2023/05/10
YOASOBI「アイドル」の3週連続1位という大ヒットや、BE:FIRST、AKB48といった強力な新譜が目立つ2023年5月3日公開のBillboard JAPAN 総合ソング・チャート“JAPAN Hot 100”。その強豪に混じって健闘中なのが、4位にチャートインしたスピッツ「美しい鰭」だ(【表1】)。
この曲は4月14日から公開がスタートした劇場版『名探偵コナン 黒鉄の魚影』の主題歌という大型タイアップであり、4月10日に先行配信とYouTubeでのミュージック・ビデオのプレミア公開、そして4月12日にフィジカルのCDシングルとしてリリースされた。ちょうどYOASOBIと被ってしまったため、初週の4月19日発表のJAPAN Hot 100では2位だったが、次週の4月26日発表でも3位に留まるという流れは、彼らのようなキャリアの長いアーティストならではの見事な結果ではないだろうか。
スピッツほどのアーティストになると、コアファンの層が厚いため、特にCD売上での瞬発力は非常に大きい。ただ、フィジカルの売上は右肩下がりになるのは致し方なく、実際3週目では31位にまで下降している。しかし、そのダウンをカバーしているのが配信だ。特にストリーミングでは、3週の間に7位、2位、3位と推移しているのは、大人のファンだけでなく若年層も含めた映画ファンの支えも大きいのだろう。
加えて、全国にマスコミのシンパをしっかりと構築しているベテランらしく、ラジオでのオンエア回数を着実に稼いでいることも重要な要素だ。また、ミュージック・ビデオが松居大悟監督、上白石萌歌出演など話題性が高いことも効いている。そういった意味ではいずれのポイントもバランスよく、ロングヒットを狙うには申し分のないチャート・アクションと言っていいだろう。
スピッツはこの後も、5月17日に約3年半ぶりのオリジナル・アルバム『ひみつスタジオ』のリリース、6月からは2年ぶりのツアーが控えている。また、ツアーに合わせて『劇場版 優しいスピッツ a secret session in Obihiro』が公開されるなど話題性は豊富だ。「美しい鰭」がどこまでチャートを伸ばせるかは、これらがどこまでうまく連動するかにかかっている。ここはぜひ、ベテランならではの風格を見せて、ロングヒットに繋げていただきたいと思う。
Text:栗本斉
◎栗本斉:旅&音楽ライター、選曲家。レコード会社勤務の傍ら、音楽ライターやDJとして活動を開始。退社後、2年間中南米を放浪し、現地の音楽を浴びる。その後フリーランスとして活動した後、2008年から2013年までビルボードライブのブッキングマネージャーに就任。フリーランスに戻り、雑誌やライナーノーツなどの執筆や音楽評論、ラジオやストリーミングサービスにおける構成選曲などを行っている。
※記事初出時に誤りがございました。お詫びして訂正いたします。
関連記事
最新News
関連商品
アクセスランキング
インタビュー・タイムマシン
注目の画像