syudouが4月8日に千葉・幕張イベントホールでワンマンライブ【syudou Live 2023『我武者羅』】を開催した。

　昨年8月に中野サンプラザで初の有観客ライブ【加速】を開催したsyudou。本格的な有観客のワンマンライブは今回が2度目になるわけだが、とてもそうは思えないほどの迫力に満ちたライブだった。自身最大規模となる会場は後ろまでぎっしりと客席が埋まっている。ボカロPとしてキャリアをスタートし、シンガーソングライターとしてメキメキと頭角を現しつつある今のsyudouの勢いを感じさせるような熱気が感じられた。

　開演時刻を少し過ぎると、ステージには黒装束に般若の面をつけた5人のダンサーたちが登場し、映像とSEと共にダンスを繰り広げる。1曲目は先日にリリースされたばかりの「ギンギラギン」だ。ダンサーがダイナミックに踊る中、バンドメンバーがスタンバイし、後方からもう一人の般若の面が登場。ステージ中央に歩み出て面を外すとsyudouの顔があらわになるという粋な演出に大きな歓声が上がる。躍動感あふれるリズムに乗せて、巻き舌やファルセットの歌声、がなり声のシャウト、畳み掛けるような早口のラップを聞かせるこの曲。ブレイクの「バカでけえことやろうぜ、幕張！」というシャウトに大きな歓声が上がる。

　続けてはアグレッシブなバンドアンサンブルに乗せて憧れの人への思いを綴るリリックを歌う「いらないよ」へ。ホリエマム（Dr）、長島涼平（B）、Kuboty（G）、モチヅキヤスノリ（Key）というメンバーは初ライブから変わらない編成だ。ここ最近は楽曲制作にバンドメンバーが参加しているということもあり、サポートというよりはバンドとしての一体感が増してきているのを感じる。

　「こんな景色になるんですね」と、満員の客席を見回して感慨深そうな表情を見せるsyudou。続いて「次の曲はみんなで一緒に盛り上がりたい」と披露した「邪魔」では、「声聞かせてくれ、幕張！」とフロアにマイクを向け「♪ラララ～」の大合唱が巻き起こる。昨年までは観客の声出しが制限されていたので、syudouのライブでシンガロングが生まれるのはこれが初めてのことだ。

　前半はガツガツしたアップテンポで攻撃的な曲を続ける構成。ステージを動きまわり、飛び跳ね、激しいアクションを繰り出しながら歌った「たりねぇ」に続いては「アンチテーゼ貴様 -改-」を披露。昨年9月にリリースされた2015年発表のボカロ曲「アンチテーゼ貴様」のリアレンジバージョンで、環境や状況の変化を経た今のsyudouが抱える生々しいストレスや悩みや毒を吐き出すリリックが印象的だ。さらに「狼煙」では特効の炎がステージから上がり、syudouは真っ赤な照明のライトを浴びながら堂々と歌い上げる。

　「みんなのおかげで火が出せたぜ！　やったぜ！」と嬉しそうな表情を見せるsyudou。「会社員時代に工場でアーク溶接をしてた時のことを思い出すくらい熱かったです」と語り、目薬をさす。ちなみにsyudouはライブの曲間にたびたび目薬をさし、その仕草にも大きな歓声が上がっていた。楽曲のダークな世界観とは裏腹に、トークから伝わってくる人懐っこくチャーミングな人柄も魅力だ。

　続いては「カッコつけていい？」とギターを左手に持って高く掲げるポーズを見せ、サビをたっぷり弾き語ってから歌った「笑え」。爽快感あるこの曲から、ダークでケレン味たっぷりの「キャラバン」、ピアノソロから始まりアコースティックギターをかき鳴らした「フラミンゴ」と、中盤はsyudouがギターを抱えて歌う楽曲を続けて披露する。ミドルバラードの「灯火」では「せっかくなんでみんなに協力してほしい」と、サイリウムを持っている人はサイリウムを振り、そうでない人はスマホのライトをつけて掲げるよう観客にお願いする。「おのおのが好きに楽しんでる感じが好きなんで」とsyudouも語っていたが、お客さんはサイリウムを持っている人と拳を突き上げて盛り上がっている人がだいたい半々くらいだ。情感たっぷりに歌い上げるこの曲に合わせて、広い客席を埋め尽くす青と白の光が揺れていた。

　観客のハンドクラップが一体感をもたらした「ビターチョコデコレーション」に続いては「へべれけジャンキー」「コールボーイ」とお酒をテーマにした楽曲を披露。「へべれけジャンキー」ではsyudouはステージを降り、ダンサーを引き連れてフロアを練り歩きながら歌った。「みんなのところに行くのもやりたかったんですよ」と語り、「これだけ老若男女に囲まれて歌えるってことは、ちぃとばかり俺もモテ始めたってことなんじゃないかって話です」と言うsyudouは満足気だ。

　「激アツな曲を立て続けにいきます」と告げ、後半は疾走感あふれるエネルギッシュなナンバー中心のセットだ。「爆笑」ではステージに寝転がったり、足を蹴り上げたりと激しく動きながら歌い、サビの「ワッハッハッハ」というフレーズはオーディエンスを煽ってシンガロングを巻き起こす。さらにはライブ2週間前に完成したという未発表の新曲を披露。フックの強いメロディを次々と畳み掛けるパワフルな曲だ。

　syudouはMCで、ライブや音楽活動において要所要所のこだわりを大切にしてきたこと、やりたいことを貫くプライドが自分を自分たらしめている要素だということを語る。「周りに迷惑がかかるかもしれない、面倒くさいと思われるかもしれないようなプライドを捨てずにやり続けてきたから、今こういう景色が広がっているんだと確信しています。そうやってきた結果、今からやる曲もできました。これから先、もっともっと上を目指すけれど、今ここで歌っているのが誇らしいです」とこの日のライブに辿り着くまでの足跡を振り返っての思いを語り、「インザバックルーム」を歌い上げた。アニメ『チェンソーマン』エンディングテーマとして書き下ろされたこの曲でこの日最大の盛り上がりを生み出し、本編ラストは「取扱注意」。早口のラップをまくし立て、ステージに膝をついたり、寝転がったり、全身の力を振り絞るようにして歌う。曲後半でバンドが演奏を止めsyudouがフロアにマイクを向けるとオーディエンスの「♪ラララ～」の大合唱が響き渡る。歌い終わったsyudouは感無量の表情でステージを去った。

　アンコールを求める大歓声に迎えられ再びステージに登場したsyudouは「多くの力が集まってこれが実現できております」と、バンドメンバーとマニピュレーター、スタッフや観客への感謝を告げる。今は幸せな環境でライブしているけれど、日々の活動ではすべてが上手くいくわけではないし、問題も多々あると現状を告げ、「リハのあいだはずっとお酒を止めてたんで、現実と向き合えば向き合うほど、つらいな、しんどいなと思うことがあって。でも、つらい、しんどいと思いながら何かをやってる人は、目の前のことから逃げずにちゃんと立ち向かってそれを続けているってことだと思います。僕はそのさまを美しいと思う」と語る。「そういう生き方をしている人を笑うんじゃねえという曲です」と語って披露した「笑うな！」は、syudouの楽曲の中では最も明るく爽快なナンバーだ。晴れやかなムードで会場を包み、ラストは「ギャンブル」。オーディエンスが飛び跳ね、銀テープが舞い、この日のクライマックスとも言える盛り上がりでライブを締めくくった。

　6月28日には1stアルバム『露骨』がリリースされる。「露骨というタイトルにあるとおり、さらけ出した内容になっております。むき出しでやっていきたいと思って、やりたいことをやりました」と語った、シンガーソングライターsyudouとしての初の歌唱アルバムだ。この日の最後には8月にアルバムを携えた東名阪ツアー【syudou Live Tour 2023『露骨』】が開催されることも発表された。

　破竹の勢いでシーンを駆け上がりつつあるsyudou。この先のさらなる躍進を確信させられるような一夜だった。

Text：柴 那典
Photo：Shingo Tamai

◎ライブ情報
【syudou Live 2023「我武者羅」】
2023年4月8日（土）
千葉・幕張メッセイベントホール
＜セットリスト＞
1. ギンギラギン
2. いらないよ
3. 邪魔
4. たりねぇ
5. アンチテーゼ貴様 -改-
6. 狼煙
7. 笑え
8. キャラバン
9. フラミンゴ
10. 灯火
11. ビターチョコデコレーション
12. へべれけジャンキー
13. コールボーイ
14. 爆笑
15. 新曲
16. インザバックルーム
17. 取扱注意
En1. 笑うな！
En2. ギャンブル
＜セットリストプレイリスト＞
https://syudou.lnk.to/gamushara