SARM】
2023年5月23日(火)、24日(水) 東京・BLUE NOTE PLACE

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