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2023/04/24

<ライブレポート>エリック・クラプトン、盟友たちへの想いも込めた興奮と感動の日本武道館100回公演

 エリック・クラプトンが、2023年4月21日に東京・日本武道館で【黒澤楽器店 MARTIN GUITAR Presents ERIC CLAPTON LIVE AT BUDOKAN 2023】を開催した。海外アーティストとして初めてとなる日本武道館での100回目の公演を達成して、集まった大観衆から祝福された。

 1974年に初来日して以来、通算23回目、2019年以来4年ぶりとなる今回のツアーは、4月15日からスタートして合計6回の武道館公演が行われる。会場には親子らしき観客の姿もあり、世代を超えてその音楽の魅力、ギターレジェンドとしての存在感が広がっていることを感じさせた。

 開演前に場内アナウンスでこの日がクラプトンにとって記念すべき100回目の日本武道館公演となることが告げられると、客席からはものすごい拍手が沸き起こった。とにかく開演前から観客のテンションが異様に高い。19時ちょうどに暗転して7人のバンドメンバー(ドイル・ブラムホールII(Gt)、クリス・ステイントン(Key)、ポール・キャラック(Key)、ネイザン・イースト(Ba)、ソニー・エモリー(Dr)、ケイティ・キッスーン(Cho)、シャロン・ホワイト(Cho))がステージに上がり、最後にクラプトンが登場すると大歓声に迎えられてステージ中央へ。白いストラトを手にしたクラプトンは、薄暗い照明の中でおもむろにハイトーンを奏でだす。スクリーンに手元が映し出されると、ピックを持っているようにも見えるがどうやら指弾きで演奏している。白いストラトキャスターとフィンガーピッキングによる泣きのフレーズ。「Blue Rainbow」と題されたこのインストゥルメンタルは、今年1月にこの世を去ったジェフ・ベックへの想いを込めた楽曲であることは明白だ。

 グッと引き込まれるオープニングを終えると、すぐさま「プリテンディング」へ。タイトなリズムに乗って迫力のあるヴォーカルを聞かせると、間奏ではワウペダルを踏んでソロへ。足元にはほとんどエフェクターは置かれていないようだ。ステージセットはシンプルで、置かれているのはバンドが演奏する楽器のみ。スクリーンも背後にはなく、ステージの左右に設置されている。観客がひたすら歌と演奏に没頭できる環境が整っている感じだ。サウスポーのドイル・ブラムホールIIがソロを取り、最後はクラプトンがソロを弾いて曲を締めると、「All right!」とひと言。様々なアーティストが取り上げていることで知られるブルースのスタンダードナンバー「キー・トゥ・ザ・ハイウェイ」をロックンロールリフから軽快なタッチで披露した。クリス・ステイントンのピアノ、ドイルのギター、ポール・キャラックのオルガンと、順番にソロをまわす。3コードの中に音楽の楽しさが目一杯詰め込まれた1曲となっていた。

 続いて、聞き馴染みのあるリフとブレイクで「フーチー・クーチー・マン」が始まった。クラプトンの唸るようなヴォーカルにケイティ・キッスーン、シャロン・ホワイトの艶やかなコーラスが重なり、ドイルのスライドギターがどっぷりとブルース沼に誘う。

 テンポよく次々と曲が披露されていく。クラプトンがおもむろにレゲエタッチのカッティングを弾き始めてギター、ドラム、ベースが絡み合い、ドラマティックなキメフレーズが飛び出すと、客席から大歓声が上がった。「アイ・ショット・ザ・シェリフ」だ。アップテンポ気味な演奏が心地良い。曲の終盤になりクラプトンがギターソロへ。これがものすごかった。ハイトーンのチョーキングを一発決めると、リズミカルに流麗な旋律を弾いていく。後半でチョーキングフレーズの連発になだれ込むと、その圧倒的な迫力とキレの良い音にオーディエンスから「ウォー!」と驚嘆の声が上がった。聞きなれた代表曲ながら鮮烈に記憶に残る、間違いなくこの日のベストだった。

 ここからクラプトンが椅子に腰かけてアコースティック・セットへ。ロバート・ジョンソンのカバー「カインド・ハーティド・ウーマン」から『アンプラグド』での演奏も甦る「ノーバティ・ノウズ・ユー・ホエン・ユー・アー・ダウン・アンド・アウト」と続き、リラックスしたサウンドが武道館を包み込む。続いては2013年に亡くなったJ.J.ケイルのトリビュート・アルバム『ザ・ブリーズ~J.J.ケイルに捧ぐ』から「コール・ミー・ザ・ブリーズ」を軽やかに披露。「アフター・ミッドナイト」「コカイン」をカバーしたりとJ.J.ケイルの音楽を敬愛したクラプトン。トラディショナル・フォーク・ソング「サム・ホール」に続いて歌われた「ティアーズ・イン・ヘヴン」の間奏では、ツアーメンバーとしてクラプトンと活動を共にしたゲイリー・ブルッカー(2022年に逝去)が率いたバンド、プロコル・ハルムの名曲「青い影」(「A Whiter Shade of Pale」)が挟み込まれる。盟友ミュージシャンへの想いがここにも表れていた。

 エレクトリック・セットに戻ると「バッジ」、「ワンダフル・トゥナイト」とライブ定番曲を続けて披露。「ワンダフル・トゥナイト」で甘いトーンを場内に響かせると、スタンド席からはスマホのライトがあちこちで揺れていた。対照的に歪んだ音で弾き始めた「クロスロード」のリフに歓声が上がる。ミディアムテンポでどっしりと力強く聞かせる、今のクラプトンの味わい深い「クロスロード」だ。同じくロバート・ジョンソンのカバーでスローブルース「リトル・クイーン・オブ・スペイズ」も続けて取り上げられた。クリス、ポールと鍵盤ソロのリレーからドイルのギターソロへと繋ぎ、ラストはクラプトンがエモーショナルなソロを聞かせた。

 ネイザン・イーストのベースがゆったりとしたフレーズを弾いていると、クラプトンが16ビートのカッティングを重ねる。そこにハイハットでカウントを取っていたソニー・エモリーのドラムが入ってくると、始まったのは「コカイン」だ。どよめきと共に手拍子で沸き立つ武道館。サビで一斉に「Cocaine!」と声を合わせて盛り上がる。最後にクラプトンはマイクから離れ、オーディエンスにサビの合唱を委ねると、ギターを置き両手を広げてステージを降りた。

 ここで主催者から、日本武道館100回公演を記念してクラプトンに100本の赤い薔薇の花束が贈呈され、ステージで花束を受け取るクラプトンの姿に万雷の拍手が贈られた。アンコールは、ジョー・コッカーのカバー「ハイ・タイム・ウィ・ウェント」。リードヴォーカルをポールが務める賑やかな演奏を終えると、クラプトンとメンバーは横一列に並び客席に一礼してからステージを後にした(ネイザンがスマホを客席に向けながら「オツカレサマデシタ!」とひと言)。ダブルアンコールを求める手拍子が続くもすぐに客電がつき、場内からは一斉に「えぇー!?」という声が。「レイラ」が前日までのセットリストに入っていたこと(「コカイン」と入れ替わっていた)、さらに100回記念ということもあり、もしかして最後の最後にやるのでは……という期待があったことからのどよめきだった。それだけ未だに「レイラ」がクラプトンの代名詞となっていることを表していたが、つまりは100回記念であってもいつも通りのエリック・クラプトン。まだまだこの先も、この日見せてくれた唯一無二の最高な歌とギターを日本武道館で観ることができそうな気がした。

Text by 岡本貴之
Photos by 土居政則
※ライブ写真は4月15日撮影

◎セットリスト
【黒澤楽器店 MARTIN GUITAR Presents ERIC CLAPTON LIVE AT BUDOKAN 2023】
2023年4月21日(金)東京・日本武道館
1. Blue Rainbow
2. Pretending
3. Key To The Highway
4. Hoochie Coochie Man
5. I Shot The Sheriff / Tearing Us Apart
6. Kind Hearted Woman Blues
7. Nobody Knows You When You’re Down and Out
8. Call Me The Breeze
9. Sam Hall
10. Tears In Heaven
11. Kerry
12. Badge
13. Wonderful Tonight
14. Crossroads
15. Little Queen Of Spades
16. Cocaine
EN. High Time We Went

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